おかげさまで私達夫婦はこの5月で結婚15周年を迎える。どんなに遠慮のいらない関係性を築いていたとしても、やはり相手の意見を尊重し、悪いことがあれば素直に認めるという姿勢はこれからも忘れずにいたい。
この記事で言いたかったのは、そういうことである。
エクトプラズムをご存じだろうか?私は幼い頃からこの心霊現象にトラウマを抱きながら生きてきた。そして今、それを克服する時が来た。
1980年生まれの私が子供の頃はUFOにビッグフット、ノストラダムスにコックリさんなど、テレビにも本にも不可思議な現象が溢れかえっていた。その中でも未だに忘れられないのが、エクトプラズムである。
霊媒者の身体、特に口や鼻から出るといわれる霊魂のようなもの。この不思議な現象を最初に知ったのは、小学校低学年の頃に『うしろの百太郎』を読んだ時であった。様々な心霊現象が登場するこの恐怖漫画の中でも、ひと際異彩を放っていたエクトプラズム。明確な恐怖というよりは、訳の分からない怖さ。
それ以来、私の心に「いつか私の口からも白いドロドロが出るんじゃないか?」というトラウマが植えつけられてしまった。
私の友人は酔って吐いてしまった時、「あ、これ反吐だ!」と分かったそうだ。「反吐」が何なのかも知らなかったのに。エクトプラズムも結局なんなのかいまだに理解していないが、それが私の口から出る日が来れば「あ、これか!」と必ず分かると思う。
しかし、“その日”はいまだに来ない。引き延ばされた恐怖が、大人になった今でも私を苦しめる。
ずっとこんな恐怖を抱えながら生きていくのはもう嫌だ。このトラウマを克服する方法はないだろうか?
先日見た映画のワンシーンに、そのヒントがあった。精神科医がワンタンに恐怖を感じている患者に、自分で皮から作って食べるようアドバイスしていたのだ。つまり恐怖を感じる対象の構造を分解して一から作ることにより、理解できないものを理解できるものにする、という手法だ。そうか。自分からエクトプラズムを作って出しちゃえば良いのだ。
私はまず目隠しをして、ヘレン・ダンカンと同じような状況の写真を撮った。
そして顔の部分をトリミングして、印刷する。
余分な部分をカットして、一枚一枚丁寧に張り合わせていく。
最後に口の部分だけ切り抜いたら、完成だ。
この巨大顔写真をどうするのか?トイレの壁に貼るのである。
さあ、遂に出るぞ。私のエクトプラズムが。
エクトプラズム、完全に理解できた。長年のトラウマが、克服された。
「無限エクトプラズムマシーン」を発明した次の日。妻に「話があるから座って」と言われた。
聞けば子供も嫌がってるという。私のトラウマ克服が、誰かのトラウマを生み出してはいけない。すぐに剥がそう。
おかげさまで私達夫婦はこの5月で結婚15周年を迎える。どんなに遠慮のいらない関係性を築いていたとしても、やはり相手の意見を尊重し、悪いことがあれば素直に認めるという姿勢はこれからも忘れずにいたい。
この記事で言いたかったのは、そういうことである。
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