特集 2019年12月25日

芋づる式クリスマス

メリークリスマス!

今年も「芋づる式」という言葉を、主に社会面ニュースでよく聞いた気がする。

その「芋づる式」、すっかりダークな文脈での使用例が板についてしまったが、それではやっぱり芋がかわいそう。

そこで、「芋づる式」でクリスマスを祝うことにした。

 

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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子供の心を取り戻すために

そもそも「芋づる式」の意味とは、「芋が繋がって土中から次々に掘り起こされるがごとく、事実が連関して次々に明るみになる」というようなものだろう。だからもともとそんなにいい意味で使われなさそうな雰囲気なんだが、小学校の頃などに芋掘り体験をした方も多いと思うし、ここはお子さんにも安心して提供できるコンテンツに利用するのがいいと思うのだ。 

つまりこんな感じの「芋ケース」を作って、中にプレゼント入れて掘ってもらおうと思うわけです。わかりやすい。

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楽しいクリスマスになるぞ。

そんなことを目論んでいた折、あるトークイベントの登壇者としてご一緒しお知り合いになったデザイナーさんが、最適なものをプレゼンしていたのだ。

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これだ!バキュームフォーム機!(手前のは私のプレゼンしたハトヒールです)

熱したプラ板を型に下ろして網の下から空気を吸い込むと、キュッとその型どおりにプラ板が曲がって中空のケースが一瞬でできる「真空成形機」というものだ。私もここの記事などで何度か自作でチャレンジするも、めちゃくちゃな結果だった。

アレを、手軽にできるキットを開発されたという。もしや、芋ケース作りにピッタリではないか?!

幸いこのイベントで意気投合し、事務所に遊びに行けることになったので芋の件を打診したところ、二つ返事で承諾いただいた。まさに芋づるのように事が運んで行ったわけである。

というわけで、真っ二つに切った芋をカバンに入れて、原宿駅近くのオシャレエリアに建つ「株式会社クリエイティブボックス」さんに、バキュームフォーム機を使わせてもらいにお邪魔した。

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イベントでご一緒した杉谷さん(左)、そしてデイリーポータルZ大ファンの西川さん(右)も同席。

実はこの会社、あの日産自動車の関連会社で、お二方も日産で数々の実績を持つすごいデザイナーさんなのだ。

現在はこのクリエイティブボックスを拠点として、コンセプトカーなどの本筋のデザインをしつつ、かいつまんで言えば「何をやってもいい」のだという。しかも会社のリソースを使って。場所や3Dプリンタ、材料、なんでも。ああ、うらやましい。こういう会社員になりたいものです。

車関係に限らず、多方面の面白そうなことに触手を伸ばして活動していらっしゃる。その中のひとつが、この一風変わった「バキュームフォーム」機の製作なのだ。

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ひととおりきらびやかな実績を見せていただき、芋を出しにくいったらない。

もともとは、子供たちに車のイラストを描いてもらいデザイナーの手で立派なデザインラフに起こす、というワークショップをしていたのが、2Dから3Dへと具現化の方向を模索したときに行き着いたのが「バキュームフォーム」(製品名「V.former Lab」)だという。

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こうやって、描いた模様を立体にできて、さらにミニ四駆にも応用できたりして、子供ら大興奮なのだそうだ。

であるから、子供たちにも入って来やすいよう、なんと「手動」での方式を取り入れているのだ。手動?!つまりこういうことです。

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おおお、一式ご用意いただいている。右端のポンプにご注目ください。
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多くの場合、掃除機で真空状態を作るのだが、ここはポンプで手動なのだ!

熱したプラ板を吸い込むとき掃除機を使うことが多いのだが、ここではあらかじめポンプで空気を吸い出して中のタッパー内を減圧しておくのである。掃除機を使わずに済むし、調節もしやすい。

ただし規定の目盛りまで減圧するのに、けっこう体力使います。これ、買って家でやってたら半年で上半身が立派な格闘家になる。

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この位置まで、ハァハァ、なんとか、ハァ、空気を抜きました。
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そのあと、トースターでプラ板を熱しておく。一度たわんで落ち着いて、また垂れ下がってきたくらいが頃合い。
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すかさず型に合わせて押し下げる。
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あっ…!

あまりの早さに、同行した編集・石川さんのシャッターが間に合わなかった。それくらい一瞬の出来事だった。

では改めて、動画でどうぞ。

 

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このまま、チョコレートなどの型にも使えるぞ!

この「シュッ…」と一瞬でプラ板に減圧が伝わる快感、あなたにも伝えたい。しかも電気的なものでなく、機械的な単純な仕組み。それでこういうモールドがどんどん出来上がるのも、すごい快感だ(開発者曰く、とにかく空気というのは「漏れる」ものなので、商品化にあたりそこをどうクリアするかで骨が折れたとか)。

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同じく同行したメディアアーティストのよしださんも、もう夢中。
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市販の木目シートを貼って試したら、そのまま木彫り風カーになったとお二人がはしゃいでいた。これも仕事である。
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そこで、芋ですよ。

 

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芋が「V.former Lab」に乗っかって沸く一同。
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「ラップ外しちゃいましょう、そしてまずは私が」と前のめりな杉谷氏。
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おお…芋そのままに。

表面のゴツゴツ、起伏、そっくりそのままにプラ板に写し取られた。これはいいぞ!もっと芋作ろう!日産の材料使って!

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芋プリ、順調に進行。

最初に「芋づる式考えてるんです」と恐る恐る杉谷さんに伝えたら手ばなしで歓迎されたのが妙だったが、どうも本当に前のめりでこの日を待っていたらしい。数種の芋類を持参されていました。負けた!

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カラフルな絵面も考えていらした。さすが日産のデザイナー、恐ろしい子…!
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最初に色塗って成形、とかどんどん自由にやりだす杉谷氏。人の芋で。
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立体物の標高が高いと、ヒダができてしまうらしい。これも勉強。
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やおら、石川さんもぬっと動き出した。
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ポケットティッシュ…
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わぁ、専用のケースみたい!できあがったら一瞬で楽しくなった!

 

まさにブリスターパック。もともとそういった方面に強い会社と手を組んで、来年この「V.former Lab」を商品化する運びとなったのだから、なんでも成形、おちゃのこさいさいである。

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宴のあと…

だいたいの数をやり終え、狂喜乱舞の真空成形はこれにておひらきに。あぁ、久々に楽しいワークショップという感じ。大人もはまるバキュームフォーム、これきっと来年買っちゃうと思います。明らかになんらかの中空ケースが記事に頻発したら「あいつ買ったな」と思ってください。ではまた!
じゃなくて。

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中身の芋は今うちで大学芋になってるよ。

流行らせよう、芋づる式イベントを

大興奮さめやらぬその夜、大量に持ち帰った芋型を、どうにか芋づるっぽく仕上げるのが私の仕事である。あんなに良くしていただいたんだから、ここで失敗するわけにはいかない。

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でもいきなり失敗した。耳まで切り取っちゃうと、ボディがぺこぺこしちゃって、一つにまとめづらいのだ。
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今度はちゃんと耳を残して切る。「耳」って当たり前のように言ってますがわかりますよね。
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ここはやはりプラにも食いつきのいい塗料「染めQ」で。ガーネット色が芋っぽくなりそうだ。
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幸い同じような色のマステがあったので、中身を入れてこれで封をする。

中身は、クリスマス会のプレゼント交換や福引などの賞品を参考にして封入した。

100円ショップでつる草のガーランド(飾り)を売っていたので、葉の数を調整して芋をくくりつけた。これを持って「芋づる式クリスマスセット」の完成とする。

さっそく掘り起こし会場の、とある公園に向かった。

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芋掘ったどー。
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なかなかどうして。
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芋そのものじゃないですか?
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緑の染めQがなかったのでアクリル絵具でかぼちゃに。
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すごく…ジャガイモです…
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まずは埋めるということをしなくてはならないのが大変。
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スコップ忘れたのでレジ袋を手袋代わりにして埋める。

クリスマスと銘打っておきながらなんて地味な絵なんだ。これも芋の土属性ゆえの宿命か、ってよく知らないのに「土属性」とか言ってみた。

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ちょろりと引っ張り口を出しておかねばならぬ。

会場は整った。石川さんひとりしかいないけど、芋を芋づる式に引きずり出して景気良く、楽しく祝おう、

「メリー、クリスマス!」

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「これ引っ張るんですね?」ズズズ
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「…おお〜」
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「おーおーおー」
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意外と楽しかったようだ。

 

掘っている間中、ずっと隣の公民館か社務所かで、お正月のお神楽の練習をしていた。ドン、ドン、コンチキチと。おかげで妙に厳粛なクリスマス行事となったぞ。

では一人しかいないので、思う存分、芋ケースをオープンしちゃってください!

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さすがにプラ板にじかに染めQは、テープで剥がれますね。剥がしたテープが「芋の皮みたい」とは石川さんの弁。
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何が出るかな…わくわく。
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芋菓子!(これマジで石川さん好きみたいで嬉しそうでした、よかったね)
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「たわし!」それハズレです。
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「うちで使います…」
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手前味噌ですがデザインしたキャラのポチ袋です。
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500円玉入れときました。もはやクリスマスじゃなくなりつつある。
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宅急便ノベルティのミニカー。これは息子さんにどうぞ。
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福引だと当たりなんだぞ、年取るとわかるぞ。
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「これは重いですね!」
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だって芋そのもの入れたからね。
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「私が小学生のとき本当に親に買ってもらったR2D2のゼンマイおもちゃ。何が欲しいか自分でもわからなくておもちゃ屋で適当なの選んだけど、高い物ねだるのを遠慮してそれになった」と話したら石川さん泣いてた。
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芋型に入れやすそうなチョコバーも手堅く入れといた。
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こういうのもあったら良さそうと思って。100円ショップの人形用アクセ。もはや子供会の幹事目線。石川氏は指輪にしてたけど。
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モチ。もはや正月…あるいは引越し…

最後のは、餅撒きの気分で入れてみた。家を建てるときなど、地面に餅仕込んだ芋埋めて近所の人に掘り出してもらう、愉快な芋づる式行事を提案します。

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戦利品とともに。とにかく芋のスナックは喜んでた。

バキュームフォームからの芋づる式クリスマス。怒涛の勢いで来たが、最初の賑わいに比べると芋づる式行事は厳かに終わった。まぁそもそも一人でやるもんじゃないのだ。皆でワイワイやってほしい。何入れようか、これ入れようかと賑々しく楽しんでほしい。

それが、芋からの願いなのです。

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中身を抜いたあとの芋がら。いつかまたこれでイベントしよう。

まとめ

クリエイティブボックスの杉谷さん、西川さん、本当にありがとうございました。

さてこの「V.former Lab」、来年1月25日に「TOKYO ラヤマパック 具現化工場」にてワークショップ兼頒布会をやるようです。詳細な情報はこちらでキャッチしてください!私も参ります。
https://www.facebook.com/v.former.lab/

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芋づる式クリスマス会からの帰りに食べたシュクメルリ鍋にも芋が!芋づるとはこのこと。

 

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