セルフこっくりさんの果てのEテレ風
つまり、「かわいいものに埋もれて音楽を奏で、それが運動にもなる」という三方一両損、じゃなかった一挙両得、いや三得な企画である。
もう少し考えの足跡を追おう。
・森の動物たちに囲まれて歌を歌うイメージ。Eテレの教育番組で、お姉さんが人形に囲まれて楽しそうにしている感じ、いいよね。
・Nintendo Switchの「リングフィット アドベンチャー」みたいに、知らず知らずのうちに運動しているってのも、すごくいいよね。
・つまり、体に音階を仕込んで、曲を奏でようとすれば自動的に運動できるのでは。楽器もこなすことになるし。それに音階ごとに人形を割り当てると、すごく楽しそうだぞ!
…大丈夫だろうか。論理は破綻してないとは信じるが、自分でも雲をつかむような計画に思えるので、とりあえず絵にしてみた。季節柄、クリスマスツリーになりきるのは、どうかな?人形もいろいろあるし。
ツリーのような緑の服、そこにハンドベルを仕込んだサンタやトナカイの人形をくっつけ、1音ずつ夢中で演奏するうちに痩せる。完璧ではないだろうか?安心してその日は寝た。
翌朝この絵を見て、これは「こっくりさん」だと思った。様々な望みがせめぎあうその果てに、予想だにしなかった完成形が現れる、セルフこっくりさんだ。私こんなの考えましたっけ?
「とにかく私はこれを作ることになったんですか。承知しました。ではすぐにとりかかります」と、文字通りキツネにつままれたような気分でふらふらと制作し始めた。
まずは安いハンドベルを取り寄せる。3000円もしないものだったが、音の狂いがなくちょうどよかった。
あの間抜けなラフ絵の一発でスタートしてしまったので、考えないといけないことが山積みである。どうやって体に固定するのかとか、頭にはどう立たすのかとか、そもそも体に固定してベルって鳴るのかよとか。
でもあらかじめそういう設計をするということが苦手なので、とにかく今は各人形がかわいくなるよう腐心するのみだ。かわいくなあれ、かわいくなあれ。
これをどうやって、あのオーロラ輝子ばりに頭上に立たせるか。ベルを鳴らすのに頭を振るわけだし、固定方法ちゃんと考えないと。
と思って家をあさっていたら、防災ヘルメットの内部部品がぴったりだった。
しかし1オクターブ、8個。8個ですよ8個。8個の人形を、それぞれ違う人形を作って、しかも体に固定するって。思った以上に大変だぞこれ。どうりで全然終わらないはずだ。作っても作っても完成しない。なんであの絵からこんなことになる(当たり前だ)。
そして体への人形の固定も、100円ショップのゴムベルトを使うことでなんとか切り抜けられそうだ。
夢の果ての不審者
長くてよくわからん道のりだったが、3つの願いを叶えてくれるであろう何かがここに完成した。さっそくカラオケボックスで演奏してみようと思う。
コメントしづらいだろうからもう演奏をお見せする。
聞いてください、「きらきら星」。
頭上の「ミ」をのけぞって鳴らすとは思わなかったろう。だって鳴りづらいんだもの。いきなり何か取り憑いたかのようである。というか全体的に痙攣しながら演奏している。怖いぞ。
ベルを1音だけ鳴らすのが難しかったり、そもそもけっこう振らないとベルが鳴らなかったり、振る方向によって鳴り方が違ったりして、今後やっていくにはいろいろと考えなきゃいけないことが山積みなのがわかった。
体のどこに固定するかによっても違ってくるし、そうなると自然と体の関節の構造にまで思いをいたしたりして、なんだかアスリートみたいだ。
練習するうちに汗が額を伝ったりして、本当に運動になった。ここで整理してみよう。
・かわいいもんに囲まれる→それなりに叶った
・知らず知らずのうちに運動→けっこう叶った
・これを機に音楽の道へ→課題山積み
もっと改良して各所から「ボディベルの妙な奏者」として招かれるというのが、この際このセルフこっくりさんの到達点であろう。デビューへ向けて始動である