特集 2025年6月26日

いい靴を買ったら走りたくなった

いい靴を買ってみた。あまりにも履き心地がよくて、思わず駆け出した。

社会人。体育が嫌い。大人になった今でも大抵の物事を「体育よりマシか、否か」で判断している。

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毎日履くならいいやつを

2000円の靴を2年履き、インソールがボロボロになったらまた2000円の靴を買う。それがここ数年のわたしの靴事情だった。

しかし、ある日ふと、『2年間ほぼ毎日履くんだったら、もっといいやつでもよくないか?』というかなり当たり前のことに気付いた。

思い立ったら即行動。わたしはすぐさまスポーツ用品店に駆け込み、2万円の靴を買った。

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すごいぞ、いい靴

翌日、早速新しい靴を履いて外に一歩出た瞬間、わたしは感動した。足の裏にアスファルトの凹凸を感じないのである。

今まで履いていた靴は、ダイレクトに足の裏にアスファルトの感触が伝わってきていた。しかし、この靴は違う。しっかりとした靴底とクッション性の高いインソールが、わたしの足をアスファルトから守ってくれている。

いい靴への感動はまだまだ止まらない。その他にも、

・歩きやすい

・立ちっぱなしでも足が疲れにくい
・防水じゃないのに、多少の雨なら濡れない
・自転車のペダルを踏み外さない
・つまずく回数が減った(気がする)

などなど、とにかくその性能の高さに震えっぱなしだった。もしかして今までわたしってほぼ裸足で外を歩いてたんじゃないかと疑うくらい、自分の足が丁重に扱われている感覚がある。

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そんな中でも、わたしが特に衝撃を受けたのが、『走りやすさ』である。

それを実感したのは、ある日、電車に乗り遅れそうだった時のことだった。

乗車予定時刻まであと3分。駅までの数十メートルを走らないと絶対に間に合わない。わたしは駆け出した。その瞬間、衝撃が走った。脚が、思うように動くのである。

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脚が動く?!

『脚が思うように動く』とはどういうことか。

まず前提として、わたしは日頃運動をしない上に、大変な運動音痴だ。50m走のタイムは12秒であり、学生時代にクラスリレーの度『このクラスの足を引っ張る厄介者』として糾弾された経験は数知れず。とにかく、絶望的に運動神経が悪く、超絶足が遅いのである。

そして、わたしのように運動神経が悪い人というのは往々にして、身体をイメージ通りに動かすのが下手だ。
早く走るためには地面を蹴れとか、膝を高く上げろとか、そんなことは我々だってわかっており、わかった上でこのていたらくであることを、運動ができる人はわかってほしい。

多分これは、筋力・経験・先天的なセンスの問題だ。だから、わたしはもうどうしようもない(※筋力を上げて練習しようという考えはない)………と、考えていた。この2万円の靴で走り出すまでは…。

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この、『思うように脚が動く感覚』は、歩行時にも同じことが言える。まるで誰かに補助されているような、次の一歩がやけに軽やかであることは、既に実感していた。しかし、まさか走ってもその感覚になるとは…。

いまだかつてないほど軽やかに動く自分の脚に胸がざわつく。
乗車予定の電車に飛び乗り一息ついた時、わたしは初めて、もう少し走りたいと思った。

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運動音痴でも走りたい

『走りたい』という自分史上初の衝動に身を任せ、とりあえず近所を走ってみることにした。

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走る筆者

自分が走ってる写真を初めて見て、この人本当に脚が遅そうだなと思った。

…しかし、今はそんなことどうだっていいのである。
いい靴で走るのはやっぱり楽しい!!!!!いまだかつてないほど、次の一歩が速やかに出る。すごいぜ、2万円の靴。

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この時のわたしは、誰がなんと言おうと、体感50m9秒くらいで走っていた。それくらいノっていたのだ。

しかも撮影協力してくれた小学一年生からの幼馴染は、「わっ!すごい!なんか軽やかだよ!」と言ってくれた。優しい。専属のサクラだ。

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いい靴で走るとちゃんと地面を蹴れている気がする。本当に『気がする』だけだが、それがとてもうれしい。 

運動音痴とは、『(できている)気がする』というポジティブな気持ちにさえなれずに撃沈することが9割なので、この『気がする』は大変貴重な収穫なのだ。だから実際できているかは、ここでは全く関係ない。

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走るのは結構楽しい

『二本向こうの電柱まで走るね』と言って駆け出したが、普通に楽しくなってもっと先まで走った。

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走った。

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カメラが捉えられる範囲外まで走った。

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友達のところまで走って戻ってきて

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そしてさらに走った。

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もしかして、走るのって楽しいのかもしれない。あと、完全な身一つで走るのも気分が上がっていい。手ぶらで走ることってないもんな。だって、大人が慌てて走ってる時って大抵カバンを持っているから。
身軽最高。荷物を持ってくれた友達に感謝。

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途中歩きつつ、気が向いたらまた走り出す筆者

誰とも比較せず、慌てずもせず、気持ちの赴くままに走るのは初めての経験だった。

体育でも運動でもなく、走りたいから走る。原始的である。しかし、今はそれが楽しい。ショッピングモールで親の制止を振り払って爆走してる子どもも、こういう気持ちなのかもしれない。

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最後は流石に疲れて、歩いて友達の元へ戻った。
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ご試着だけでも

重ね重ねになるが、わたしは運動音痴だ。特に走ることに関しては、体育によって刻まれた陰鬱な記憶が未だ深い影を落としている。しかし、いい靴を買ったことで、やや光が差し込んだ。

2000円の靴から2万円の靴へグレードアップしてよかった。やはり0が一個増えると全然違う。もし今、何のポリシーもなく激安の靴を履いている人がいたら、一回いい靴を試着してみてほしい。本当に変わるから。


和解は遠い

こうやって、大人になってから『身体動かすのって意外と楽しいじゃん』と思う度、幼少期のわたしに運動に対する苦手意識を植え付けた体育への憎しみは増していくのだが、それはまた別の話である。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
なんて喜びにあふれた記事でしょうか!
「『二本向こうの電柱まで走るね』と言って駆け出したが、普通に楽しくなってもっと先まで走った」のくだりで世界の輝きを感じてしまいました。記事のを読み終えたあとにはぜひ一番最初に戻って佐伯さんのプロフィールを読み返してほしいです。あんなだった子がねえ、変わるものだねえ、という気分になります。(まとめパートにはまだわだかまりが残ってますが…)

ちなみにその後、佐伯さんとは「体育授業の記憶が薄れてくるからスポーツに対する憎しみが減っていく。そこを超えて憎しみ続けるには強い意思が必要」という話をしました。(石川)

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