特集 2019年3月20日

リアルのアイスクライミングはアイスクライマー(ゲーム)と全然違う

必死でアイスクライミングをする筆者。


むかし、ファミコンのゲームで『アイスクライマー』というのがあっただろう。当時小学生だったが、二人プレイが出来たこともあって超遊んだ。

アイスクライマーを知らない若者は検索してどんなゲームか見てきてください。

Google検索『アイスクライマー』

どんなゲームか忘れちゃったお友達も見てきてください。

あれから30年。山登りを始めて14年。最初は普通に山を歩いていたのだけど、気づいたら岩や雪山を登るようになり、ついには凍った滝を登るようになってしまった。

そしたらどうも、ゲームのアイスクライマーとは全然違う世界だったのだ。

注意事項…アイスクライミングは登山のジャンルの中でも危険度が高い遊びです。信頼できる経験者と一緒に行きましょう。未経験や浅い経験で登ろうとすると最悪死にます。

あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

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> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

『アイスクライマー』はどんなゲームか?

ゲームの方のアイスクライマーを大雑把に説明すると、

・階層になっているステージを、
・アザラシなどの敵を避けながら、
・床に穴を開けてジャンプで登り、
・時にはプレイヤー同士で殺し合いをし、
・上の方でナスを取ったりしながら、
・頂上まで登ってコンドルに掴まればクリア。

というゲームです。よく考えると荒唐無稽ですね。

動画を見たほうが理解が早そうなので知らない人は動画を見てください。

【コメ付】アイスクライマー【TAS】

で、実際のアイスクライミングはどうなのかというと。

凍った滝を地道に登る

ゲームでは床に穴を開けて豪快にジャンプして登っていくけど、実際は凍った滝を地道に登っていきます。

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床に穴を開けたりしないし、ジャンプもしない。そんな事したら死ぬ。(夏沢鉱泉G4 のF1 2019/3/16)

登る高さは色々だけど、国内だと10m~100mとか。僕は30mくらいの滝しか登ったことありません。

002.jpg
これで高さは30mくらい。八ヶ岳の南沢大滝という超有名な氷瀑です(2019/3/3)。

滝は自然の寒さで凍るので、形や硬さも色々です。年や日によって変わります。

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柔らかめでクラゲ状の氷。崩壊しやすい怖さがある(ジョウゴ沢F2 2018/12/9)。

さっきから写真の下に書いてあるF1とかF2というのは滝の番号です。

山にある沢には滝がありまして、大抵は複数の滝が連なっています。下の滝からF1、F2と数えます。

この記事で出てくる滝はどれも、アイスをやっている人は大体登ったことがある有名どころばかりです。

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ゆるい傾斜の氷。これくらいだと僕のような初心者でも簡単に登れます(裏同心ルンゼF1 2018/12/8)。

雪の量も氷の硬さも、毎回違うのが面白いところかも知れません。

005.jpg
雪が積もると谷が埋まって滝が短くなります(夏沢鉱泉G2のF1 2019/3/17)。

ハンマーではなくアックスを使う

ゲームではハンマーで床を壊して穴を開けながら登っていきますが(考えてみればすごい登り方だ)、実際のアイスクライミングではアイスアックスとアイゼンを氷に刺しながら登っていきます。

006.jpg
ペツルのノミックというアックス。2019年3月現在、1本4万円。2本必要なので8万円。(なお、僕が買った頃は3万円くらいでした)
007.jpg
刃の先はヤスリで削って尖らせています。

 足にはアイスクライミング用のアイゼン

アックスだけでは登れないので、靴にアイゼンを着けます。雪山登山用のアイゼンとはまた別の、氷を登るためのアイゼンです。

019.jpg
縦爪アイゼンというやつです。前の爪を1本にしています。

 アイゼンは2万5千円くらい。アックスと比べるとお安くなっております。

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爪の先はヤスリで研いであります。氷に蹴り込んで刺します。

滝と滝の間もツルツルに凍ってるのでアイゼンを履いてないと滑落して死にます。

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5m後ろは滝で、足元はスケートリンク。滝の先は300mくらい下までずっと凍ってるので多分落ちたら死ぬ。

こうして書いてみると、メチャクチャ危ない遊びだな、これ。

 氷にアイススクリュー打ち込んで安全を確保する

ただ登るだけならアックスとアイゼンでいいのですが、落ちたら怪我したり死んだりするので、落ちても大丈夫なようにロープで確保します。

ゲームのキャラと違って、僕らは不意に1m落ちれば怪我をします。弱さとしてはスペランカーの人に近い。

Google検索 スペランカー

確保用の支点は氷にアイススクリューというネジを打ち込んで作り、そこにロープを掛けていきます。

008.jpg
適当な間隔でアイススクリューを打ち込んで、自分のロープを掛けていく。すると下まで落ちずに済む(掛ける間隔や氷の形によっては下まで落ちるし、スクリューが抜けることもあります)。(夏沢鉱泉G3のF1 2019/3/17)

アイススクリューも色んな種類がありますが、例えばこんな感じ。 素材や長さが違います。

009.jpg
短すぎると落ちたときに抜けるし、長いと氷が薄い場所に打てない。氷の状態によってどれを使うか考えなくてはいけません(加減は正直わからない)。
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先は鋭くなっています。普通に服や皮膚に穴が開く。

先っちょをねじ込んだらハンドルを立てて回すと気持ちよく入っていきます。

IceScrew.gif
パイプ状になっていて、削った氷が出てきます。

 ちゃんと根本まで入ったらヌンチャク(スクリューとロープを繋ぐ道具)とロープを掛けて確保します。

012.jpg
これで根本まで入った状態。氷が薄いと根本まで入らないこともある(怖い)。

登りながら片手でスクリューを打ってヌンチャクとロープを掛けるのは大変な作業ですが、これをやらないと落ちた時に大変なのでがんばります。 

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今なら落ちても大した被害はない。

もちろんスクリューを打つ前に落ちると地面まで落ちます。グラウンドフォールと言います。 

013.jpg
はじめてのグラウンドフォール。下がフカフカな新雪でよかったよ!(雪まみれ)

 スクリューを打って確保して、上に登っていくと落下したときの距離が増えるので適当な位置でまた打ち込みます。

なぜなら、最後に打ったスクリューから登るほどに落下距離が増すからです。

013B.jpg
スクリューを打っては登り、打っては登る。地面まで落ちない様な間隔でスクリューを打ちます。

 

次のページにつづく。

 

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