特集 2023年7月11日

チャーハンを無限に食べることになった日

本当は違う記事を書く予定だった

世の中には知らない食べ物がたくさんある。今まで出会うことのなかった食べ物を食べたときの感動というのは何にも代えがたいものである。

今回、自分の知らないお店の場所と名物メニュー名だけを送ってもらい、それがどんなものか予想して、実際にそのメニューを食べてみるという企画を撮影する予定だった。そう、だった

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

前の記事:渋谷の中心でチャーハンをはしごする~チャーハン部活動報告


ぷるぷる定食を食べる予定だった

今回「ぷるぷる定食ってなんだ?」という記事を書く予定だった。浅草橋にある百万石というお店に「ぷるぷる」というメニューがあり、それがどのようなものかを予想し、実際に食べに行くという記事を書くつもりだった。

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そのお店は浅草橋にある。浅草ではない、浅草橋だ。
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情報提供者の編集部安藤さん。

このぷるぷる定食はデイリーのネタ会議で「ぷるぷる定食」というのがあると編集部の安藤さんが言い出し、じゃあ調べないで行けば、きっと記事になるだろうという話になったのがきっかけである。

これは面白そうだぞと思い、自分の中で「ぷるぷるだから、きっと豆腐を使った定食か?」や「もしかしたらフルーチェが大皿で出てきて、ご飯とみそ汁がある定食か?」などいろいろと考えて、事前に撮影もした。

そして、当日、お店に向かった。

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安藤さんの後ろに着いていく。

安藤さんもどんなメニューかは知らないらしい。「昔、ネタにしようと思ったんだけど記事になるか不安でやめたんだよ」

その無念、おれが晴らすぜ。

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路地へと入っていく。

地図ではこの辺りだが、お店が見つからない。え、もしかしてお店はないのか?と不安になりかけていたところで、先を歩いていた安藤さんがお店を見つけた。

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「あった!」
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「百万石」とんかつのお店だ。
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メニューにはぷるぷるがない。
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「ぷるぷるないですね」「ないね」

「不安」の文字が頭に浮かんだ。浮かばないでほしい。でも、これを食べるために来たのだ。お店に入って聞いてみる。

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このあと、衝撃の展開が。

お店に入るとお客さんがおり、ビールを飲んでいた。暑い時期に飲むビールはいいよなと思いながら「すみません、2名なんですけど大丈夫ですか?」と聞く。

すると「すみません、夜は食事をやってないんですよ。お酒だけで」と言われて「あ、そうなんですね」と言って肩を落としてお店を出た。

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ぷるぷる定食の謎わからず、撮影が失敗した瞬間である。
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帰り道泣いたよね。

締め切りが近いのにネタがダメになった瞬間に久しぶりに立ち会った。なんだろう、興奮してきたな。(第一部・完)

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ネタがなくなったけどどうする?

今回、ネタの趣旨に「どんなものが調べないで予想をして、お店で正解を知る」というのがあった。

なので、人から聞いた「ぷるぷる定食」がどんなものを調べず、編集部にお店の名前と住所、営業時間だけ調べてもらって、行くことなったのだが「夜にぷるぷる定食がないなんて書いてなかったからさ」と安藤さんが言っていた。

責任を感じてか雨が降っているのに傘を差してなかった。差してほしい。風邪をひくから。

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とにかくなにかネタはないかと歩いて秋葉原まで来た。もうこのままメイド喫茶にでも入るか?

そういえば、秋葉原に行きたかったチャーハンのお店がある。そこに行こうという話になった。なぜなら、もう締め切りが近くで他のネタを撮影する時間がないから。なので、急にチャーハンの記事になります。

ここからは「おれはチャーハンなら多めに食べられる」になります

秋葉原をさまよっていると、路地のところに目的のお店があった。ちゃんとやっていたし、ご飯もあった。やっている幸せをかみしめたいよね。

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雁川 (がんせん)というお店。
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豚肉生姜焼きチャーハンなんてあるのか。

ここのお店、普通のチャーハンもあるが、少し変わったチャーハンがある。それを食べてみたい。

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中華料理なのにたぬきがいる。
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優勝している。おれも優勝したい。

中華料理屋にしては派手である。どんなチャーハンがあるのか。どうする、チャーハンがぷるぷるしていたら、これが「おれのぷるぷる定食だ」になるかもしれない。

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「これでおいしくなかったらどうしますか?」と聞いたら目をそらした。現実逃避しないでほしい。

豚肉生姜焼きチャーハンというのを食べようと思い、メニューを見ていたが、盛りが選べるらしい。

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ほらここに書いてあるじゃないですか。
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トリプル盛。

店員さんに量を聞いたら「ものすごく多い」と言われた。え、どうする、企画としては量の多いチャーハンを食べた方がいいだろう。しかし、量が多いと聞いて食べられるか不安でもある。どうする。悩んだ結果、頼むことにした。ください、トリプル盛をください!

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牛すじチャーハンもおいしそう。ポスターを見たら、この日はやっていなかった。

「こういうアクシデントの記事ってあまりないですよね?」と聞いたら、「普通は調べるからね」と言われた。そんなことを話していたらやってきた。

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チャーハン到着。

安藤さんには比較のために並盛りを食べてもらおうと思っていたが、「W盛にしたい」という要望があり、それになった。比較がむずかしいだろうがと思っていたが、目の前に来たら、全然違うじゃん。

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左がトリプル盛り。右がW盛なのだが、2倍以上ないか?

アクシデントをカバーにするにしても量が多い。急に大食いの企画が始まった。始まらないでほしい。

W盛が並盛りのご飯1.5倍、肉が2倍なのに対して、トリプル盛はご飯が2倍、肉が3倍のっている。W盛と比べたら数字上はそこまで量が多くないはずだが、W盛の2倍以上あるように見える。

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最近、たくさんご飯を食べるようにしているらしいです。

安藤「最近、すごくトレーニングしていてごはんをたくさん食べるようにしているんですよ」

江ノ島「じゃあ、トリプル盛にすればよかったですね」

安藤「それは無理だ」

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食べて大きくなってほしい。
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あまりのおいしさに目を閉じて味わう。

「江ノ島くん、このチャーハンものすごいおいしいよ。生姜焼きの味がかなりきいてる」

生姜焼きとチャーハンなんて合うのか。生姜焼きとチャーハンなんてお腹ペコペコ高校生の食事だなと思った。

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じゃあ、食べさせてもらうかな。
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これはとてもおいしいものです。

チャーハンが少し薄めの味付けなのだが、上にのっている豚肉がしょうゆベースの生姜が効いた濃い味で、一緒に食べるとめちゃくちゃ合う。これ、気持ちが落ち込んだときにバクバク勢いよく食べたい。ぜんぶ、吹き飛ぶと思う。

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熱いので注意して食べてください。

おいしい。そして、量があるように見えたが余裕で食べられてしまい書くことがない。

「なんとか食べきった」という困難を乗り越えて完食したというように書く想定をしていたが、自分が怖い。

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するすると食べていく。
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ただ、中の方はまだ熱い。
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熱さで苦戦している頃、安藤さんはもくもくと食べきった。

本当にただおいしい食事をしているが、このままでいいのか。この記事、ボツになりそうだな。でもさ、失敗した記事を書くのもさ、みんなちゃんとした記事ばかりだと疲れちゃうじゃん。そう言い聞かせています。

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そう思いながら自分も食べ終わった。
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スープを片手に「全然、余裕でしたね」と笑顔の筆者。
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牛すじチャーハンも食べたかったな。

完食して水を飲んでいた。すると、近くの席で「今日って牛すじチャーハンあります?」と聞くお客さんがいた。

(それ、今日ないやつだよ)と心の中で思っていたが、店員さんは「今日は夜だけあるんですよ」と言っていた。

土日限定と書いてあるが、どうやら今日はあるらしい。でも、こちらはトリプル盛を食べたあとだ。

展開のことを考えたら牛すじチャーハンを食べたほうがいいよなー。葛藤をしている。

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よし、牛すじチャーハンください。

今、第2ラウンドが始まった。これが死闘になるとはこのとき、誰も思わなかった。

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安藤さんを見たら「途中で食べらなくなっても手伝えないからね」と言っていた。あきらめないで。
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お腹いっぱいかもしれません

やってきた牛すじチャーハン。牛すじが入ったとろとろのあんに玉子がのっている。もう見た目からしておいしそう。

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見た目からしておいしい。

隣の人が「この人、あんな大皿を食べていたのにまだ食べるのか?」という目線でこちらを見ていた。

違うんですよ、最初に行こうとしたお店がNGで、チャーハンを食べに来たら難なく食べてしまったので展開がほしくて。

ただ、お腹的にこんなチャーハンすぐに食べ終わってしまうだろう。まだまだ食べられる。そう思いながら食べて思った。

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ひとくち食べた思ったんですけど、
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もうお腹いっぱいかもしれない。

食べる前は全然食べられると思っていたのだ。しかしひと口食べたら「あ、これお腹いっぱいだ」となった。へー、これがお腹いっぱいか。

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そんな中、安藤さんは杏仁豆腐(特盛で3人分ある)を頼んで、
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おいしそうに食べていた。チャーハン食べてよ。

「やさしい甘さで食べ切れそうだけど、1人前だけあげるよ」と言われたので「少し甘めのあんで牛すじがプリプリしていておいしいので、ちょっとあげますよ」と言ったが「それは大丈夫です」と敬語で言われた。大人がちゃんと断るとき、敬語になるのを知った。

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多いなと思いながら食べている。でも、おいしいからなんとか食べられる。

「やっぱりトリプル盛が効いてますね。自分の胃袋を過信していたのかもしれないです」と弱気な発言が漏れてしまった。

すると安藤さん「野球だったらスリーカウントですからね。住宅だったら三世帯住宅。明治だったら三国干渉です」と言っていた。

多分、トリプル盛だからだと思うが、ずっと言ってくるのでレンゲを口に入れてやろうかと思った。たぶん、疲れているんだと思う。今日はみんな、8時間寝よう。

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そのあとずっと笑っていた。怖すぎるので早く食い終わって解散したい。

あまりにも苦戦している。目を離したすきに誰か食べてくれないかなと思っているが頼れるのは自分だけだ。

そんな様子を見かねて「きっと味が変わってチャーハンも食べきれるよ」と杏仁豆腐をくれた。

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食事の途中に杏仁豆腐を食べるのはじめてかもしれない。
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やさしい甘さでおいしいな……。
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杏仁豆腐のおかげが、牛すじチャーハンがどんどん進む。
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最後の力をふりしぼってかきこむ。

もうすぐ食べ終わる。この達成感がおれを駆り立てる。この瞬間のためにおれはご飯を食べるのだ。

本当はネタがボツになりそうだったので頑張って食べた。

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食べ終わった。
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もうお腹いっぱいだ。何も入らない。
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「牛すじまぜそばあるけどどう?」と言われたが、「今日は大丈夫です」と言って帰った。帰る途中、焼け石に水かもしれないが特茶を飲んだ。
 

何が起こるかわからない

ぷるぷる定食を食べることはできなかったが、また新しい食べ物に出会うことができた。

家に帰ってからもぷるぷる定食のことは調べなかった。今度行けたときの楽しみに取っておきたいので。

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食べているとき、隠れミッキーだ!と思った瞬間。
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