いける人はいける量
賞金などはないが、店内に飾ってもらえる喜びがある。1キログラムなら頑張ればいける人が多いので、無理のない範囲で挑戦してほしい。
デイリーポータルZのトップページに「今日のみどころ」という編集部の方々が当日の記事の見どころや、各々の日常の様子を書いたりしている日替わりコンテンツがある。そこにある日「ランチでステーキを食べに行ったら、1kgのステーキがあった」と書き込みを見つけた。その日は誰も注文しなかったそうだったので、代わりに注文をしてみたい。
※この記事はデイリーポータルZの運営元であるイッツコムのサービスエリア、東急沿線の魅力を紹介する記事です。
ただ、1つ問題がある。食べられるか不安なのだ。先日、カレーを食べたくなり、インドカレー屋でチーズナンを頼んだところ、1枚を悪戦苦闘しながら完食した。行く前は「お店のナンを全部食べてやるかな」と思っていたのに。
これは修行をする必要がある。トレーニングをすることにした。やったことを紹介していく。
まずは、大食いの人は満腹に以上に食べることで胃腸の大きさを拡張するそうだ。水を大量に飲んだり、食べ放題のお店で「それ以上食べては店がつぶれてしまいまする!」と店員に止められるぐらい食べる。
なので、お腹いっぱい食べようと思う。仕事帰りにチェーン店のつけ麺専門店、三田製麺所でつけ麺を食べることにした。
ここでは並(320グラム)中(480グラム)大(640グラム)を全て同じ料金で食べることができる。いつもなら迷わず大に頼むのだが、今日は冒険をしたい。
800グラムのつけ麺なんて、一生減らないのではないか。そんな気がするがこれも修行だ。人は無茶を乗り越えて成長する生き物だから。
辛つけ麺にしてみた。辛さを加えることで食欲もりもりとわいて相撲部の学生ぐらい食べられると考えた。
ただ、800グラムである。そう簡単に食べきれないだろうと思いながら食べ始めた。
びっくりだった。「途中、すするのがつらくなってきた」や「すでに腹10分目である」と書こうとしたが、「おいしいな」と思っていたらなくなった。あっという間に完食できてしまうおいしさ、その企業努力にお腹も心も満たされてしまった。
この日、多分何かが目覚めた気がした。無限に食べられる日が年に何回か来る。
テレビ番組の大食い選手権に出場しているほとんどの人がやせている。有名選手であるギャル曽根やもえあずなどあんなに細いのによく食べる姿に驚くが、実はやせている人の方が食べられる。
その違いは胃袋の膨らみによるものだ。元々の胃袋の大きさは、やせていようと太っていようと変わらないらしいが、太っている人は内臓脂肪が邪魔をして、胃袋を大きくすることができない。しかしやせている人は内臓脂肪がない分、胃袋を大きくすることがしやすいそうだ。
3日間、そんなトレーニングをしていたが、4日目で本当にこれでいいのかと行き詰まったので、違う方法を取り入れたい。そこでマラソンのトレーニングを入れてみようと編集部の安藤さんに聞いてみた。
江ノ島:マラソンって練習でも42.195キロ走るんですか?
安藤:フルマラソンだと同じ距離走ることもあるけど、100キロとか160キロとかを走るウルトラマラソンになるとやんないですね。トップ選手はやるかもしれないけど。
でも、普通のフルマラソンなら20キロくらい普通に走れてタイムもそこそこまとめられるようになると42.195キロもいけます。
新しい練習法を見つけた気がする。半分ぐらいの500グラムを余裕で食べられたら、きっと1000グラムなんて余裕だろう。
あと、安藤さんの大食い自慢も聞きました。
安藤:おれ昔ココイチで1300gのカレーを食べたことあります。1回失敗して1回成功した。
江ノ島:コツってありましたか?
安藤:カレーの時はおれもいろいろ人に聞いて、まず熱いからカレーが出てきてからタイマーがスタートされる前にトイレに行けって言われた。カレーが出てきてからトイレ行ってる間にちょっと冷める。
江ノ島:裏技だ!
ずるい攻略法を聞いたが、これも使えそうだ。
ハーフマラソンならぬハーフステーキを食べるため、500グラム以上のステーキがあるお店に行った。
東急東横線学芸大学駅から徒歩14分、もしくは東急目黒線目黒駅から徒歩22分にあるリベラ目黒店。
ここのお店はプロレスラーや格闘家の人たちに愛されたお店で店内には格闘家ファンにはたまらない、多くの格闘家たちの写真が飾られている。ステーキでも、プロレスラーの写真でも興奮できる。最高なお店だ。
そんなお店で食べられるのが横綱ステーキである。ステーキに横綱という言葉がついてきた。心強さがある。
第64代横綱といえば、外国人初の横綱として活躍し、相撲を引退したあとは、総合格闘技やプロレスラーとしても活躍した曙である。その曙がこのお店に来れば毎回食べることからこの名がついたメニューが横綱ステーキである。
しばらく待っていると横綱が自分の席に土俵入りした。来てくれてありがとうございます。
ここは赤身の熟成肉を出すお店として、テレビなどでも紹介されており、格闘家だけではなく、食通もうならせるお店として有名だ。一定期間、低温で保存することでうまみや柔らかさが増す熟成肉。
赤身なのに柔らかくて、ナイフでスッと切れて、口に入れたら肉のうま味と歯ごたえにノックダウンしそうになる。おいしい。
これでもかというぐらいスタミナがつく。会社に行く前にひとなめしてから行きたい。帰る前にもなめて帰りたい。
640グラムがどんな量がわからなくて、食べられるか不安だったが赤身でさっぱりしているのでペロリと食べ切れた。ライスも食べたがかなり余裕がある。
この日のためにトレーニングをしてきた。水を大量に飲んで胃を膨らますトレーニングをしようと会社で水をいつも多めに飲んだらトイレが近くなって「トイレにすごい行くけど大丈夫?」と言われたので止めたりなど、そのトレーニングは過酷だったという。
「負けられないですよね。あいつ、意外と食べられないんじゃないか、と思われるのが嫌で。今日は見せつけようと思ってます」
やる気に満ちあふれながら、挑戦しに行くお店へ向かう。東急田園都市線にある「STEAK DINER BULL」(ステーキダイナー ブル)というお店だ。
看板メニューであるステーキは、子どもでもペロリと食べられるらしい。なら、1kgなんて余裕だろう。
店内に入ると1キロ食べた勇者たちの写真が飾られている。このひとりになりたい。
先日、このお店に俳優の田中圭夫妻が訪れて、奥さんが1キログラムを食べきったそうだ。写真ももちろん飾られている。田中圭の家族に並びたい。
鉄板に収まりきらない大きなステーキ。思っていた以上に大きくて膝が震えたが、これが武者震いってやつか。
こんだけ大きいとどうやって切っていいのかわからなくなるが、挑戦をしていきたい。ちなみに制限時間はないが、入店した時間が14時でお昼の営業が15時まで。60分一本勝負となった。
コショウで下味された肉に卓上にある、塩、醤油、ぽん酢で自分好みの味付けしながら食べていく。
これだけ多いと食べるというよりも攻略をしていくという感覚に近い。少しずつ減るステーキに悲しみを感じつつ食べる。
半分を食べきったところで味を変えてみよう。ぽん酢をかけて食べる。柑橘系の風味とすっぱさでフォークが止まらない。ぽん酢さん、生まれて来てくれてありがとうございます。
順調である。何事もなく1キロ食べて、帰りのレジで店員から「どうでしたか?」と聞かれたら「あと2キロ、いや無限に食べられましたね」と言って帰りたい。そんなことを考えながら、ライスを食べた。
突然だった。60%ぐらいだった満腹度が急に90%になったから驚きを隠せなかった。でも、やりきりたい。あのトレーニングを無駄にしないために。
途中、あきらめそうになったが30分弱で完食することができた。店員さんも「お、すごい!おめでとうございます!!」と祝福してくれた。
店員さんが言うには「ディナーの時間だと営業時間が長いので食べきる人は多いですが、お昼は営業時間が短めなので完食する人って少ないですよ」
聞くと、中には10分ぐらいで食べた人もいるそうだ。それは超人である。
1キログラムを完食した人はちゃんとしたポスターを作ってくれる。1週間ぐらいかかるそうなので、この記事では間に合わなかったが、10月26日ぐらいにはできているとのことなので見に行こうと思う。
賞金などはないが、店内に飾ってもらえる喜びがある。1キログラムなら頑張ればいける人が多いので、無理のない範囲で挑戦してほしい。
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