流行って欲しい
知らない土地を遠隔で散歩する方法はないかなと考えて思いついたのが、これだった。今回は初めてやるので機材トラブルを考えて、私の家の近くでやったのだけれど、成功したので今後は知らない土地でもやりたい。そのためには知らない土地で散歩してくれる「ゲームの中の人」が必要だ。私は自宅でコントローラーを握るだけで楽だけど、「ゲームの中の人」は大変なので、そのケアはめんどい。
散歩というものがある。近所や出かけた先の知らない街を歩くことだ。健康にもいいし、気晴らしにもいい。目的地をやんわり設定して歩いてもいいし、目的なくただ歩くだけでもいい。とても平和的な行為と言える。
ただ最近は暑いし、遠出するのが難しい世の中なので、毎日同じ散歩コースでは飽きてしまう。そして、歩くと疲れてしまう。散歩を全面的に否定しているけれど、疲れちゃうのだ。そこで自分ではない人に散歩してもらい、散歩をゲーム感覚で味わいたいと思う。
動画サイトを見ていると、ゲーム実況をよく目にする。感想や次はこうしようなどと話しながら、ゲームをプレイするというものだ。「実況者」などと言われ、日本はもちろん海外でも人気となっている。
ゲームにはTPSやFPSなど、いくつかの視点がある。TPSは第三者視点で、FPSは主人公(一人称)視点だ。FPSでは基本的に操作しているキャラクターは見えず、手や持っているものしか見えない。私は没入感があるのでFPSが好きだ。
ゲーム実況とFPSを合わせることで、ゲーム感覚で散歩できないだろうか。私は散歩をしない。誰かが「ゲームの中の人」となり散歩し、「実況者」となった私が「ゲームの中の人」を操作するのだ。FPSは軍事訓練にも使われていると聞くし、いいと思うのだ。
まずはスマホやタブレットを準備する。スマホ2台でもいいし、タブレット2台でもいい。とにかくzoomやGoogle meetなどのオンライン会議ができる持ち運びがしやすい端末が2台必要だ。今回はスマホとタブレットをそれぞれ1台ずつ準備した。
スマホでGoogle meetを立ち上げ、自宅のパソコンとつなぐ。これでスマホのカメラに映るものが、自宅のパソコンの画面に映ることになる。それをOBSで読み込む。OBSはストリーミング(配信)ソフトで、今回は複数の画面を1つにまとめるために使っている。
次はタブレットでzoomを立ち上げ、自宅パソコンとつなぐ。画面共有という機能を使い、タブレットでGoogleマップを共有することで、自宅パソコンにもGoogleマップが表示される。
だんだんとゲームっぽい画面になってきた。スマホからGoogle meetを通して、リアルタイムの映像が送られてきて、タブレットからはzoomを通してGoogleマップが送られるので、今いる場所がリアルタイムでわかる。映像と地図が同期した状態なのだ。
次に実況者をリアルタイムで画面に合成する。海外のゲーム実況では実況者が画面の端にいることが多いのだ。これに憧れているので、今回はそうすることにした。
ゲームを知らない人には、彼は何を言っているの? という状態になっていると思うけれど、そういうものとご理解ください。最後に体力ゲージや、目的などを画面に載せて、お散歩FPSの画面は完成となる。
このゲームは一人ではできない。自宅でゲームをしている「実況者」と、本当にスマホやタブレットを持って散歩をする「ゲームの中の人」の2人が必要となる。ここでは散歩している、つまり実況者に操作される「ゲームの中の人」について書く。
「ゲームの中の人」は今回で言えば、スマホとタブレットを持って散歩をする。スマホには三脚的なものに付けて手に持ち、タブレットはリュックサックに入れる。どちらも当たり前だけど、zoomやGoogle meetに繋がった状態でだ。
画面には「ゲームの中の人」は映らないので、何かを持っている方がいいだろう。今回は虫あみをチョイスした。FPSゲームだとピストルなどが多いけれど、今回は散歩なので、ピストルはそぐわない。つまり虫あみなのだ。
自宅にいる実況者からは、「右」とか「左」とか「虫あみを振る」など声で指令が来る。それを聞くために「ゲームの中の人」はイヤホンを片耳に付けている。その指令通りに歩くのだ。勝手に動かれるとゲームではなくなるので、指令通りに動いてもらう。
本当のゲームでは次に行きたい場所をマップ上で選ぶことができる。すると、地図上にピンが落ちたり、道順が表示されたりして、迷うことがなくなるわけだ。これも今回のお散歩FPSゲームでは実装されている。
これが「ゲームの中の人」の状況だ。自宅にいる「実況者」がよりゲームっぽく散歩を楽しめるようにするためのシステム。「ゲームの中の人」に意思はないのだ。それは却下なのだ。では、早速このシステムで散歩をしてみようと思う。
今回は私が自宅で実況者となり、別の仕事で近くに来ていた知り合いに「ゲームの中の人」をお願いした。説明したけれど、知り合いは「なんで自分だけ暑いところを歩くの?」としきりに言っていた。私は「マリオはそんな文句を言うかい?」と返しておいた。
操作確認が終わったところで、目的地を決める。今回は神社に行くことにした。「ゲームの中の人」にGoogleマップで検索してもらい神社への道順を示してもらう。実況者は地図を見ながら、「右」とか「左」とかと指示するわけだ。
リアルな世界でゲームをしていることに感動する。画質の問題はあるけれど、5Gになると解決していくだろう。プレイステーションも最後につく数字が増えるごとに画質がよくなっている。今年の終わりには「PS5」が出てさらに綺麗になると聞く。それと同じように5Gになると画質もよくなるのだ。今はまだ4Gだけど。
「HP」は減ったり増えたりする。これは暑いので、時間が経つと勝手に減って行くのだけれど、水を飲んだりすることで回復する仕組みだ。ちなみに私はクーラーのある部屋で実況している。「ゲームの中の人」の舌打ちがたまに聞こえるけれど、聞こえないものとする。
また実況者はswitchを持っている。ゲームをしている雰囲気を出すためだ。switchの画面には何にも映っていない。カメラの裏側にモニターがあるので、それを見つつ、声で指示を出している。コントローラーは全く意味がないのだ。雰囲気だけ。
せっかく網を持っているので、セミを取りに行く。神社に行くというクエストは一旦無視して、セミがいる場所へと「ゲームの中の人」を誘う。実況者の思うがままにゲームの中の人は動くのだ。それがゲームなのだ。
ものすごい喜び。リアルで考えれば私はセミを捕っていない。「ゲームの中の人」が捕まえたのだ。しかし、私の操作で虫あみを振ったので私の手柄。ゲームってそういうことだから。だから盛り上がりもすごいのだ。
目的地の神社に到着して、クエストがクリアとなった。ずっと部屋の中にいたけれど、ゲームをしている気分はもちろん、散歩をしている気分にもなる。一石二鳥なのだ。これを知らない街でやったらさらに盛り上がると思う。「ゲームの中の人」は疲れたと言っていたけれど。
知らない土地を遠隔で散歩する方法はないかなと考えて思いついたのが、これだった。今回は初めてやるので機材トラブルを考えて、私の家の近くでやったのだけれど、成功したので今後は知らない土地でもやりたい。そのためには知らない土地で散歩してくれる「ゲームの中の人」が必要だ。私は自宅でコントローラーを握るだけで楽だけど、「ゲームの中の人」は大変なので、そのケアはめんどい。
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