動機はこんなふう
壁にポスターを貼るとき、その水平や垂直はたいてい目分量で判断する。 わざわざ水準器を使ったりしない。
あるとき気になって、自分たちで貼ったポスターの垂直を調べるために、 重りをつけた糸をつるして、比べてみた。結果はおどろくほどぴったりだった。
それ以来、ぼくたちの目分量も意外に捨てたものじゃないんじゃないかと思っているのです。
紙のちょうど半分をみつもる
たとえば、何かのちょうど半分の位置をみつもる、という場合。
パンやケーキを切ったりする場合など、半分の位置を見切るという作業はたいてい目分量で行われて、それなりに正確だったりする。
紙の場合は折ってみればいいのだけど、ここではあえて見当をつけて半分と思うところにしるしをつけてみた。
その後で、紙を半分に折った。
メジャーで計ってみると、折り目のついた本当の半分の位置からの誤差は約4mm。A4の横の長さはだいたい30cmなので、誤差の割合で考えると1%ちょいだ。
これはかなりいい線なんじゃないだろうか。
100mをみつもる
次に、100mの長さの見当をつけてみたい。
上の写真は、自宅のそばの道路を撮ったもの。これでいうと、矢印を書いた、ちょうど車が左折しようとしている辺りが100mかな、という気がする。みなさんはどうでしょう。
それを確かめるために、道のりを計るロードカウンターという機械をころがして実際に向こうまで歩いてみた。
見当をつけた場所で確かめてみると、その距離は94.4mだった。すごい!けっこう正確だ。
誤差の割合でいうと5.6%。こう書くとけっこう大きな誤差のように思うけれど、でも実用的には十分に正確な範囲なんじゃないだろうかと思う。
目分量で対決
日常的な身近な量に関しては、素人の目分量でも誤差5%ぐらいでみつもることができるんじゃないか、という気がしている。
もうちょっとサンプルを増やすために、知人のN西さんに協力してもらうことにした。他のいろいろな量について、目分量と実際の量をくらべてみたい。
お湯の温度をみつもる
シャワーで熱めのお湯を入れてみる。さわってみた感じだけで、どれくらい正確に温度がわかるものなんだろうか。
お湯にふれるとじりじりと熱い。5秒もすると我慢できなくなってくる感じだ。
体温が36度として、40度よりはずっと熱い。かといってたまに銭湯にあるような50度ほどの熱湯でもない。
ぼくは46度、N西さんは42度と予想。実際はどれくらいか?
実際の温度は48度。惜しいような気もするし、けっこう外れているような気もする。ひとまず表にまとめてみた。
お湯の温度 |
氏名 |
誤差(%) |
三土 |
4.1 |
N西 |
12 |
画像の大きさを見つもる
次に、画像の大きさを目分量で見切るということをやってみたい。
内輪の話で恐縮だが、当サイトでつかう画像の大きさはふつうは横に320ピクセル、縦に240ピクセルとなっている。大きめの写真をとったときは、これを画像ソフトの力を借りてリサイズすることになる。これを目分量でやってみたい。
上の大きなそぼろ丼の中心部分を、320×240ピクセル分だけ見当をつけて切り取りたい。どんなものだろうか。
結果は、N西:326×254、三土:293×209となった。同様にまとめてみる。
画像の大きさ |
氏名 |
誤差(%) |
三土 |
8.4 |
N西 |
1.8 |
つづいて、重さと長さ。
ひきつづき、物の重さと長さについても検討してみた。結果のみをまとめます。
水1kgの重さ |
氏名 |
誤差(%) |
三土 |
19 |
N西 |
17 |
ギターの長さ |
氏名 |
誤差(%) |
三土 |
9.5 |
N西 |
9.5 |
目分量のよさを知らしめたい
水の重さについてはだいぶ大きな誤差を残してしまったものの、おおむね10%以下の誤差には見積もれている。
やはり、目分量はそれなりに有効なのだ。10%の誤差で困ることは日常的にもそうあるまい。
目分量の復権のため、その良さを人々に知らしめてきました。
ライター工藤さんに偶然出会った!
当サイトライターの工藤さんが、最近ぼくの家に近くに引っ越したという話をきき、遊びにいってみることにした。
もしも機械計測にたより、目分量をおろそかにする生活をしているようなら、その場で熱血指導をするためだ。
と、そのとき最寄のコンビニで買い物を終えてでてくる工藤さんを偶然にも発見!
夜中、忙しいところを無理やりご協力いただいたわけでは決してないのである。
カップラーメンの3分を見積もる
工藤さんは夕飯のカップラーメンを買い、これから食べるところだという。お湯を入れてからの3分はタイマーで計るつもりらしい。
なんと嘆かわしい。
いやがる工藤さんを説得し、工藤さん自身の体内時計で見積もってもらうことにした。
冷え込む秋の夜、車がとおりすぎるそばで、工藤さんがもくもくと3分を数える。
カップラーメンの上に置いた指を、規則的にポンポンと叩いている。1秒ずつ数えるというスタイルのようだ。
後で聞いた話によると、工藤さんはこどものころ、こんな感じで3分を計るという遊びをしていたことがあって、全盛期は誤差3秒とかの正確さだったとのこと。コツは、柱時計の振り子のリズムを体に刻み込むことだという。すごい。
ややあって、工藤さんが手を挙げた。3分たったという意味の合図だ。
結果をお教えする前に、まずは出来たカップラーメンを一口食べてもらった。お味のほうはいかがでしょうか。
思ったよりもぬるい!といって工藤さんはショックを受けていた。目分量の値は本来の時間よりも1分半も長い。
じつは途中で工藤さんが「2分」とつぶやいたとき、手元の時計はすでに3分をすぎていた。年月で感覚がにぶりますね、と工藤さんはおっしゃった。
お気づきかと思いますが、工藤さんに偶然出会ったわけなどもなく、夜中に突然お電話をして、無理なお願いをさせていただいたのでした(工藤さん、本当に申し訳ありません。ありがとうございました!)。
結論:そんなに正確じゃない
ここまでの結果をまとめてみると、人の目分量はやっぱりそんなに正確じゃない、というふつうの結論になってしまった。
もうちょっと詳しくみてみると、紙の長さの半分、とか、体温にくらべて何度高いか、とか、そういう何かの目安にたいして相対的に判断がきく量にかんしては、それなりな誤差(5%とか)で見積もることができるようだった。
たいして、3分とかの絶対量を突然はかる、というのはやはり苦手なんだと思う。ボクシングの選手とか、3分の長さが体にしみこんでいる人なら、それを目安にすることができるかもしれない。
当たり前のことをいって終わります。