朝5時半。セットしたアラームの音で目が覚める。そうだ、今日はホテル朝食を食べに行く日だった。着の身着のまま、財布1つで車を走らせた。
佐世保駅すぐそばにある、なんなら、バスセンターのすぐ上にあるという旅行の香りが超濃厚なホテル。コロナになる前、ここに来る県外からの友人を出迎えたり自分が旅立ったりしていた場所である。そんな場所にただ、朝食を食べに行く。
フロントと同じ雰囲気なんだけれども、配膳の音や食べ物の気配で場がニギニギしている感じ。早くも旅行に来た感覚にブワッと襲われた。
軽装で行くとまさに宿泊者気分
入口で「いらっしゃいませ、おはようございます。」と出迎えられる。朝食券は、と聞かれいいえと答える。「朝食のみの利用です」と伝えると意外な顔をされた。これはもしかして、わたしが宿泊者に見えたのか。思わずにやっとする。
陶板だ。陶板焼きだ。旅行先で泊まった旅館でしか見ないやつだ。それを私は、なんでもない日の早朝に、地元で見ている。
地元で味わいつくしているはずの食材が、よそいきの顔で目の前に並んでいる。気さくに遊んでいた友人が、急に着飾っているのを見て照れくさくなっている感じ。
こりゃ一体どうした、という感じの贅沢さにニヤつく。外を見ると、やはり馴染みのある景色がレストランの窓枠で着飾っており、これまた照れくさいのであった。
陶板焼きの固形燃料が燃え尽きた香りではっとして蓋をあけると、名物の「海軍さんのビーフシチュー」が入っていた。ああ、どうも。地元なのに地元名物に軽く会釈をする。そんな仲だ。
景色を眺めながら、佐世保名物に舌鼓。店員さんの「おはようございます。」「いってらっしゃいませ」の声に非日常感を感じつつ食事を満喫した。
出勤前にも、何気ない日の朝にもおすすめだ
ホテル朝食、これはおおいにアリだ。出勤前にも、何気ない日の朝にもおすすめしたい。
周りから聞こえてくる佐世保弁に耳を傾けながら、「これも旅行者からすると醍醐味の1つなんだろうな」と考える。
食事を終え、きっちりアンケートに記入。これも、旅行先でよくやるやつだ。わたしにとっては、これも思い出の一部となるので、おのずと評価も高くなってしまうやつである。
スーツケースを引いて歩く人たちと途中まで同じ方向に歩き、そのまま家路に着くまでの過程がなんとも滑稽なのだった。