特集 2023年5月30日

ホルンの形に巻けない僕たち

全員が黙った後、一斉に笑い出す時間があった

なんとか4人分のホルンが出来上がって感想を言い合う時間になった。

「なるほど」「そうなるよね」と納得できるポイントが多々ある。やってみた者が見ると、やりたいことは分かる、という出来にはなっているのだ。

しかし何も知らずこのケーブルを見て「ホルン」と答えられる人はいないだろう。「絡まったケーブル」と答えるだろう。

安藤さんと窪田さんがお互いのホルンを称え合っていた
窪田さんのホルンは構えられる

うん、素晴らしい。構えるとグッとホルンっぽくなるが、今回思っていたこととは、ねえ、ほら… 

みんな段々、口数が減っていった

良いところを探そうと頑張るのだけど、この机を見るとしゃべることがなくなってくる。 

これはケーブルを固定するために持ってきた細い針金

「結局これが一番ホルンじゃない?(グルグルしているから)」とホルンへの認識も迷走し始める

この後、僕はこの針金が指に刺さってじわっと血を出した。 

黙って見つめ合うしかなくなる
全員が黙った後、一斉に笑い出す時間があった。怖かった
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反省を胸に

「どうしたらいい」「人を集めたのに」「記事にする? これを?」様々な思いで頭の中をパンパンにしたまま、結局この日はどうにもならず家に帰った。

夜9時に寝て、朝起きてからも半日ほどこの企画について考えるのをやめた。いい天気だった。

冷静になった頭で反省したのは以下の3点だった。

  • もっと緻密にやる意識が必要だった。みんなでワイワイやるタイプの作業ではなかった
  • ケーブルはクセが強くてホルンのように巻くのには向いていない
  • ホルンの形の、軸になる物を用意して、それを頼りに形を作るのがいいかも

失敗するのはいい。大切なのはその後の行動である。 

反省を胸に、もう一度ワイヤーでホルンを作ってみる。今度は家で一人
良かったのはペンチを使ったところ。こういう直角が簡単に作れる

今僕は「道具を使うとやりやすい」という情報をお伝えしている。石器時代だったら有益な情報。

初めて20分ほど 

ホルンができた

粗が目立たないよう、少し小さめに作ったのも良かったかもしれない。

今回初めて「何かを作った」という手応えがあった。何と言っても「ホルン」と分かる。

さあ次だ。当初はこのようにケーブルを巻きたいと言っていたのだが、反省を生かしてそこからは撤退しよう。引く勇気。 

代わりに透明のチューブを用意した

ホルンの形のストローができたら素敵なのでは。

うまくいきそうだ

ケーブルにはクセがあって全然思い通りに曲がらなかった。ケーブルより柔らかくて断面が丸いチューブなら、もう少し作業しやすいはずである。

そして、さらにもう一つ。

さっきのワイヤーにチューブを固定していく作戦

ワイヤーのホルンが思ったよりしっかりできたので、これをそのまま軸として使う。失敗しようがない。

早くあの3人に伝えたい。うまくいきそうだと。 

管が鋭角に曲がるところはチューブが潰れちゃうので、曲がるストローを使った

チューブとストローをつないでいくのが細かい作業で難しい。しかも数が多い。

ストローの買い出しや休憩を挟んで5時間ほど。 

ホルンができた!
ホルンだ!

ずいぶんゴテゴテしてしまったが「ホルンのストローができた」と言っていいだろう。

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だってこれだったんだから。最初は
すぐにみんなに報告した

チャットで胴上げされている気持ちになった。

こんなに嬉しいのはやはり一回大きく挫折したからだろう。大成功が嬉しいのはもちろんだが、大失敗からの小さな成功もそれに匹敵する嬉しさがある。諦めなくて良かった。 

ストローとしても使えた。かなり息が漏れちゃうけど

今回分かったことは何と言ってもこれだ。

ケーブルはホルンにならない。チューブはホルンになる。


人間が困っていくドキュメンタリーがあった

最初の、4人でホルンを作っていた時間。撮ってもらった写真をサムネイル表示にしてスクロールしていくと、みんながどんどん困っていく様子がとてもよく分かる。

なんの役にも立たないが貴重な時間を残せたなと思った。

最初の頃
最後の方
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