特集 2023年7月3日

大阪で冷やしあめを巡りながらの街歩き

泉尾商店街の双葉へ

冷やしあめ飲み歩きという一人旅を堪能した翌々日、今度は大阪在住のライターであるスズキナオさん、シカク店長のたけしげみゆきさんに付き合っていただき、もう少し回ってみることにした。

冷やしあめの味を知りたいという段階はもうすっかり終えているが、営業日や場所や私の胃袋の関係で、行ってみたい店がまだ数店残っているのだ。

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次のお店の最寄り駅は、私の宿泊地からだとドーム前だった。
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なんのドームだろうと寄ってみたら京セラドーム大阪だった。超かっこいい。ネーミングライツの関係でドームの名前が替わる可能性があるから、ドーム前というざっくりした駅名なのかな。
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少し歩いて大正駅でスズキナオさん(右)、たけしげみゆきさん(左)と合流。

大阪生まれ大阪育ちのたけしげさんに冷やしあめの思い出を聞いたところ(ナオさんは東京生まれ東京育ち)、家の近くに店頭で売っている店はなかったけど、スーパーなどで親が買ってきてくれた濃縮タイプがよく冷蔵庫に入れてあり、カルピスのように割って飲んで育ったとのこと。へー。

これから我々が向かうのは双葉というお店で、あえて詳しくは調べていないが、その場でアイスを挟むモナカも食べられるようだ。

この日は雨が降ったりやんだりで冷やしあめ日和ではないけれど、若干二日酔い気味の冷たくて甘いものを欲する体調に仕上げてある。

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目的地は泉尾(いずお)の商店街。

三人でネットに載っていた住所までやってきたのだが、それらしき店が見当たらない。

しばらく彷徨って、もしかしたらこのお菓子屋さんがそうなのかもと訪ねてみたところ、双葉はすぐ近くにあった店だが、2018年の台風で屋根が壊れてしまい、残念ながら閉店してしまったと教えてくれた。

現場でのときめきを優先するあまり、事前にきちんと調べない弊害である。話を伺ったお店では冷やしあめを置いていなかったので、少しでも近いものをとオロナミンCを購入し、教えてもらった場所で飲み干した。

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駐車場になっていました。
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泉尾は沖縄からの移民が多いから沖縄そばがおいしいんですよと連れてきてもらった店は定休日。
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かっこいいコインランドリーがあったので良しとしよう。

こんな日もありますよと二人に励まされながら電車に乗って二軒目へと向かうと、なんとこちらは臨時休業だった。今のところ本日の撮れ高はゼロである。

悔しいので店名は書かない。

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「ま」から「す」へのつながりがかっこいい。後日ナオさんが行ったところ、近所の子ども相手に一人で静かにやっている店だからと撮影禁止だったそうだ。なので、そっとしておきましょう。

神戸市の東山商店街の鼻知場商店へ

旅の最終目的地は足を延ばした先の兵庫県神戸市。湊川公園駅から北に向かった先、東山商店街にある鼻知場商店だ。

この店は関西の冷やしあめ好きなら知らぬものはいないという有名店で、ナオさんもちょっと前に訪れたことがあるそうだ。

有名な冷やしあめ屋さんってどんなだろう。とりあえあず、また閉店していたというオチだけは回避できそうで安心した。

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カメラを向けられると気をつけをするナオさん。

「確かこっちだと思います!」と先頭を歩くナオさんについていくのだが、これがなかなか到着しない。そしてスマホの地図を見ようとしない。あくまで自分の記憶だけで辿りつきたいようだ。スズキナオ改めスズキナビである。

おもしろい店が多い商店街なので、私も地図アプリを見ないようにしてフラフラとついていく。

ぬらりぬらりと歩いたところで、ナオさんが「これこれ!」と足を止めた。

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おや、その冷やしあめは白くないですか。
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「僕は豆乳を見かけたら飲むことにしているんです。うーん、うまい!」

冷やしあめじゃなくて豆乳だった。

ウォータークーラーで豆乳が売られているのは初めて見るかも。関西は店頭でドリンクを売るのが盛んなのだろうか。あるいは関東にもある文化だけど私が知らないだけなのか。

さらに彷徨った先で、今度は私が「これこれ!」と足を止めた。

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これも飲んでみたかったのだ。
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大阪名物(神戸だけど)ミックスジュース!

モモとリンゴとバナナとミカンが入っているというミックスジュースはとてもおいしかった。

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鼻知場商店は確かに名店だった

そんなこんなで30分ほど寄り道を楽しんだ後、「ようやく思い出しました!こっちです!」とナオさんが足を速めた。

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この路地にあるらしい。

ようやく辿りついた鼻知場商店はすごかった。

カウンターに置かれた商品は「あめ」と「レモン」のみ。そのお値段は50円。何時代の値段設定だ。

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写真を白黒にしたら時代がわからなくなりそうだ。

私とたけしげさんは冷やしあめを、ナオさんはレモンを注文。この店は電動のウォータークーラーではなく、ガラスの容器に大きな氷を浮かべて冷やすスタイル。

それをひしゃくで塩梅よくガラスのコップに注いでくれる。これぞ冷やしあめの聖地である。さっきから鳥肌が止まらない。

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旅のフィナーレに相応しい名店。
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これぞ飴色。冬でも温めずに冷たいドリンクとして売っているそうだ。

心を落ち着かせていただくと、見た目通りのコッテリした甘さに負けないように、しっかりと効かせてある生姜の刺激が喉に気持ち良い。これが500円だったとしても、まあそれくらいはするよねと思うだろう。

「冷やしあめの材料は、麦芽糖、黒糖、生姜とか。私はこれを作れないから、90歳の父がやめたら終わりなんです」

鼻知場商店の創業は昭和35年。時代に応じて扱う商品は移り変わり、現在は巻きずしやいなりを主に作っているが、冷やしあめは創業時からずっと売り続けているそうだ。商売として考えると、引き継ぐのは難しいのだろう。

ご主人が元気なうちに来られてよかった。あと10年は達者に続けてほしい。いや20年。

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「すみません、不定休です」と書かれた張り紙に肝を冷やした。やっていてよかった。
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もちろんレモンも注文。シャリシャリの氷が入っていて、これが口に流れ込んでくるのが最高。甘さは抑えめで、あっさりしたレモネードという印象。夏場は冷やしあめよりもこちらがよく出るそうだ。
最高でした。

冷やしあめの飲み歩きは楽しかった。店ごとの雰囲気や味の違いはもちろんだが、こうして縁のなかった街や商店街との接点が生まれたのもよかった。お酒と違って酔いつぶれることがないし、ラーメンのようにお腹いっぱいにもならない。ほぼ砂糖水なので血糖値が上がって倒れる可能性もなくはないけど。

ビロくんからいただいたリストで見落としてしまった店もあるし、京都あたりにも名店があるらしいので、またいつかこの続きをしてみよう。

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そういえば滋賀県の都湯という銭湯でも、ビンに入った冷やしあめを飲んだことをさっき思い出した。
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