極めて近代的なゲーム
やってみて、ひらがなものまねには以下の特徴があることが見えてきた。
・思い通りにならない自分
・それでも分かってもらいたい
・分かってもらえない苛立ち
・でも、簡単にするのは嫌だ
と、近代の人間の複雑な感情を含んだゲームである。夏目漱石がいいたかったのもこういうことかもしれない。
「み!!!!」
石井:「れ」じゃないですか
林:うん、あたり
べつやく:気持ちは伝わるけど。もう1本手が欲しいね
西村:こまわり君の「死刑!」みたいな
林:クックロビン音頭でも
石井:八丈島のキョン
べつやく:こうして……痛っ!
石井:ついに怪我人がでた
べつやく:足がつった
西村:ストレッチしてやらないとだめですね
石井:「え」
林:「ま」
べつやく:これストレッチです
石井:ああストレッチですか
べつやく:では出題します
石井:「や」
西村:「と」
林:塊だよ
石井:一瞬しゃくれてたんだよな
べつやく:…しゃくれは関係ない
石井:「ち」
西村:なんでわかんないの?って表情してますね
べつやく:そう、こんなにできてるのに
西村:「む」じゃないですよね
林:「え」?
べつやく:「え」じゃないよ
西村:「ね」とか
べつやく:「ね」でもない
石井:いま頭のなかで見当たらないまま「ん」までいっちゃいった
べつやく:見当たるでしょ
西村:「み」じゃない
べつやく:どこもくるってないってない
林:「よ」
石井:「そ」?
西村:意外と難しい
べつやく:自分ではすごい出来てると思うんだけど
石井:あれ、ないぞ
西村:顔と手は十字で交わっていると思うんだけど
西村:「ち」でも「む」でもない
林:「て」
石井:「き」
べつやく:ノー
林:「さ」じゃないの?
石井:えーないぞ
べつやく:あるじゃん!!
石井:鼻濁音とかでもないんですよね
林:「ぺ」
西村:「は」
石井:「よ」
林:あ、わかった。「ふ」だ
べつやく:違う
石井:もう全部言いましたよ
べつやく:言ってないよ
石井:ここが短い気がするんですよね、「お」じゃないかな
石井:やっぱりないですよ
西村:「よ」
石井:「ち」
林:「わ」
石井:「を」
石井:たしかに座ってる感じあるわ
林:確かに、もう一回
林:あー
べつやく:「を」でしょ
石井:たどりついた
石井:カタカナでチャレンジしたいのがあります
べつやく:なんでそんな難しいのを
べつやく:「ヤ」?
石井:こうしたほうがいいかな
べつやく:「タ」?
石井:違います。こうでもいいかな
べつやく:「ツ」だ!
石井:そうです!
西村:どう表現するかですね。
べつやく:「9」
林:象のものまねじゃないんですよね…
石井:わかった「ヤ」
西村:違います
西村:本当は、こうしたい。膝を伸ばして
西村:カタカナです
べつやく:ロ?
西村:そう、ロ
林:自分の体が思い通りに動かないんですよね
西村:そう、年寄りだから
べつやく:ス
林:ちょっと何言ってるんですか。これ簡単すぎでしょ
べつやく:エ
西村:「ス」以外思いつかない
べつやく:「ヨ」
べつやく:「ユ」
林:そう、「ユ」!
林:自分としては足と胴がカクンって90度に曲がっている感じだった
べつやく:ふにゃーんとなってるからね
林:「ス」って言われたときに斜めなんだろうなって思ったよ
石井:「ス」でしたよ
西村:ではちょっといいですか
西村:これ完璧でしょ
べつやく:ええ?
西村:カタカナ
林:「ヨ」じゃないんだよね。足が開いてるから
石井:「ヲ」?
べつやく:「ヌ」だ!
西村:「ヌ」!正解!
やってみて、ひらがなものまねには以下の特徴があることが見えてきた。
・思い通りにならない自分
・それでも分かってもらいたい
・分かってもらえない苛立ち
・でも、簡単にするのは嫌だ
と、近代の人間の複雑な感情を含んだゲームである。夏目漱石がいいたかったのもこういうことかもしれない。
「み!!!!」
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