悪漢を用意した
腕をひね上げられる夏にはまず悪漢が必要である。
以前の記事で悪漢として腕をひねり上げられていた張江浩司氏を呼んで企画を説明した。何がかはわからないがまんざらでもない様子だった。
腕をひねり上げられるとはどういうことか?
まず一度通常の腕をひねり上げられるところを見てみよう。
まじめそうな男に悪漢が近づいて…
調子に乗っていたところ
男が本気を出したら
腕をひねり上げられる
そして改心して平身低頭するのである。
日常サイズの半沢直樹
ここまでの登場人物全員メガネではあるが、ドラマであった。目の前の人物が調子に乗って痛い目に遭い、手のひらを返したように謝るのを見るのは清々しい。心の洗濯といってもよい。
さて本日は、コース料理でハンバーグばっかり出てきたらいいなと思っている皆様のための記事である。ここから腕をひねり上げられるところばかりを見ていきたい。
女性相手に調子に乗る
ということでひねり上げられまくるわけであるが、どのような相手がよいのかここで考えてみたい。
先程のケースのように相手が弱そうな男でなく、強そうなプロレスラーであった場合にはここまでの気持ちよさは得られなかったろう。弱いと思ってた人物が強い。だからこそ私たちは痛快なのである。
とするともう少し弱くしてみてはどうだろうか。今度は女性相手に調子に乗ったところである。
飲み屋の店員にケチをつける悪漢だが…
すぐに腕をひねり上げられて
平謝りすることになる
これもよかった。女性ヒーローの物語のようだ。やはり相手は弱い方がいい。
次はなんだろうか。モデルである張江氏に何がいいか聞いたところ「テリー伊藤の唐揚げ屋さんはみんななめたいところですよね」という。それだ。もう人でなくてもよいのではないだろうか(早々に脱線するのは私たちの悪いくせである)。
新興の唐揚げチェーンほどなめられやすいものはないだろう。唐揚げをなめてみよう。
人物以外にひねり上げられるのも可能か?
新しくできた唐揚げ屋に悪漢が近づく
テリー伊藤の人形相手にイチャモンをつけている悪漢
唐揚げを買ってまでなめてくる悪漢だが、そのとき唐揚げが食品だと思えぬ力を発揮して…
そして唐揚げに腕をひねり上げられる悪漢。
物であるのに痛快である。なんかできると思ったらまた唐揚げ屋かよ、となめられていそうな唐揚げがこの大きな男をひねり上げたのだ(と書いててなんのことかよくわからなくなってきた)。
これはいける。ということは私たちがなめがちなマイナー自販機とかでもいいのだろうか。
サンガリア系のジュースが並んだ自動販売機があり、
あまり聞いたことのないジュースが並んでいる
そこに悪漢がイチャモンをつけると…!?
本気を出して突如腕をひねり上げた自販機
期せずしてローマの休日のライオンの口みたいになってしまった。
これもよい。「やっぱりサンガリアは本気出すと強いんだ!」そんな子供たちの声が聞こえてくるようだ。
悪漢のひねりあげられ力はとどまるところを知らない。もしかしたら半沢の敵たちは忙しい一日を過ごしているのかもしれない。
それはこのような一日である。商店街に写真が飾られている店があれば…
イチャモンをつけ…
腕をひねり上げられる悪漢。
お店に平謝りをする。街の写真館が今ヒーローのようである。悪漢が腕をひねり上げられただけで。
返す刀で不動産屋にも張り付きはじめた悪漢。
家賃相場にイチャモンをつけ…
家賃相場に腕をひねり上げられる(物理的に)。
悪漢の一日は忙しいのである。だがそのおかげで家賃相場の活躍に私たちは胸がすくような思いである。
悪漢が商店街を抜けようにもまた…
神仏をなめるという童話的展開もいとわない悪漢が
律儀に説明を読み上げたあと…
腕をきっちりひねり上げられるのである。
これも一つのスカッとジャパンである。やはり神仏は大切にしないとバチがあたる。昔話などはすべて「腕ひねり上げられ話」の亜種と思ってもよいかもしれない。
ぶらり街散歩にいいかもしれない
ここまで来て思ったが、腕のひねり上げは商店街の紹介に良いのかもしれない。ぶらり悪漢街散歩、と題して腕をひねり上げられる番組ができるかもしれない。
もちろん、各サービスや名所だけではない、なんとなくなめやすいものも悪漢は大好物である。
弾性ポールもなめはじめる悪漢
そしてポールに謝る悪漢。爽快なうえに悪漢が健気に見えてきた。彼のおかげで私たちは交通に対しての思いを改める。悪い者などいないのである。
さきほどの反省を全く忘れて子供の遊具にイチャモンをつけ…
きっちり返り討ちに遭い…
心を入れ替える悪漢。このペースでいくと一日の半分以上のカロリーは腕ひねり上げられに使うことになる。悪漢も大変である。
たとえば水を飲もうにも、である。
蛇口に腕をひねり上げられ…
公共のインフラに腕をひねり上げられる悪漢。水道民営化は危ない。スカッとするうえにそんな教訓さえ得られてしまう。
自然に腕をひねり上げられる
ともすれば人工物でなくてももっと自然のものでもいいのかもしれない。
公園に来るだけで大忙しである。
木にもイチャモンをつける悪漢
これはもう宮崎駿が描いた世界ではないか。
そして木が許すとは限らないのである
人類を代表して骨を折られる悪漢。
爽快感とともに頭の中では久石譲が流れる。あなたトトロっていうのね。私たち人類は大地に根を張って暮らしていくべきなのである。スタジオ・ジブリは大きな意味での悪漢と言えるかもしれない。
それでは大自然に続きこちらはどうだろうか。
季節を感じる七夕飾りである。
七夕飾りに何か言うと…
あんな柔らかいものに腕をひねり上げられ
へし折られ…
一筆願わされることになるのである。季節ものに腕をひねり上げられるのはカタルシスと風流の両方を感じられる。松尾芭蕉が東北を旅したのは一説には腕をひねり上げられるためと言われている。
それはアジサイにしても同様である。
あなたはアジサイに腕をひねり上げられる悪漢を見たことがあるだろうか? 今日はその記念日である。7月6日。覚えておいてほしい。
そんな悪漢の一日の終わりは一杯のビールだろうか。
晩酌前には必ず腕をひねり上げられ…
味を語るのである。腕をひねり上げられる孤独のグルメができるのではないか。すべてのメニューに一回ずつ腕をひねり上げられるのだ。
ここまで悪漢より弱いものに絞っていったが、大きいバスにおいても十分なカタルシスが得られることがわかる。
ロケ地協力:飲み屋 えるえふる(新代田)
ひねり上げられることは対象を生かすことである
一度自分が上にたって見下したあと、腕をひねり上げられ、下から相手を見上げる。ひねり上げられることはそのような「立場の上下動」である。
ひねり上げる唐揚げ、ひねり上げるアジサイ。その結果、無機物であったとしてもまるで生きてるかのように見えてくる。対象を生き生きと生命感あふれるようなものにすること、それこそが悪漢の、悪役の力ではないだろうか。
日常にもドラマを。私たちは誰かを主人公にするために生きている。さあ、今こそひねり上げられよう。アジサイに。アサガオに。そのときあなたはスタジオ・ジブリである。
ライターからのお知らせ
7月22日から芝居をやります。一回思う存分物語というものをやってみたいと思い、できました。書いてから今までずっと自画自賛し続けている自信作です。性的な『青い鳥』みたいな話です。
アーの演劇『一つきりの夜に』
日時:7/22(木)14:00/18:00 23(金)14:00/18:00 24(土)14:00/18:00
料金:前売3000円 当日3500円
会場:SOOO dramatic!(台東区入谷)
出演:濱野ゆき子、稲川悟史(青年団)、小出圭祐(テニスコート)、トチアキタイヨウ、永山由里恵(青年団)、岩本えり
チケット発売日:7/7(水)正午より
HP(https://asunoah.tumblr.com/)やTwitter(@asunoah)などで購入URLを案内します。