そのへんの地層もすごかった
リーフの道中に見た、むき出しの地層もグニャングニャンとすごいことになっていた。サンゴ礁が隆起してできた島だからこうなった…のかもしれないが、そのへんはよく分からないので、専門家の方のコメントを心よりお待ち申し上げております。
サンゴ礁が隆起した島ではリーフ(岩礁)が広がっていて、干潮時には隙間に海水が溜まり、潮だまりというものができる。「タイドプール」と呼ばれるくらい、世界で認知されているものだとか。
そんな話を聞き、「焼石とか入れたら温泉になりそう」と言ったら、すでに温泉だよと言われた。なんでも太陽熱であったかくなるんだとか。
それ、秘湯じゃない?一度でいいから入ってみたかった、秘湯ってやつじゃないですか。行ってみよう、浸かってみよう。
このたび離島に引っ越した。
九州南西、奄美群島にある、沖永良部島(おきのえらぶじま)という島。サンゴ礁が隆起した島はいくつかあるが、ここもそのひとつだ。
今となっては懐かしい、コロナ禍の緊急事態宣言解除後の隙間を縫って島入り。島生活がはじまったらなにより真っ先にやりたかったことが、ちょうど半年前に聞かされた冒頭のタイドプールに入ること、そしてそして、太陽熱であったまってできた秘湯に浸かることだった。
金城さんは20年、海外6カ所で旅行系の仕事をしてきた人で、ビーチリゾートも経験。それを以てして、島のリーフ(岩礁、海面から出たり引っ込んだりする岩石やサンゴ礁)の規模、とくに干潮時には陸から地続きで歩いていける範囲がすごいのだという。小学生の頃、夏休みにはふつうに遊んでいた島だったが、それほどとは知らんかった。
リーフを歩けるのは新月と満月にやってくる大潮のときだけで、だいたい3日間ほどつづくという。その干潮と満潮の水位差は深いときなら実に180cmほど。なんと人間ひとりをすっぽりと覆うほどの差!これが、月の引力でこうなるっていうんだからすごいこっちゃだ。
椎名さんとはこれが初対面だったが、いつかキャンピングカー生活をしたいという話で盛り上がる。そもそもここにも、島暮らしをしたいと思い家族3人で島めぐりして辿りついたとのこと。 後日まったく別の人とも「トレーラーハウス生活をしたい」という話で盛り上がったので、どうも離島にはじっとしていられない人が集まるようだ。そんな私は今コンテナを改造して暮らしたい。という訳で、閑話休題。
椎名さんの旅行会社では、今回のリーフトレッキングもやっているらしい。そう呼ぶんだ。途端に今自分がやってるものが海遊びからリーフトレッキングに変わり、健康的なスポーツをしてる気分になれた。
くるぶしが浸る程度の浅い潮だまりを歩いていくと、すでに太陽熱で熱くなっていた。これによって秘湯になるという訳だけど、足湯にもならない。肩まで浸かれる湯を目指し、むき出しのリーフを歩く。
リーフを奥まで歩ける大潮の干潮は、釣りには絶好のタイミングなので釣り人たちもちらほらといる。夕飯か晩酌を狙う真剣勝負らしい。
私「僕らみたいに遊んでる人はいないんですか?」
金城「いないね!俺たちくらいだよ」
島民の中ではあまり遊び場として認識されていないらしい。そういえば、出かける前に祖母に「海に行ってくる」と言ったら「海を舐めるなよ…」とポツリと返された。そういえばこれまでにも何度かどこそこのだれそれの溺死エピソードを聞かされていたので、人生の大半を島を暮らしてきた祖母にはレジャーどころか魔物なのかもしれない。
という訳で、海へ行くときは、土地勘のある方と!
でも干潮の時間にさえ気を付ければ安全でしょ?というと、そうでもない、ぜんぜんそんなことない。リーフは鋭い、下手に肌を擦ると血を見ることに。でも、それだけでなく、溺死リスクは常にあるのだ。
見ての通りめちゃくちゃ澄んでる潮だまり。一見すると小さな水たまりに見えないこともないけれど、踏み外すとどえらいことになる。
私「やっぱこれ、足つかないですよね?」
椎名「絶対無理ですね」
私「ですよね」
椎名「深いところでは10メートルありますよ」
10メートル!?
それもうちょっと小さなビルじゃないの、ビルビル、ビルよ。
入口は小さいからプールも小さいだろうと思うことなかれ。下の方で海とつながっているので、潮に流され沖にさらわれることもあるという。襲われ方が完全にサメ映画、想像するだけで怖すぎる。話によると、金城さんの大家さんの友達(遠いな)は溺れ死にかけたらしい。
振り返ってみるともうずいぶん浜が遠くに。これが満潮だとぜんぶ海っていうんだから、ゲームとかで条件を満たさないと来れないステージってきっとこんな感じなんだろうなー。と思ったが、すべての元ネタは現実なのでわざわざゲームでたとえる必要はなかったと思った。
リーフを歩きながら椎名さんと金城さんは、「このへんがいい」「ここは子どもも泳げる」と、ツアーで回るタイドプールの品定めをしていた。そんな中、ぼちぼちと、条件に適したタイドプールを発見。
よし、秘湯でひとっ風呂する前に、タイドプールでひと泳ぎ!
サンゴを踏まないように気を付けたいが、いい感じに足の置き場もありよいプール。深さも5メートル以上はありそうで、なかなか素敵。
タイドプールには小魚が集まりやすい。取り残されたからだけど、一方で大きな魚から身を守れるという理由があるという。そんな訳で人が近づくと散るが、こちらが大人しくしていればまた元通り。泳ぐ分にはいいけど、釣る分にはいいやつ過ぎて申し訳ない気がしそうだ。
まるで警戒されてない。いや、高い透明度で目の錯覚的に近くに見えるだけで、実はめちゃくちゃ高低差があるのかもしれないけれども。
これもこれで素敵だが、今回の主役はあくまで秘湯!海を泳いで冷えた身体で温泉に浸かるのが、最高に気持ちいいと金城さんは言う。
という訳で、いよいよ入浴!さっきの場所とはほんの十数メートルしか離れていない。太陽熱を受けている条件は同じでも、外の海とはつながっておらず、かつ浅いということで断然あったかくなっていた。
あったまりにムラがあって、それがかえってきもちいい。その意味で温泉!って感じはしないが、さっきまで海で泳いでいた身体だ、逆に40度近くもあったら熱く感じてとても入れなかったかもしれない。
そんな中でふつうに魚たちが泳いでいるもんだから、熱帯魚が熱帯魚と呼ばれる所以を感じた(耐熱性があるかどうかは知らないけど)。
サンゴ礁の島は海水温度が一定以上でないといけないので、九州南部から沖縄にかけて、あるいは小笠原諸島が中心らしい。似た環境なら沖永良部島以外にも秘湯のある島はありそうだ。でも、行くときは必ず経験者同伴で!満潮もあっという間なので波にさらわれます本当。
海を舐めるなよ、と祖母も申しておりますゆえ。
リーフの道中に見た、むき出しの地層もグニャングニャンとすごいことになっていた。サンゴ礁が隆起してできた島だからこうなった…のかもしれないが、そのへんはよく分からないので、専門家の方のコメントを心よりお待ち申し上げております。
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