17歳のときの衝撃
高校生の時、国語便覧で『伊勢物語』を読んでいたら、
「ひ、ひじき・・・!?」と面食らった17の夏です。
物語のなかではツッコミなどないですし、男は「ひじき藻」をかけ言葉にした恋の和歌をいっしょに贈っちゃったりしています。
女性への贈り物といえば、花束かアクセサリーが相場の現代、いくら体によくて美味しいとはいえ、黒くてツヤツヤしているとはいえ、プレゼントにひじき。なんともインパクトのあるチョイスです。
さらに「えっ」となるのは、男が想いを寄せていた女性はのちに天皇の后となる人物だと紹介されていて、どこかスキャンダラスな香りがするということです。
そもそも「ひじき藻」にかかっている「引敷物」は寝るときに敷くものの意味ですから、色っぽくはあります。ひじきの縁語は「煮物」「炊き込みご飯」の私にとって、ひじきの意外な活用法でありました。
ひじきを贈られるとどう思うのか
よく、このエピソードに対して「当時ひじきは高級品だった」、「平安京は海から遠くて海産物が貴重だった」と説明されることが多いです。
でも、役人の業務マニュアル・延喜式(905年編集開始)で、ひじきは貢物に指定されてはいるものの、ランクは高くないようです。
どちらかというと、和歌とセットでやっと風流なプレゼントなんじゃないかと私は思います。
あらたまってひじきだけ贈られると人はどう思うのでしょうか。私なら混乱して「何かの暗号?」と思ってしまいそうです。
ちょうど誕生日を迎える恋人の四谷くんで実験してみましょう。
彼の誕生日プレゼントとしてひじきを贈ってみます。
さて、四谷くんはどう反応するのでしょうか。
あまりのスムーズな受け渡しに、「えっ」とこちらが驚いてしまい、「ひじきをプレゼントされて正直どう思った?」と聞いてみると、
私が「プレゼントにひじき!?」と思いすぎていたのかもしれません。人によっては普通の贈り物なのでしょうか。
案外『伊勢物語』の女も、「お、ひじき久しぶりに食べるわ」と思っていたかもしれませんね。
【参考文献】
堀内秀晃 秋山虔『竹取物語 伊勢物語 新日本古典文学大系17』岩波書店、1997年
宮下章『海藻』法政大学出版局、1974年