ちょっと聞いてよ 2023年6月18日

『伊勢物語』のように好きな人にヒジキを贈る

『伊勢物語』には、男が好きな女にひじき&和歌を贈るエピソードがあります。

実際にひじきを好きな人に贈ってみて反応を見てみましょう。

大阪生まれの大学院生。工作や漢字が好きです。ほら貝も吹けます。先日、教授から「あなたは何を目指しているのか分からん」と言われました。

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17歳のときの衝撃

高校生の時、国語便覧で『伊勢物語』を読んでいたら、

(現代語試訳)「昔、おとこがいた」
「思いを寄せた女に、ひじき藻というものを贈り、」

 

男が好きな女にヒジキを贈るエピソードがのっていました。

「ひ、ひじき・・・!?」と面食らった17の夏です。

物語のなかではツッコミなどないですし、男は「ひじき藻」をかけ言葉にした恋の和歌をいっしょに贈っちゃったりしています。

 

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「ひじき藻(ひじきも)」と、横になる時にしく「引敷物(ひしきもの)」とかけてる。ド直球な恋の歌。(堀内秀晃 秋山虔『竹取物語 伊勢物語 新日本古典文学大系17』岩波書店、1997年、81頁引用)

女性への贈り物といえば、花束かアクセサリーが相場の現代、いくら体によくて美味しいとはいえ、黒くてツヤツヤしているとはいえ、プレゼントにひじき。なんともインパクトのあるチョイスです。

 

さらに「えっ」となるのは、男が想いを寄せていた女性はのちに天皇の后となる人物だと紹介されていて、どこかスキャンダラスな香りがするということです。


 

刺激的なラブロマンスにひじきがキーアイテムとして登場!?

そもそも「ひじき藻」にかかっている「引敷物」は寝るときに敷くものの意味ですから、色っぽくはあります。ひじきの縁語は「煮物」「炊き込みご飯」の私にとって、ひじきの意外な活用法でありました。

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ひじきを贈られるとどう思うのか

よく、このエピソードに対して「当時ひじきは高級品だった」、「平安京は海から遠くて海産物が貴重だった」と説明されることが多いです。

でも、役人の業務マニュアル・延喜式(905年編集開始)で、ひじきは貢物に指定されてはいるものの、ランクは高くないようです。

どちらかというと、和歌とセットでやっと風流なプレゼントなんじゃないかと私は思います。

「えっ、ひじき!?」「あ、かけてるのね」的な

あらたまってひじきだけ贈られると人はどう思うのでしょうか。私なら混乱して「何かの暗号?」と思ってしまいそうです。

 

ちょうど誕生日を迎える恋人の四谷くんで実験してみましょう。

最近サイフを無くしたらしく、「その時の気持ちを音楽にしたい」と言っていた。(サイフはまだ見つかっていない)

彼の誕生日プレゼントとしてひじきを贈ってみます。

15gで1000円以上というお値段の高級な「沖家室ひじき」を用意。
謹呈。

さて、四谷くんはどう反応するのでしょうか。

普通に喜んで受け取りました。

あまりのスムーズな受け渡しに、「えっ」とこちらが驚いてしまい、「ひじきをプレゼントされて正直どう思った?」と聞いてみると、

 

よくわからん回答が返ってきました。

私が「プレゼントにひじき!?」と思いすぎていたのかもしれません。人によっては普通の贈り物なのでしょうか。

案外『伊勢物語』の女も、「お、ひじき久しぶりに食べるわ」と思っていたかもしれませんね。

【参考文献】

堀内秀晃 秋山虔『竹取物語 伊勢物語 新日本古典文学大系17』岩波書店、1997年

宮下章『海藻』法政大学出版局、1974年

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