特集 2019年8月23日

ヘボコン2019レポート~チンチラのかわいさを啓蒙されるロボットバトルの一夜

ロボットを作る技術も才能も根気もない人たちが集まり、自作の「自称・ロボット」(客観的には燃えないゴミ)を無理やり戦わせるイベント、それがヘボコンである。

去る7/21、今年の本大会である「ヘボコン2019」を開催した。
やる気とスキルのアンバランスをぐっと噛みしめ、試合に負けた者のヘラヘラした表情を脳裏に焼き付ける一夜。本記事はその主催者レポートである。

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。(動画インタビュー)

前の記事:素手で虫捕りまくり(デジタルリマスター版)

> 個人サイト nomoonwalk

本編の前に、ヘボコンについてのざっくりした説明

・応募者より抽選で選ばれた32チームが出場
・試合はロボット相撲で、土俵から出たり転倒したら負け
・トーナメント制
・「ヘボい」はもちろん、「弱い」「雑」「意味なし」「ゴミ」などすべてのネガティブワードは誉め言葉である。
・原稿中、ロボットの紹介は「ロボット名(作者)」の形で表記します。

 

啓蒙につぐ啓蒙

今回の大会で期せずしてサブテーマとなったのが、「啓蒙」。主催側としては全く意図しなかった展開だが、バトルを通して人々に気づきを与えようというロボットたちが続々登場したのだ。たまたま。

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ハッキングブッダN(塩田将也):戦闘中はお経が流れ、説法を行うことで相手のロボットを反省させ、仏門に入らせる。また、お経を聴きにきたかわいい動物たちに囲まれているため、相手に攻撃をためらわせることができる。
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歯みがきじょうずかな3(S川):形はよく見ると歯。親知らず自ら、歯みがきの大切さを啓蒙するロボだ。組み立てが甘く、10秒以上走らせると歯根がとれる。走らせなくてもすぐとれる。
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鉄道事故防止運動君(mc_M氏):鉄道事故防止を啓蒙するロボ。制作者は本業の車掌さん。年末年始の事故の多さに「何とかできないか」と考え制作(くわしくは後ほど)。
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RoboMaster HK1(チャーリー浜岡GP):演歌歌手・村田英雄先生のすばらしさを啓蒙するため、代表曲である「王将」を流しながら戦う。機体も特大の王将の駒を素材にするも、重量オーバーのため半分に切断。「王」になっており尊大感が増している。

何度もいうがロボットバトル大会である。青年の主張コンクールではないはずなのだが、なにを間違ったか続々と啓蒙系ロボが登場。ひっきりなしにどんどん出てくるため、観客のみなさんも、もうどれに心を打たれていいかよくわからないという状況であった。

その中から、おそらくもっとも多くのオーディエンスの胸に残ったであろう啓蒙を、試合の様子と一緒にご紹介したい。

1回戦第3試合
ベンジャミン vs 廃課金ロボ

まず啓蒙でない方のロボからいこう。廃課金ロボは課金力を試されるロボである。

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廃課金ロボ(†Zi-Kill† & †黒神†)

500円玉を投入する(「ガチャを引く」と呼ばれる)と、その衝撃でほんのちょっとだけ進む。連続課金をすることでじょじょに前進することができる。 

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軍資金の2万円

また、うまく500円玉が所定の位置にはさまると必殺技「SSR」が発動し、モーターの力でまともに前進する。
ミニ四駆の銅線のとちゅうを切ってコインスロットが挿入してあり、そこに500円玉が入るとお金の中を電気が通ってミニ四駆が走るのだ。貨幣をダイレクトにスイッチとして使っていて、かなりパンクなマシンである。

そして対戦相手が啓蒙ロボ。

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ベンジャミン(おなかがよわい)

チンチラ(ネズミの仲間のペット動物)のかわいさを啓蒙するためのロボット。動力はゴム動力で前進のみ可、体当たり以外の技は特になし。見るからにチンチラのかわいさだけに全振りしたロボだが、さらにダメ押しがあった。

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チンチラの良さを知っていただくためのインフォメーションボード

ロボットを通して啓蒙するだけでは飽きたらず、開発者がロボットを通さず直接啓蒙してくるゴリ押しぶりである。

2体ともネタに凝りすぎて、正直弱そう。いざ、決戦である。

 

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試合開始と同時に突進、廃課金ロボを土俵際に追いつめるベンジャミン
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廃課金ロボは連続課金で対抗しようとするも、課金のたびにコイン投入の衝撃で足元が浮き、じわじわと押されていく
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ついに軍資金が底をついた!試合開始30秒にして、双方、何もやることがなくなり空白の時間が流れ始める
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そこでさっそうと登場したのが、チンチラの良さを知っていただくためのボード。 のこりの30秒を利用してチンチラの啓蒙プレゼンが始まる…!

 

プレゼンが続く中、試合は時間切れをむかえ、結果は判定によりベンジャミンの勝利となった。
※制限時間1分を超えた場合、相手の陣地により攻め入った方が勝利

非力なマシンの多いヘボコン、マシン同士がぶつかり合って膠着状態になってしまうのはよくあることなのだが、その時間が初めて有効活用された試合であった。

この試合に代表されるように、ヘボコン2019は啓蒙に次ぐ啓蒙。人類の歴史上、演説からTVCMまでさまざまな方法で啓蒙活動は行われてきた。しかしロボによる啓蒙がこれほどまでに盛んになった場はヘボコン2019が史上初に違いない。

発覚したルールの穴

ヘボコンならではの特徴的なルールとして、ハイテクノロジーペナルティがある。

ヘボコンは技術力の低い人たちのための祭典。その趣旨に反し、ロボットに自動操縦や遠隔操作などの高度な機能を搭載した場合、厳しいペナルティを受けることになる。

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ルール説明スライドより

このハイテクノロジーペナルティ、実は例外規定がある。
「市販品をそのまま使うなど、実装方法が稚拙である場合、ハイテクにあたらない」というものだ。たとえば…

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ドラムロボット・ドラ子ちゃんのドラム(飛鳥製作所):市販のラジコン式の猫おもちゃを使用しており、遠隔操作が可能。ラジコンはドラム部分。当初はドラ子ちゃん本体をひっぱって動かそうとしたが、パワーが足りなかったため、ドラムだけが戦う。なおヘボコンではよくあることだが、会場はラジコンが混線しており勝手に動く。

このように、店で買ってきたラジコンを使うのはOK。というのが一般的な解釈である。
しかしここに実は、ルールの穴があったのだ。そしてヘボコン2019では初めてこの穴が悪用された。

どんな穴であったかは、試合を通して見ていただこう。

1回戦第5試合
猫戦車 vs 鉄道事故防止運動君

 

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先ほども紹介した、鉄道事故防止を啓蒙するロボ、鉄道事故防止運動君(mc_M氏)

鉄道事故防止運動君は啓蒙ロボであると同時に、本職の車掌さんが考えた、次世代事故防止システムのプロトタイプでもある。ここでうまくいったら実際の電車にも搭載していきたいと意気込む、その次世代システムがこちらだ。

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真剣白刃取り。腕にバシッと当てると巻き付くあのおもちゃをバンパー部に使用している。事故の衝撃でおもちゃが曲がって、障害物をつかんで食い止める

おもちゃに衝撃が加わっている時点ですでに事故が起きており、白刃取りできていないのではないかと思うのだが、そこは素人には分からない専門家ならではの見地があるのかもしれない。

対戦相手はこちらのマシン。

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猫戦車(あば)

紙袋から猫の手だけが出てきて、「中に猫がいるのかな…?」と思わせられるこのマシン。ほかにも目が光る、ニャーンと鳴くなど、多くの機能が搭載されているらしい。
さて、どこがルールの穴なのか。解説は試合のあとだ。

 

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ブザーと同時に線路を飛び出した鉄道事故防止運動君。猫戦車に正面から激突するも、次世代システムは作動せず!
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じりじり押し返されていく防止運動君。いっぽうバンパーにふさがれて猫の手がうまく出ない猫戦車
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そのまま押し切られ防止運動君が土俵から落下、猫戦車の勝利となった。

お互いの技が不発に終わったこの試合。見たところどこにもルールの穴をつくような点はなかったように見えるだろう。ではこの写真も見てほしい。

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続く2回戦にて。紙袋を脱いだ猫戦車
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ガッチガチの電子工作である

電子工作としてガチであるばかりか、Bluetoothを使用した遠隔操作の独自実装。完全にハイテクペナルティに抵触するスペックである。しかしながら、これはハイテクに当たらないのだ。なぜなら… 

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ショップで市販されているから!

「市販品ならOK」というルールの裏をかき、自らショップで市販することによりハイテク認定を免れるという裏技。そこか!

メルカリに出す程度の生半可な市販であれば認められないところだったが、面倒な手続きを経てJANコード(流通用に世界的に使用されている商品識別番号。いわゆる商品バーコードはこれ)まで取得するガチっぷり。運営サイドとしても負けを認めざるを得ないハッキングであった。

なお、このマシンの製作記をあばさんがブログに書いているのでぜひ読んでみてほしい。(JANコード取得に1万円以上かかっていることがわかる!)

なお、猫戦車はこのあと2回戦で普通に負けた。

最高身長ロボ争い

今大会では実はもうひとつ、ルールに関する闘争があった。
出場ロボットのレギュレーションでは、ロボットのサイズは縦横50cm以内。つまり高さの制限がないのだ。この点に目を付けたロボットが2体、登場した。

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注文のヤバい料理長(KEROKEROBOT)
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ちなみに上の写真は収納時で、対戦時は本体が出てくる。しかし背は高いままだ

コック帽は1個3,600円、この高さを出すために一万円以上かかっているという。ちなみにコック帽部分もしかり骨組みが入っているため重心が高く、バランスはものすごく悪い。

しかし高身長あらそいは、彼の独壇場ではなかった。もう1台、最高身長を狙ってきたロボがいたのだ。

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無計画1号(KRP-OB)

一見、大きさにおいては特に特徴のないマシンに見える。しかし何やらサイダーのペットボトルの中にビニールのようなものが詰まっているのがわかるだろうか。
これ、スイッチを入れると、こうなる。

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巨大化!!

注文のヤバい料理長を凌駕する高身長マシンに変形。しかも中身は空気なので重心への影響はないという、考え抜かれた設計。今回のトップ高身長ロボの座は、この無計画1号が勝ち取った。

ちなみに彼らは実は大学ロボコン経験者とのことで、技術力が低いどころかガチガチの技術者である。ただ早とちりしないで欲しいのだが、ヘボコンの門戸はそんな彼らにもちゃんと開かれているのだ。

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部品が抜けて巨大化が強制解除となった瞬間

 

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レモン10切れを万力で締めあげたレモン電池(直列つなぎで3V出る)

ヘボは技術に宿るのではなく、人に宿るのである。高い技術を持っていても、過剰なチャレンジ精神と準備の抜け目があれば、ヘボの神は微笑むのだ。

印象に残った試合

そんな様々な(そしてどうでもいい)争いの繰り広げられたヘボコン2019。ここからは肝心の試合の様子をもう少し見ていきたい。個人的に印象に残った試合を、のこり6試合ほどご紹介しよう。

1回戦第6試合
Nahual vs ゴッドムガイガー

東京で生まれたヘボコンは、世界に広がり現在では日本以外に25か国以上で開催されている。そのうちの1か国から、今大会に刺客が送られてきた。それがナワルである。

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Nahual(Team Azteca)

ナワルはメキシコのヘボコン主催者から送られてきたロボット。渡航費までは用意できなかったようでロボットだけがやってきた。ナワルというのはメキシコの昔話に登場する、悪い魔女の名前。ある日ナワルがジャガーに化けようとすると、誤ってサイボーグウサギになってしまった、というのがこのロボットのストーリーである。

設定はさておき、このマシン、かなり狂暴だ。 

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背中から見たところ

腕の付け根、なんだかゴツいモーターがついているのがわかるだろうか。
日本のヘボコンでよく使われるモーターといえば、ミニ四駆などに使うアレ。しかし海外だとあのサイズは一般的でないらしく、こういうでかくてトルクの強いやつが出てきがちなのだ。いうなれば、グローバルスタンダード。

それに対抗するのがこちらのマシン。

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ゴッドムガイガー(無外流普及振興会)

「啓蒙」のところでも軽く触れた、剣術・無外流居合の普及を目指すロボである。南米の魔女 vs 日本のサムライ。国際試合にふさわしいマッチングであるが、結果は果たして…!

 

 

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腕を回転させてじわじわ進んでいくナワルと、それを待ち受けるゴッドムガイガー
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すべる土俵に足を取られつつも、獰猛な動きでじょじょに近づいていくナワル。微動だにしないゴッドムガイガーは、居合抜きのタイミングをうかがっているのか
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そうこうしている間にナワルがとびかかり、ゴッドムガイガーの首筋を捉えた!一撃必殺でナワルの勝利。

一方的な試合ではあったが、獰猛に動き続けるナワルと冷静にそれを待ち受けるゴッドムガイガーに、両国の考える「戦いとは何か」を見たような気がした。
不器用な人が作ったロボットにも、お国柄がちゃんと出るのである。

1回戦第12試合
チミツとクローバー vs がんばれ熊本

 今大会の全27試合中、もっとも何もかもがうまくいかなかった。ある意味、ヘボコンの真骨頂ともいえるのがこの試合である。

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がんばれ熊本(くまのり)

一見して目につくのが車の上部からのれんのように垂れている人型だが、これこそがこのマシン最大の必殺技だ。

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分身、そして瞬間移動!

これにより相手に自分の居場所を誤認識させることができる。正しい人型に相手が突進してくれば押し相撲になるが、間違っていると敵はのれんをくぐってそのまま場外へ一直線、という作戦だ。
さらに、このマシンには別形態もある。 

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第二形態

逆さにすることで、自分が動けなくなる代わりに、相手がどこに突っ込んできても、のれんを素通しさせ場外へ導くことができるのだ。(背の低いマシンであれば…)

明るいところでは無効という弱点はあるが(そして実際会場は明るいのだが)、かなり凝ったギミックのマシンである。
その対戦相手はというと…

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チミツとクローバー(こやしゅん)

青い鳥、ハーバリウム、黄色いハンカチ、星占いトップの星座の免許証など、ラッキーアイテムを思いつく限り搭載、運を味方につけて勝つというコンセプトだ。
そしてこちらもさらに追加ギミックがある。

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このでかいおみくじ

おみくじを引くと、運が良ければ(確率1/10)、電気を通す棒が出てくる。その棒で手首のアームバンドに触れると、それがスイッチになっておりロボットが動くという仕組みである。
「運で勝つ」というよりも、「運がないと動くことすらままならない」ロボット、といってもよい。

さて、ここで皆さんに覚えておいて欲しいのだが、ヘボコンのジンクスとして「凝りすぎると負ける」というものがある。自分のギミックに食われるのだ。
それを念頭に、対決の様子を見てほしい。

 

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おみくじを振って引こうとして、手を滑らせて落としてしまう、こやしゅんさん
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落とした時のバタバタで、こやしゅんさんのアームバンドの配線がちぎれ、操作不能に。さらにがんばれ熊本もマシントラブルで動かず。
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ここでがんばれ熊本が動作復帰、相手に正面から突進。焦ったこやしゅんさんは…
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アームバンドを直すためにケーブルを触っていたところ、誤って自分でひっぱってしまい、ロボットごと落下。THE-END

おみくじを落とす→配線をちぎる→線を引っ張ってロボットごと落下。きれいな3段コンボで自滅したチミツとクローバー。何をやってもうまくいかない様子は圧巻であった。

いっぽうでがんばれ熊本も思うように操作できないトラブルに見舞われ、何一つうまくいかない試合。まさにヘボコンの真骨頂たる1分間であった。

1回戦第13試合
くいしんぼうワニのぴっちゅ vs ガンジー

全試合中、もっとも土俵を汚した試合として、この対戦を紹介しておこう。

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くいしんぼうワニのぴっちゅ(人気YOUTUBER はぁとキラキラチャンネルのツバサちゃんとパパ)

「ヒヨコたちがワニのぴっちゅを空に浮かべてあげたところ、ぴっちゅはヒヨコの一匹を食べてしまい、罰として残りのヒヨコたちに引きずり回される」というストーリーがあり、それに忠実にロボットのセッティングが進行していく。 

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ワニにヒヨコを食べさせるツバサちゃん

会場ではツバサちゃんのかわいらしさも相まってほのぼのムードで進行していたのだが、改めてこうやって文字で書いてみると謎の儀式っぽくて怖いなこれ。

最後に、唐突に取り出したスライムを一緒に食べさせ、スタンバイ完了。この時点で戦い方については全く明かされなかった。謎に包まれたまま対戦相手の紹介に。

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ガンジー(ぼぶ)

こちらの作戦は明瞭だ。相手を機体の上に誘い込み、登ってきたところでそろばんの玉の回転と、そこにふりかけたヌルヌルのローションで転倒させる。ガンジーの名前どおり非暴力のまま、相手を受け流すコンセプトである。

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ヌルッヌルのテラッテラになったガンジー

さてぴっちゅはどう出るのか。試合開始のブザーが鳴る。

 

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ぴっちゅの戦法が判明。パパがヒヨコを持ち上げ、ツバサちゃんがひもを引っ張ることで、ぴっちゅを引きずり回す!
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引きずり回されるままに突進していくぴっちゅであったが…
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ガンジーの思惑どおり、見事に滑りまくる
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無抵抗だったはずのガンジーが突然エアダスターで攻撃開始。その効果があったかどうかは不明だがぴっちゅが場外へ

 ロボットバトルだっつってんのに、いっさい電気の関与しない試合であった。

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試合後はぴっちゅの口から出てきたカラフルなクリップとスライムが散乱。

これらのクリップやスライムは、まき散らすことで相手を滑らせる作戦だったのだろう。奇しくもガンジーと同じ戦法だったわけだ。

土俵に落ちたスライムは、ぼぶさんがガンジーのローションを拭くために持参していたウェットティッシュで掃除。最後にはおなじヌルヌルをまき散らす者同士、なぞの連帯が生まれていた。

ちなみに、人気YOUTUBERはぁとキラキラチャンネルはフィクションなので検索しても出てこない。ヒヨコとぴっちゅの物語といい、設定の作りこみに力を入れすぎである。

1回戦第16試合
フェルティーロボット01 vs メガドンキ渋谷店
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フェルティーロボット01(チームBYS)

前面についているのはゴキブリ粘着シート。これで相手を絡めとる作戦だ。そして足回りはキティちゃんのルンバ。動きのコントロールは効かないが、うまく相手をくっつけることができれば、引きずり回すことができるかもしれない!
機体にはフェルトの人形が載っており、これが後で効いてくるので覚えておいて欲しい。

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メガドンキ渋谷店(ヘボ電)

材料を全てドン・キホーテで揃えたマシン。みんなの大好きなドン・キホーテの歌で相手をおびき寄せ、そこをドンペンちゃん(ドンキのキャラ)で叩くという作戦。

ちなみに叩くために搭載されているのはドンペンのトイドローンで、電源を入れると「チュイーーーーン」という音とともにプロペラが本気のスピードで回る。 

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両腕部。本体ごと暴れてめちゃくちゃ怖い。

この2体の戦いは、思いもよらぬ結末を迎えた。

 

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ヘボ電チームの陽気なドン・キホーテのテーマソングに合わせて、じわじわ侵攻していくメガドンキ渋谷店
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すると突然ルンバが方向転換、フェルティ―ロボットが場外に!

 ここでいったん試合中断。ヘボコンは「試合開始後にいちど機体同士が接触しないと試合不成立」というルールがあるため、これは再試合である。
なのだが、その後なんだかんだやっているうちに…

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いつの間にか、主力武器の粘着シートで壁にくっつき、一人もがいているフェルティーロボット

自分から土俵外に出ていく自滅はヘボコンでは日常茶飯事であるが、自滅してなお輪をかけて自滅を繰り返す、こんな展開は初めてだ。

このあと再試合の上限3回までフェルティーロボットは自滅を繰り返し、敗退。

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最終的には、脱落したフェルト人形が粘着シートにくっつき、ゴキブリのえさが血だまりに見えるという奇跡の負け姿を披露した

ちなみにこの試合、ロボットの組み合わせも最高だったが、対戦チームもギャル vs Youtuberという絶妙な組み合わせであった。
プー・ルイさんによるVLOGもあわせてどうぞ。

 

2回戦第3試合
きかんしゃトーレス vs ナイスミドル
vs 注文のヤバい料理長 vs がんばれ熊本

2回戦は4体での対戦となる。最後まで生き残った1体だけが勝利する、バトルロイヤルだ。4試合のうち、展開が派手だった1試合をご紹介しよう。

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きかんしゃトーレス(Temp32)

 「今年引退を発表したスペインのサッカー選手・トーレスに敬意を表して」「スペインの無敵艦隊を」「きかんしゃトーマスにした」マシン。カギかっこ一個ごとのつながりが破綻していて全然意味が分からないのだが、それでもパッション一点突破でマシンが完成してさえいれば理屈は不問となるのがヘボコンの懐の深さである。

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ナイスミドル(チームへっぽこおじさん)

おじさんの人形は、メンバーの一人の父がモデル。人形化に当たって本人に了承を得ていたが、ちゃんとしたロボコンだと思っていたらしく、完成品を見せたら大層がっかりされたというエピソードあり。ベースに戦車を使用しており、足回りの強さで1回戦は圧勝した。

くわえて、先にも紹介した高身長の「注文のヤバい料理長(KEROKEROBOT)」、おみくじを落としたチミツとクローバーを破った「がんばれ熊本(くまのり)」の4体での対決。

 

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まず機体についた風船を全部割るという、1回戦から続く謎の儀式を執り行うナイスミドル
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風船を割りきったナイスミドルが、突然の高速スピンアタック!派手な技に会場が沸く
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そして猛突進できかんしゃトーレスを突き落としたあと、ブレーキ代わりの後退が行きすぎて自分も場外へ
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ナイスミドルが落としていったお父さんの首に会場の注目が集まる中、高身長でバランスの悪い料理長が転倒

 

結果、がんばれ熊本が勝利を手中に収めた。

この試合の見どころとしては、なんといってもナイスミドルの活躍。

冒頭の風船わり→紙吹雪から、突然披露された高速スピンアタック、そして散り際の猛突進まで、とにかく派手&ワイルドな操縦が印象的だった。結局乗りこなせず、自滅してしまうのもヘボコン的には最高の散り際である。

そしてなにより土俵に残されたお父さんの首。1試合でいくつもの見どころを残してくれた名機であったといえよう。

決勝戦
知能が欲しかったロボ vs RoboMaster HK1

そして最後は決勝戦の紹介だ。ヘボコンといえど、このあたりになるとやはり手堅く強いロボが勝ち残ってくる。最終試合まで残ったのは、この2体だ。

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知能が欲しかったロボ(てくてく)

 帽子の中にはマイコンボード搭載、しかしハイテクペナルティ回避のため電気的な接続はせず、両面テープで貼っただけである。馬力もそこそこだが、リモコン操作で小回りが利くのが強み。

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RoboMaster HK1(チャーリー浜岡GP)

記事の序盤でも紹介した、村田英雄氏を啓蒙するマシン。ちなみにロボット名はDJI社のバトル用ロボ、RoboMaster S1から。当初購入予定であったが軍資金を全て飲み代に使ってしまったため名前だけが名残としてのこる。

マシン特性でいえば、パワーでRoboMaster HK1がリード、いっぽう知能が欲しかったロボが、スピードと小回りでリード。

そしてもう一つ、両者の違いはこんなところにも。

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ヘボコンに伝わる奇習、「敗者が勝者にパーツを渡す」。もらい続けた結果、盛り盛りになっているRoboMaster HK1。重いうえに、もらったパーツが邪魔で、必殺技である回転ほうきが封じられてしまった。
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いっぽうで知能が欲しかったロボは、受け継いだパーツをリモコン側に配置することでスムーズな動きを保っている。クレバーである。

いろんな点で対称的な2機。どちらが勝ってもおかしくない。では試合の様子をどうぞ。

 

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同時に発進する2機。スピードで勝る、知能が欲しかったロボがまず相手の懐に入る
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しかしパワーで勝るRoboMaster HK1がグイグイ押し返していく!
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知能が欲しかったロボ、ヤバいと思って一瞬逃げようとするも、逃げきれず
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結局そのまま場外へ落下…!

最後はあっけないくらいのストレート勝ちで、優勝はRoboMaster HK1に決定した! 

各賞発表

つづいては各賞の発表である。まずは優勝、準優勝から。なお、技術力の低さを競うヘボコンにおいて、勝つことは名誉ではない。優勝と準優勝はもっとも価値が低い賞であることに留意してほしい。

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優勝:RoboMaster HK1(チャーリー浜岡GP)
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準優勝:知能が欲しかったロボ(てくてく)

続いて2番目に名誉な賞、審査員賞だ。
今回はYoutubeチャンネル「無駄づくり」や、当サイトでもライターとして活躍中の藤原麻里菜さん。そして電子工作愛好家御用達のネットショップ「スイッチサイエンス」から大木さんにお越しいただいた。

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藤原麻里菜賞:猫戦車(あば)
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スイッチサイエンス賞:くいしんぼうワニのぴっちゅ(人気YOUTUBER はぁとキラキラチャンネルのツバサちゃんとパパ)
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デイリーポータルZ賞:メガドンキ渋谷店(ヘボ電)

そして最後に、ヘボコンにおいていちばん名誉ある賞、会場投票で決まる「もっとも技術力の低かった人賞」の発表だ。

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もっとも技術力の低かった人賞:チミツとクローバー(こやしゅん)

こやしゅんさんは、昨年に続いて2回目の受賞。史上初の最ヘボ賞2連覇が誕生した、歴史的瞬間であった。おめでとうございます!

出場ロボット紹介

最後に、ここまでに登場しなかった出場ロボットを、一気に紹介してこの記事を締めくくりたい。

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オスマンティヌス(オスマン帝国軍団の逆襲):「動かなかったのでとりあえず大きくした」(開発者談)ロボット。輪ゴムではじいて移動させるが、当たり所が悪くうしろに転倒して敗退。負けコメントは「ロボットには動力が必要ということを学びました」
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プリンロボ(秘密結社デウス・エクス・マキナ):プリンがプルプル揺れ、サクランボで攻撃する。開発者の妻が描いたというデザイン画と見比べると味わいが増す。
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デザイナーによるデザイン
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KYロボット(YUKINCO@):うちわであおいで風力で進む、という完全負けパターンの動力源にもかかわらず、1回戦を勝ち抜いた革新的なマシン。名前のKYは製作者夫婦のイニシャル。結婚指輪か。
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風力ルンバ(蹉跌):同じく風力で動くエコなマシン……を標榜するも、試合が進むごとに吐息→ドライヤー→ブロワーとどんどん電力にものを言わせた風力源に切り替えていく、目的のためなら手段を選ばない派。
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かぶとくん1号(チームかぶと君):上下に頭が動くタミヤ製カブトムシキットの角を延長することで、より敵をひっくり返しやすく改造。子供の作品ながら、貼られているタミヤステッカーの供給量が多すぎるためお父さんのタミヤファンぶりが漏れる。
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GO VIRAL!(井ヘボコン 井セルフィー):浮かれた格好に自撮り棒、タピオカ、電球のドリンク、ハーバリウムなどうっとうしい要素満載で登場するも、話してみると真面目でいい奴。徹底したキャラづくりには根の真面目さを感じさせる。(ロボットじゃなくてメンバーの評になってしまった)
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ベイビー(チームサイコパス):当日の朝10分で作ってきたというチームBYSの予備機が、当日キャンセルが入ったため別チームとして参戦。クラッカーが主砲で攻撃力は皆無だが、鳴らせたことによる満足感は高かった。
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パイソンロボット(しゅろっと):ロボット製作にはPython(プログラム言語)がいいというので、パイソン(蛇)のぬいぐるみを使用。6月にアップされていた制作風景の写真がコブラだったのでボケの雑さにおののいたが、当日はちゃんとパイソンになっていた。

以上、総勢32チームが激しくそしてどうでもいい戦いを繰り広げた。熱くそしてけだるい一夜であった。


次回は来年の6~7月に!

というわけでヘボコン2019のレポートでした!次回の大きな大会は来年2020年の6~7月ごろを予定。2か月前くらいにはアナウンスをするので、4~5月ごろに当サイトをチェックするか、ヘボコンのFacebookグループに入っていただくと通知が来るのでぜひどうぞ。

あと直近のイベントとしては、10/26には長野県の佐久市子ども未来館でもヘボコンを開催するので、あわせてチェックしてほしい。

ではまた、次回!

 

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