次回は来年の6~7月に!
というわけでヘボコン2019のレポートでした!次回の大きな大会は来年2020年の6~7月ごろを予定。2か月前くらいにはアナウンスをするので、4~5月ごろに当サイトをチェックするか、ヘボコンのFacebookグループに入っていただくと通知が来るのでぜひどうぞ。
あと直近のイベントとしては、10/26には長野県の佐久市子ども未来館でもヘボコンを開催するので、あわせてチェックしてほしい。
ではまた、次回!
ロボットを作る技術も才能も根気もない人たちが集まり、自作の「自称・ロボット」(客観的には燃えないゴミ)を無理やり戦わせるイベント、それがヘボコンである。
去る7/21、今年の本大会である「ヘボコン2019」を開催した。
やる気とスキルのアンバランスをぐっと噛みしめ、試合に負けた者のヘラヘラした表情を脳裏に焼き付ける一夜。本記事はその主催者レポートである。
・応募者より抽選で選ばれた32チームが出場
・試合はロボット相撲で、土俵から出たり転倒したら負け
・トーナメント制
・「ヘボい」はもちろん、「弱い」「雑」「意味なし」「ゴミ」などすべてのネガティブワードは誉め言葉である。
・原稿中、ロボットの紹介は「ロボット名(作者)」の形で表記します。
今回の大会で期せずしてサブテーマとなったのが、「啓蒙」。主催側としては全く意図しなかった展開だが、バトルを通して人々に気づきを与えようというロボットたちが続々登場したのだ。たまたま。
何度もいうがロボットバトル大会である。青年の主張コンクールではないはずなのだが、なにを間違ったか続々と啓蒙系ロボが登場。ひっきりなしにどんどん出てくるため、観客のみなさんも、もうどれに心を打たれていいかよくわからないという状況であった。
その中から、おそらくもっとも多くのオーディエンスの胸に残ったであろう啓蒙を、試合の様子と一緒にご紹介したい。
まず啓蒙でない方のロボからいこう。廃課金ロボは課金力を試されるロボである。
500円玉を投入する(「ガチャを引く」と呼ばれる)と、その衝撃でほんのちょっとだけ進む。連続課金をすることでじょじょに前進することができる。
また、うまく500円玉が所定の位置にはさまると必殺技「SSR」が発動し、モーターの力でまともに前進する。
ミニ四駆の銅線のとちゅうを切ってコインスロットが挿入してあり、そこに500円玉が入るとお金の中を電気が通ってミニ四駆が走るのだ。貨幣をダイレクトにスイッチとして使っていて、かなりパンクなマシンである。
そして対戦相手が啓蒙ロボ。
チンチラ(ネズミの仲間のペット動物)のかわいさを啓蒙するためのロボット。動力はゴム動力で前進のみ可、体当たり以外の技は特になし。見るからにチンチラのかわいさだけに全振りしたロボだが、さらにダメ押しがあった。
ロボットを通して啓蒙するだけでは飽きたらず、開発者がロボットを通さず直接啓蒙してくるゴリ押しぶりである。
2体ともネタに凝りすぎて、正直弱そう。いざ、決戦である。
プレゼンが続く中、試合は時間切れをむかえ、結果は判定によりベンジャミンの勝利となった。
※制限時間1分を超えた場合、相手の陣地により攻め入った方が勝利
非力なマシンの多いヘボコン、マシン同士がぶつかり合って膠着状態になってしまうのはよくあることなのだが、その時間が初めて有効活用された試合であった。
この試合に代表されるように、ヘボコン2019は啓蒙に次ぐ啓蒙。人類の歴史上、演説からTVCMまでさまざまな方法で啓蒙活動は行われてきた。しかしロボによる啓蒙がこれほどまでに盛んになった場はヘボコン2019が史上初に違いない。
ヘボコンならではの特徴的なルールとして、ハイテクノロジーペナルティがある。
ヘボコンは技術力の低い人たちのための祭典。その趣旨に反し、ロボットに自動操縦や遠隔操作などの高度な機能を搭載した場合、厳しいペナルティを受けることになる。
このハイテクノロジーペナルティ、実は例外規定がある。
「市販品をそのまま使うなど、実装方法が稚拙である場合、ハイテクにあたらない」というものだ。たとえば…
このように、店で買ってきたラジコンを使うのはOK。というのが一般的な解釈である。
しかしここに実は、ルールの穴があったのだ。そしてヘボコン2019では初めてこの穴が悪用された。
どんな穴であったかは、試合を通して見ていただこう。
鉄道事故防止運動君は啓蒙ロボであると同時に、本職の車掌さんが考えた、次世代事故防止システムのプロトタイプでもある。ここでうまくいったら実際の電車にも搭載していきたいと意気込む、その次世代システムがこちらだ。
おもちゃに衝撃が加わっている時点ですでに事故が起きており、白刃取りできていないのではないかと思うのだが、そこは素人には分からない専門家ならではの見地があるのかもしれない。
対戦相手はこちらのマシン。
紙袋から猫の手だけが出てきて、「中に猫がいるのかな…?」と思わせられるこのマシン。ほかにも目が光る、ニャーンと鳴くなど、多くの機能が搭載されているらしい。
さて、どこがルールの穴なのか。解説は試合のあとだ。
お互いの技が不発に終わったこの試合。見たところどこにもルールの穴をつくような点はなかったように見えるだろう。ではこの写真も見てほしい。
電子工作としてガチであるばかりか、Bluetoothを使用した遠隔操作の独自実装。完全にハイテクペナルティに抵触するスペックである。しかしながら、これはハイテクに当たらないのだ。なぜなら…
「市販品ならOK」というルールの裏をかき、自らショップで市販することによりハイテク認定を免れるという裏技。そこか!
メルカリに出す程度の生半可な市販であれば認められないところだったが、面倒な手続きを経てJANコード(流通用に世界的に使用されている商品識別番号。いわゆる商品バーコードはこれ)まで取得するガチっぷり。運営サイドとしても負けを認めざるを得ないハッキングであった。
なお、このマシンの製作記をあばさんがブログに書いているのでぜひ読んでみてほしい。(JANコード取得に1万円以上かかっていることがわかる!)
なお、猫戦車はこのあと2回戦で普通に負けた。
今大会では実はもうひとつ、ルールに関する闘争があった。
出場ロボットのレギュレーションでは、ロボットのサイズは縦横50cm以内。つまり高さの制限がないのだ。この点に目を付けたロボットが2体、登場した。
コック帽は1個3,600円、この高さを出すために一万円以上かかっているという。ちなみにコック帽部分もしかり骨組みが入っているため重心が高く、バランスはものすごく悪い。
しかし高身長あらそいは、彼の独壇場ではなかった。もう1台、最高身長を狙ってきたロボがいたのだ。
一見、大きさにおいては特に特徴のないマシンに見える。しかし何やらサイダーのペットボトルの中にビニールのようなものが詰まっているのがわかるだろうか。
これ、スイッチを入れると、こうなる。
注文のヤバい料理長を凌駕する高身長マシンに変形。しかも中身は空気なので重心への影響はないという、考え抜かれた設計。今回のトップ高身長ロボの座は、この無計画1号が勝ち取った。
ちなみに彼らは実は大学ロボコン経験者とのことで、技術力が低いどころかガチガチの技術者である。ただ早とちりしないで欲しいのだが、ヘボコンの門戸はそんな彼らにもちゃんと開かれているのだ。
ヘボは技術に宿るのではなく、人に宿るのである。高い技術を持っていても、過剰なチャレンジ精神と準備の抜け目があれば、ヘボの神は微笑むのだ。
そんな様々な(そしてどうでもいい)争いの繰り広げられたヘボコン2019。ここからは肝心の試合の様子をもう少し見ていきたい。個人的に印象に残った試合を、のこり6試合ほどご紹介しよう。
東京で生まれたヘボコンは、世界に広がり現在では日本以外に25か国以上で開催されている。そのうちの1か国から、今大会に刺客が送られてきた。それがナワルである。
ナワルはメキシコのヘボコン主催者から送られてきたロボット。渡航費までは用意できなかったようでロボットだけがやってきた。ナワルというのはメキシコの昔話に登場する、悪い魔女の名前。ある日ナワルがジャガーに化けようとすると、誤ってサイボーグウサギになってしまった、というのがこのロボットのストーリーである。
設定はさておき、このマシン、かなり狂暴だ。
腕の付け根、なんだかゴツいモーターがついているのがわかるだろうか。
日本のヘボコンでよく使われるモーターといえば、ミニ四駆などに使うアレ。しかし海外だとあのサイズは一般的でないらしく、こういうでかくてトルクの強いやつが出てきがちなのだ。いうなれば、グローバルスタンダード。
それに対抗するのがこちらのマシン。
「啓蒙」のところでも軽く触れた、剣術・無外流居合の普及を目指すロボである。南米の魔女 vs 日本のサムライ。国際試合にふさわしいマッチングであるが、結果は果たして…!
一方的な試合ではあったが、獰猛に動き続けるナワルと冷静にそれを待ち受けるゴッドムガイガーに、両国の考える「戦いとは何か」を見たような気がした。
不器用な人が作ったロボットにも、お国柄がちゃんと出るのである。
今大会の全27試合中、もっとも何もかもがうまくいかなかった。ある意味、ヘボコンの真骨頂ともいえるのがこの試合である。
一見して目につくのが車の上部からのれんのように垂れている人型だが、これこそがこのマシン最大の必殺技だ。
これにより相手に自分の居場所を誤認識させることができる。正しい人型に相手が突進してくれば押し相撲になるが、間違っていると敵はのれんをくぐってそのまま場外へ一直線、という作戦だ。
さらに、このマシンには別形態もある。
逆さにすることで、自分が動けなくなる代わりに、相手がどこに突っ込んできても、のれんを素通しさせ場外へ導くことができるのだ。(背の低いマシンであれば…)
明るいところでは無効という弱点はあるが(そして実際会場は明るいのだが)、かなり凝ったギミックのマシンである。
その対戦相手はというと…
青い鳥、ハーバリウム、黄色いハンカチ、星占いトップの星座の免許証など、ラッキーアイテムを思いつく限り搭載、運を味方につけて勝つというコンセプトだ。
そしてこちらもさらに追加ギミックがある。
おみくじを引くと、運が良ければ(確率1/10)、電気を通す棒が出てくる。その棒で手首のアームバンドに触れると、それがスイッチになっておりロボットが動くという仕組みである。
「運で勝つ」というよりも、「運がないと動くことすらままならない」ロボット、といってもよい。
さて、ここで皆さんに覚えておいて欲しいのだが、ヘボコンのジンクスとして「凝りすぎると負ける」というものがある。自分のギミックに食われるのだ。
それを念頭に、対決の様子を見てほしい。
おみくじを落とす→配線をちぎる→線を引っ張ってロボットごと落下。きれいな3段コンボで自滅したチミツとクローバー。何をやってもうまくいかない様子は圧巻であった。
いっぽうでがんばれ熊本も思うように操作できないトラブルに見舞われ、何一つうまくいかない試合。まさにヘボコンの真骨頂たる1分間であった。
全試合中、もっとも土俵を汚した試合として、この対戦を紹介しておこう。
「ヒヨコたちがワニのぴっちゅを空に浮かべてあげたところ、ぴっちゅはヒヨコの一匹を食べてしまい、罰として残りのヒヨコたちに引きずり回される」というストーリーがあり、それに忠実にロボットのセッティングが進行していく。
会場ではツバサちゃんのかわいらしさも相まってほのぼのムードで進行していたのだが、改めてこうやって文字で書いてみると謎の儀式っぽくて怖いなこれ。
最後に、唐突に取り出したスライムを一緒に食べさせ、スタンバイ完了。この時点で戦い方については全く明かされなかった。謎に包まれたまま対戦相手の紹介に。
こちらの作戦は明瞭だ。相手を機体の上に誘い込み、登ってきたところでそろばんの玉の回転と、そこにふりかけたヌルヌルのローションで転倒させる。ガンジーの名前どおり非暴力のまま、相手を受け流すコンセプトである。
さてぴっちゅはどう出るのか。試合開始のブザーが鳴る。
ロボットバトルだっつってんのに、いっさい電気の関与しない試合であった。
これらのクリップやスライムは、まき散らすことで相手を滑らせる作戦だったのだろう。奇しくもガンジーと同じ戦法だったわけだ。
土俵に落ちたスライムは、ぼぶさんがガンジーのローションを拭くために持参していたウェットティッシュで掃除。最後にはおなじヌルヌルをまき散らす者同士、なぞの連帯が生まれていた。
ちなみに、人気YOUTUBERはぁとキラキラチャンネルはフィクションなので検索しても出てこない。ヒヨコとぴっちゅの物語といい、設定の作りこみに力を入れすぎである。
前面についているのはゴキブリ粘着シート。これで相手を絡めとる作戦だ。そして足回りはキティちゃんのルンバ。動きのコントロールは効かないが、うまく相手をくっつけることができれば、引きずり回すことができるかもしれない!
機体にはフェルトの人形が載っており、これが後で効いてくるので覚えておいて欲しい。
材料を全てドン・キホーテで揃えたマシン。みんなの大好きなドン・キホーテの歌で相手をおびき寄せ、そこをドンペンちゃん(ドンキのキャラ)で叩くという作戦。
ちなみに叩くために搭載されているのはドンペンのトイドローンで、電源を入れると「チュイーーーーン」という音とともにプロペラが本気のスピードで回る。
この2体の戦いは、思いもよらぬ結末を迎えた。
ここでいったん試合中断。ヘボコンは「試合開始後にいちど機体同士が接触しないと試合不成立」というルールがあるため、これは再試合である。
なのだが、その後なんだかんだやっているうちに…
自分から土俵外に出ていく自滅はヘボコンでは日常茶飯事であるが、自滅してなお輪をかけて自滅を繰り返す、こんな展開は初めてだ。
このあと再試合の上限3回までフェルティーロボットは自滅を繰り返し、敗退。
ちなみにこの試合、ロボットの組み合わせも最高だったが、対戦チームもギャル vs Youtuberという絶妙な組み合わせであった。
プー・ルイさんによるVLOGもあわせてどうぞ。
2回戦は4体での対戦となる。最後まで生き残った1体だけが勝利する、バトルロイヤルだ。4試合のうち、展開が派手だった1試合をご紹介しよう。
「今年引退を発表したスペインのサッカー選手・トーレスに敬意を表して」「スペインの無敵艦隊を」「きかんしゃトーマスにした」マシン。カギかっこ一個ごとのつながりが破綻していて全然意味が分からないのだが、それでもパッション一点突破でマシンが完成してさえいれば理屈は不問となるのがヘボコンの懐の深さである。
おじさんの人形は、メンバーの一人の父がモデル。人形化に当たって本人に了承を得ていたが、ちゃんとしたロボコンだと思っていたらしく、完成品を見せたら大層がっかりされたというエピソードあり。ベースに戦車を使用しており、足回りの強さで1回戦は圧勝した。
くわえて、先にも紹介した高身長の「注文のヤバい料理長(KEROKEROBOT)」、おみくじを落としたチミツとクローバーを破った「がんばれ熊本(くまのり)」の4体での対決。
結果、がんばれ熊本が勝利を手中に収めた。
この試合の見どころとしては、なんといってもナイスミドルの活躍。
冒頭の風船わり→紙吹雪から、突然披露された高速スピンアタック、そして散り際の猛突進まで、とにかく派手&ワイルドな操縦が印象的だった。結局乗りこなせず、自滅してしまうのもヘボコン的には最高の散り際である。
そしてなにより土俵に残されたお父さんの首。1試合でいくつもの見どころを残してくれた名機であったといえよう。
そして最後は決勝戦の紹介だ。ヘボコンといえど、このあたりになるとやはり手堅く強いロボが勝ち残ってくる。最終試合まで残ったのは、この2体だ。
帽子の中にはマイコンボード搭載、しかしハイテクペナルティ回避のため電気的な接続はせず、両面テープで貼っただけである。馬力もそこそこだが、リモコン操作で小回りが利くのが強み。
記事の序盤でも紹介した、村田英雄氏を啓蒙するマシン。ちなみにロボット名はDJI社のバトル用ロボ、RoboMaster S1から。当初購入予定であったが軍資金を全て飲み代に使ってしまったため名前だけが名残としてのこる。
マシン特性でいえば、パワーでRoboMaster HK1がリード、いっぽう知能が欲しかったロボが、スピードと小回りでリード。
そしてもう一つ、両者の違いはこんなところにも。
いろんな点で対称的な2機。どちらが勝ってもおかしくない。では試合の様子をどうぞ。
最後はあっけないくらいのストレート勝ちで、優勝はRoboMaster HK1に決定した!
つづいては各賞の発表である。まずは優勝、準優勝から。なお、技術力の低さを競うヘボコンにおいて、勝つことは名誉ではない。優勝と準優勝はもっとも価値が低い賞であることに留意してほしい。
続いて2番目に名誉な賞、審査員賞だ。
今回はYoutubeチャンネル「無駄づくり」や、当サイトでもライターとして活躍中の藤原麻里菜さん。そして電子工作愛好家御用達のネットショップ「スイッチサイエンス」から大木さんにお越しいただいた。
そして最後に、ヘボコンにおいていちばん名誉ある賞、会場投票で決まる「もっとも技術力の低かった人賞」の発表だ。
こやしゅんさんは、昨年に続いて2回目の受賞。史上初の最ヘボ賞2連覇が誕生した、歴史的瞬間であった。おめでとうございます!
最後に、ここまでに登場しなかった出場ロボットを、一気に紹介してこの記事を締めくくりたい。
以上、総勢32チームが激しくそしてどうでもいい戦いを繰り広げた。熱くそしてけだるい一夜であった。
というわけでヘボコン2019のレポートでした!次回の大きな大会は来年2020年の6~7月ごろを予定。2か月前くらいにはアナウンスをするので、4~5月ごろに当サイトをチェックするか、ヘボコンのFacebookグループに入っていただくと通知が来るのでぜひどうぞ。
あと直近のイベントとしては、10/26には長野県の佐久市子ども未来館でもヘボコンを開催するので、あわせてチェックしてほしい。
ではまた、次回!
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |