箸袋は家にある
箸袋の折り紙をするには箸袋が必要である。
先ほど「外食しないと手に入らない」と書いたが、家にあった。
前に、家に人がたくさん来ることがあってそれで買ったのだ。忘れていた。「家に割り箸がある」という情報までは頭にあったのだが「家に箸袋がある」とは認識できていなかった。儚い。
ちょっと割り箸が必要になって買い、余る、という状況はよくあることだと思うので、人の家には意外と箸袋が眠っている、ということになる。
図書館を3か所回って借りてきた。箸袋の折り紙の本があるのだ。
折ってみよう
まずは何も見ずにアドリブで折ってみる。
箸袋からは竹の匂いがした。折っていると無心になれる。普通の折り紙より没入感が強い。
箸袋の用途と違う遊び方をしている、というのが集中力を上げるように作用しているのだと思う。授業中の落書きが楽しいのと一緒だ。テスト前日に部屋の掃除始めちゃうやつだ。
では次は、本を見て片っ端から作ってみよう。テスト前日の掃除を、教本を見て真面目にやろう。
色々できる。ただ、難しい。どの本も出来上がりの再現度がすごく高く設定されている。それなのに紙が重なっていてかたいし、小さくて作業が細かい。
正二十面体もある
箸袋折り紙が上手な人は、お店でご飯を食べる時、頼んだものが来るまで正二十面体を作るのだろうか。何のために。
サイコロで何かゲームをやるのだとしても六面体でいい。20個の目が必要なゲームをしたいのか。どうしてもそのゲームじゃなきゃダメか。そんなにおもしろいのか、その20個の目を使うゲーム。
いくら寄り添って想像しても「どうしてもそれじゃなきゃダメか」が登場してきておもしろい。
もとは7つの箸袋だ。7人の飲み会で、全員がそれぞれ、ちまちま折ったと思うとかわいらしいような恐ろしいような気持ちになる。折り紙サークルの打ち上げだったらあり得るのだろうか。
本番はカニ
色々作ってみて、自分の実力と作りやすい形が分かってきた。
お店でご飯を頼んで、サッと折ってみよう。
カニだ。家で練習して覚える。
覚えたと思う。
とんかつ屋さんに行くことにした。箸袋がありそうだし提供まで時間がかかるイメージがあるので、箸袋折り紙初心者には向いているだろう。
うんうん。そうかそうか。そう言えばこんな感じだった。
とんかつを食べて、最後にお茶を一服する合間にサッとカニを折ろう。箸置きが必要ないタイミングなのでもう純粋に遊びとして折ることになるが、それもいいだろう。
今折るととんかつが冷めてしまう。箸袋を安全な場所によけて、まずは食べた。
おいしい。箸袋折り紙までの通過点に過ぎないとんかつだが、ここを目的地にしてもいいぐらいおいしい。周りの人も「ここが目的地だ」という顔をして食べている。成し遂げているのだ。ガッツポーズとかもしていたかもしれない。
僕もつられて勇んで食べた。ここが今日の山場だ。頂上から登ってきた道が見える。箸袋のクジャクやエビ。ネコやカメ、正二十面体。ここに連れてきてくれた全てに感謝をしながらとんかつを食べた。キャベツをお代わりした。ご飯とみそ汁もお代わりしたかったが、とんかつの肉の味を強く記憶に残したかったので我慢した。
とんかつ箸袋ガニ
ここで初めて気がついた。箸袋の先の方だけが少し細くなっていて、なだらかな台形なのだ。
折り紙をやらなかったら気がつかなかった。箸袋ってお店によって色々ある。
でもカニって横に歩くから、進行方向の足だけちょっと逞しくなったりするのかもしれない。そんな仮説に基づいたカニってことにしよう。
5分ほどで折れた。なんて程よい作業。お茶をグイッと飲んでお店を出た。
カニは、残して店員さんを困らせても悪いので連れて帰ってきた。
ループに入れる側になった
これで誰かの箸袋折り紙を見て「へー!」と思い、すぐに忘れる、というループから脱出できた。
これからは、こちらからカニを折っていけばいい。それを誰かが見て「へー!」と思うかもしれない。

