特集 2024年8月17日

ハンザキ祭りでハンザキ獅子舞に頭を噛まれてきた

ハンザキねぶた、登場

さて、少し前まではこのハンザキ山車が祭り一番の花形だったのだが、近年ここに新たな出し物が追加された。

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日は完全に山の向こうに没して、山間に夜が落ちてこようとしている。
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光って見えるものあれは......。
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ハンザキねぶた!
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かっこいい!大胆に手を挙げて、まるで歌舞伎の決めポーズみたい。目が小さいから、代わりに口をクワッと開けて見得を切るのだ。
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美しい。いや、むしろ神々しい。
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そう、神々しい。ハンザキ山車がおもしろい・かっこいいだったとすれば、暗闇に煌々と光るハンザキねぶたはまさに神々しいのだ。日が落ちてから投入する演出がまた憎いではないか。
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全長10mを越えていそうに見える。真ん中のあたりに入った軽トラかなにかで動かしているようだった。

聞くところによると、このハンザキねぶたもハンザキ山車を作った人と同じ人の作品だそうだ。すごすぎる。いったい、この人一人でどれだけハンザキ祭りを盛り上げているのか。

ねぶたは紙でできているため、樹脂製のハンザキ山車と比べて扱いがデリケート。雨が降っていたりすると出てこない年もあるらしい。これほど晴天に感謝したのは、いったいいつ以来だろう。

ハンザキねぶたの巡行は、ハンザキ山車のときとはだいぶ趣が違う。ハンザキ山車はお囃子に合わせてしんみり、まったりと進んでくる。こっちは太鼓の音とともに魂をゆさぶる麻薬的な躍動感をともなって、ずんずん進んでくるのだ。映画に例えるなら、ハンザキ・怒りのデスロード。いや、デスロール(※)だ!ハンザキを称えよ!

※DEATH ROLL。ハンザキが嚙みついた獲物の肉を引きちぎるためにする回転運動を界隈ではこう呼ぶ。

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太鼓の音をBGMに近づいてくる。
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ドン!ドド・ドン!ドン!ドン!ドン! ドン!ドド・ドン!ドン!ドン!ドン!
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ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!!!「せいや!」
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太鼓隊の前を歩くのは、露払いのハンザキ獅子舞だ。こんなのまでいたとは!
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獅子舞なのでみんな頭を噛んでもらう。
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もちろん私も噛んでもらった。
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「こいつも噛んでやってください!」
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カプッ!

オオサンショウウオと仲良く一緒に獅子舞に頭を噛んでもらった。頭がよくなると良いのだが。

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やがて、ねぶたはお祭り会場へ。このとき気づいた。ハンザキの背中に人が乗っている!
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法被に書かれた名前、三井彦四郎だ!
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観客に向け、菓子をばらまく彦四郎。
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会場の真ん中までやってきたねぶた。両手を挙げてポーズを決める彦四郎。ここにきて観客の興奮も最高潮に達するのだった。

おかしいくらい興奮していた。太鼓の音とハンザキに刺激されて、脳の普段使っていない部分がビシビシ刺激されるようだった。このとき脳年齢を測ったら実際より10歳くらいは若い結果が出たことだろう。

さらにその勢いで、自分と同じようにオオサンショウウオを持っている人と記念撮影をした。祭りは人と人の心の垣根を低くするのだ。

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最後はダムの根元から〆の花火が打ちあがり、文字通りクライマックスを飾るのだった。いったいどこまでサービスしてくれるんだ。
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翌日は昼近くまで寝ていた

宿に戻ってもなかなか興奮が冷めず、頭の中でドンドンドドドンという太鼓の音がこだましているようだった。ものすごく疲れているはずなのに目が冴えてしまって夜中まで眠れなかった。

次の日はチェックアウトの時間ギリギリまで寝ていた。

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観光情報センターにやってきた。
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ハンザキのお土産なんかも、一通りここで手に入るのだ。
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猫が3匹いて、名前を付けてかわいがられていた。

「あ、ハンザキ以外の動物もちゃんと可愛がるんだ」と思った。少しホッとした。そのくらい、湯原の町のハンザキへの入れ込みようはすごかった。じゃれついてくる猫を見ていると急速に平常心が戻ってくるようで、ハンザキ祭りが終わったんだなという気がした。

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と、思ったら、奥の多目的スペースにすごいのが置いてあった。最後までやってくれる。

もう何が出てきても驚かないつもりでいたのに......ほんとうに、昨日この町に着いてから何度も思ったことだけれど、いったいこの情熱はどこから出てくるのだろう?というか、稼働するワニワニパニック(ここでは「はんざきたたき」)を見たのは一体何年ぶりだろう。今では相当貴重なものではないか?

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もちろん遊んだ。ハンザキの頭をぶっ叩くのは少し気が引けた。
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もんげ~!(「すごい!」という意味の岡山弁)

文化って実はすごく属人的

観光情報センターにやってきたのは、前日に湯原のハンザキ調査について説明してくれた方にぜひ来てほしいと言われたからだった。このときセンター2階の展示スペースでは湯原村出身の俳優・沼田曜一氏と原爆の民話「おこりじぞう」の展示をやっていて、これがこの方(浜子さんというお名前です)の主催によるものだったのである。

雑談しているうちに、浜子さんは「こういうのも調べてるんですよ」といって一冊の冊子をくれた。

江戸時代にこの一帯で起こった山中一揆。首謀者のほとんどが処刑された中で、たった一人助命された「ひなたノ半六」なる人物がいた。なぜ彼だけが助かったのかということを、調べてまとめたのがこの冊子だということだった。どうしよう、すごくおもしろそう。

ハンザキ祭りの山車やねぶたといい、一揆の研究といい、個人の資質と情熱によるところがものすごく大きい。人一人の力というか影響力は案外馬鹿にできないのだ。

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いただいた「ひなたノ半六」冊子とクリアファイル、お土産に買った備前焼のはんざき箸おき。
 
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最後に格納庫に戻された花子と一緒に記念撮影をした。また来ますね。
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