特集 2024年8月17日

ハンザキ祭りでハンザキ獅子舞に頭を噛まれてきた

ついについに、ハンザキ山車が動く!

お祭りの本番が始まってすらいないのに、記事がこの長さ。これもハンザキの呪いです。

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部屋で30分ほど横になってから戻ってくると、日は傾き、露店には電気がついて、沿道には俄然、お祭りムードがみなぎってきていた。
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ところで、沿道に飾られた提灯が「九分」「黄金山城」となぜか台湾の地名入りのものだったのが気になった。

ハンザキ山車が早く来ないかな、などと考えながらうろついていると生きたハンザキを水槽に入れて展示しているのが目に入った。

ハンザキ祭りの歴史や、近年この地域で行われているハンザキ調査について紹介しているのだった。

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生きているハンザキ。慣れない状況に興奮しているのか、ビタンビタンとものすごくよく動く。
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自身もハンザキ調査に参加しているという地元の方が、丁寧に説明してくれた。

湯原温泉でハンザキの生息数などをきちんと調べるようになったのは、意外なことにここ10年ほどのことだという。

ハンザキは夜行性で、昼間は物陰に隠れていることが多い。体色も川底になじむ迷彩効果のある色だから、例え川のそばで生活していても偶然出くわすことはあまりない。

ハンザキ祭りで訪れた人から

「じゃあ、この川には今もハンザキが住んでいるんですね!」

などと言われても

「まあ、たぶんそうですね」

などと歯切れの悪い返答しかできないのが心苦しくて、専門家も交えて調査に踏み切ったそうだ。

数は多くはないけれど、湯原温泉を流れる旭川とその支流ではほぼ毎年幼体のハンザキが見つかっている。きちんと繁殖が行われている証拠である。

目下の課題は、下流に流された個体が河川を横断するように設置された人工物の段差を越えて戻ってこられないことだ。現状、段差の下には立ち往生したハンザキがたまっているという。

網ですくって上流に戻してやればいいのだが、天然記念物のハンザキはたとえ生息地の中であっても無許可で移動させることができない。今はその許可を取るために手続き中だ。

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紙製の張りぼて時代のハンザキ山車の写真もあった。

造形力の高い新しいハンザキ山車もいいけれど、古き良き張りぼてハンザキも手作り感があって捨てがたい。ファミコン時代のカクカクのマリオを見て、かえって味があると感じるようなものだ。

ちなみに、現在の海洋堂顔負けのハンザキ山車は、この近くにある立体造形作品作りを手掛ける会社の職人がデザインなどをして、地元の人と力を合わせて作ったとのこと。すごい人がいるものだ。

山車を作るようになったのは昭和37年に開催された岡山国体の閉会式が最初で、選手たちを喜ばせようという意図があったらしい。特大ハンザキで選手を喜ばせようとしたというのだから、こちらもなかなかぶっ飛んだ企画力の持ち主がいたのであろう。彼(もしくは彼女)がいなければ今日のハンザキ祭りもなかった。感謝せねばなるまい。

ブースを出て下流に向けて少し歩くと、人だかりが見えた。

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遠くに見えるもの、あれは......。
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ハンザキ山車「太郎」だ!
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これが迫ってくる姿、まさに圧巻。奇祭の本領ここにあり。

三味線の演奏に合わせた道中囃子が響き渡る中、超リアルな巨大ハンザキが、みんなに見守られながらゆっくりゆっくりと前進してくる。

ゲンジボタルとハンザキさ~♪

ハ~アラ ヨイコラ ヨイコラ ヨイコラサ~♪

てな感じで。生演奏、生歌である。つくづくと贅沢なお祭りだ。

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おもに子供たちに引かれながら、ゆっくりゆっくり進んでいく。
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あとにはお囃子隊を乗せた車。
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そしてハンザキ柄の浴衣を纏った踊り子隊。
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しんがりが花子だ。

なんともシュールな光景だった。

もとからハンザキが好きな人間からすれば

「キャー、ハンザキ!大きい!めっちゃリアル!動いてる!」

と大興奮してのぼせ上がる光景だ。これだけ大勢の人々がハンザキを祭り上げている。その事実だけですでにおもしろい。

ふと気になったことだが、ハンザキにそれほど興味のない住人からはどう見えているんだろう?もっと言うと、祭りには少なからず外国人も参加していた。観光客らしき人もいたし、湯原で働いていると思われる人もいた(宿の受付もアジア系の外国人だった)

彼らは、たぶんハンザキ大明神のことは知らずに移住してきている。何も知らずに外国からやってきたら、移住先の神様がハンザキだったのだ。ちょっと想像を絶するタイプの衝撃だと思うのだが。

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ニヤニヤしてしまうな。

⏩ ハンザキねぶた、登場

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