特集 2020年5月25日

「羽つき○○」をあれこれ試してたら新しいピザが生まれた話

先日、夕飯に冷凍の餃子を焼きました。その時、パッケージの説明にあった「ここで水を加えて蒸し焼きに」という工程で、なんとなく、その水に少しの小麦粉を溶いて加えてみたところ、いともあっさりと、パリパリの「羽つき餃子」ができてしまったんですよね。

勝手に高度な技術が必要と思っていた餃子の羽だけど、意外と簡単に作れるものだったんだな。あ、じゃあ、餃子以外にもいろんなものを「羽つき」にしてみたら楽しいかもしれない。

今回は、そんなきっかけであれこれ試行錯誤していたら偶然、「これを求めてた!」っていう新しいレシピが誕生してしまったまでのお話です。

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:うちでなりきろう


羽つき餃子の作りかた

まずは大前提。用意するのは冷凍でも自作なんでもいいんで、焼く前の餃子と、下のふたつ。

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ゴマ油と、小麦粉を溶いた水

小さめのフライパンで、10個くらいまでの餃子を焼く場合だと、ゴマ油は大さじ1/2程度でしょうか。小麦粉と水の割合は10:1が目安で、今回の規模感だと、50ml:5gくらい。これでちょうど羽1枚ぶんくらいになります。

焼きかたは、市販品ならパッケージに書いてあるのに従えばいいと思いますが、一般例として書きますと、まずはフライパンに餃子を並べ、焼いていきます。このときに油がいるようなら、上に用意したゴマ油ではなく、サラダ油少々などを使いましょう。底面にほんのり焼き色がつくくらいまで火が通ったら、

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「羽のもと」である小麦粉水を注いでフタをし、蒸し焼きに
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水気がとんできたら、ゴマ油を鍋肌から回しかける

ここで羽のもとが揚げ焼き状態になる結果、ほうっておいても勝手に羽ができ、フライパンから浮きあがってきます。

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こんな感じ

そしたらフライパンをゆすってやると、底面がフライパンからはがれて全体がスルスルとすべるようになるので、お皿をかぶせて、えいやっとひっくり返せば、

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羽つき餃子が完成~!

あまりにこびりつきやすいフライパンを使っているとか、条件によっていろいろ難しかったりもするのかもしれませんが、とりあえず僕の家だと、この方法で失敗なく作れます。

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羽がないのの5倍はうまい!

揚げ物を羽つきにすると……

さて、今日はここからが本番。この技術を応用して「羽つき〇〇」をあれこれ作ってみようというわけです。まさかの「餃子越え」食品が発見できたら嬉しいな~。

で、真っ先に思い浮かんだのが「シュウマイ」なんですけども、これはちょっと餃子に近すぎる気がする。なんとなく間違いないことが想像できる。ので、一歩踏みこみ、「春巻」から始めてみることにしました。

いきなり結果をお見せしますと、

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「羽つき春巻」

春巻きの皮って揚げた小麦粉なわけで、もともとが羽みたいなもん。そこにさらに羽を生やす。さて結果はいかに?

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過剰にパリッパリ

これがですね、うまいことはうまいんだけど、少々油がしつこい。1個食べたらもう満足。揚げ物をさらに揚げ焼いているんだから、そりゃあそうか。

となると、もうひとつ試してみたくて買っておいた「コロッケ」も……

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見事な「羽っぽさ」で焼けたけど

うん、やっぱりちょっと重たいですね。羽つきの揚げ物は、だいたい同じ結果になりそうだ。

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羽つき〇〇自身がライトな揚げ物?

ここで、これまでのメニューを味見してくれた妻から「揚げて美味しい食材を羽つきにするのがいいんじゃないか?」とのアイデアが。確かにそれが良さそうです。

となれんば、「磯部揚げ」にすることによってポテンシャルが大幅に増す「ちくわ」なんてどうだろう?

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こんがりと焼いたちくわに
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翼をさずける!

いや~これがですね、すっごく良かったんですよ。カリカリもちもちに焼きあがったちくわに、薄い羽のパリパリ感。磯辺揚げのようなガッツリとした衣じゃないから軽やかだし、調理工程も手軽。

この方向性、いいんじゃないでしょうか? なんだか楽しくなってきたぞ。じゃあじゃあ、

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「羽つき牡蠣バター」なんてどうだろう?

加熱用の生牡蠣の表面に小麦粉をまぶし、適量の油でよく火を通したところに、バターを加えます。この時点ですでにうまい。

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そこに羽の素を投入!

今回は、油っこくなりすぎないように、かつ、先に投じたバターがゴマ油の役割を果たしてくれると信じ、追いゴマ油はせずに様子をみてみることにしましょう。

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羽、きたきた!
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ちょっぴり焦げたけど完成!
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バター焼きにした牡蠣にカリッとした羽

もう、抜群……。はは~ん、最近の若い人がよくSNSで使っている「優勝していく」っていうやつ、これのことだったのか。

牡蠣って大好物なんだけど、家で手軽に美味しく食べるベストな方法についてはずっと迷っていたんですが、正解は「羽つき牡蠣バター」でした!

「羽」

これだけやると、「羽作り」には慣れきりました。もはや羽を自由に操れるようになった。って、言葉にするとなんてかっこいいんだ。

そこでふと思いついた。試しに実態のない「羽」を作ってみようと。まぁ、僕の記事にはよくある、脱線というやつですね。

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羽を生み出す男
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完成

「羽つき〇〇」ですらない、オンリー「羽」。

これに塩をパラパラと振って食べてみると、タイ料理屋のお通しで出てくる「えびせん」とか、沖縄の「塩せんべい」の、究極に軽~い版みたいな感じで、かなり美味しい! 単体でいいおつまみとして成り立ってます。

あれ? ちょっと待てよ。となると試したいアイデアが続々あふれてくるぞ。例えば、

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オンリー羽に桜えびを散らして、
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「桜えびの羽せんべい」とか、
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同じくしらすと青ネギを散らして、
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「しらすとネギの羽せんべい」とか

どれも酒のつまみとして優秀すぎる! そして、具材を変えれば無限の可能性。これ、ちょっといい発見をしてしまったんじゃないでしょうか!?

ちなみに、途中調子に乗って雑になり、

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水と粉を入れすぎてしまったところ、
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仕上がりがチヂミみたいになってしまいました。

これはこれで美味しいし、羽~チヂミ~もんじゃ~お好み焼きなどの境界線って、実はかなりあやふやなのでは? と気づけて良かったのですが、「人間、慣れはじめた頃にいちばんミスが多い」という教訓も実感しました。

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「羽ピザ」の発見

さて、羽せんべい法により、文字通り自由に羽ばたく翼を手に入れてしまった僕。次に試してみたのが、

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しらす&チーズ&ゴマ油じゃなくてオリーブオイル

どんな仕上がりになったかって?

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究極クリスピーピザ

ですよ。

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しらすとチーズの塩気と軽やかな食感が最高!

しかもこの「しらすの羽ピザ」、どう考えても利点がいっぱいある。

まず、手軽。ピザは大好きなんですが、頻繁に出前をとるのはハードルが高い。そこで今までよく作っていたのが、「餃子の皮ピザ」だったりしたんですが(餃子に戻った!)、餃子の皮って、あんまり家に常備してあるものではないですよね。わざわざ買いにいかないといけない。その点羽ピザは、小麦粉とチーズがあればできてしまう。家で気軽に作るおつまみピザの正解、出たな~。今日は正解、出まくりだな~。

さらに、ピザなのにカロリー控えめ(なはず)。お腹にたまりすぎない。世の中、「お腹が減ってるからピザを食べる」って方が大多数だとは思うんですが、こちとら酒飲み。極力胃の容量を圧迫しないつまみで、長く飲んでいたいんですよ。ただ、ピザは食べたい。わがまま野郎。そんなときこそ、羽ピザ。だって使ってる小麦粉、1枚につきたった5グラムですからね? 実体があってないような生地なのに、きちんとクリスピーで香ばしい。

そして何より、簡単。手順さえ守れば失敗はほぼないかと思われます。

あ~、テイクアウト専門の羽ピザの店、始めようかな~。これ、街なかで1枚390円くらいで売ってたらどうです? 買いません? え? 味見してないからわからない? も~。じゃあとりあえず作ってみて、それで追って連絡をくださいよ。


「羽つき〇〇」をあれこれ作ってみて、その完成品の間抜けさを楽しめたらいいな、くらいの気持ちで始めた今回の実験。脱線を続けていたら、自分でもびっくりするほど手軽で美味しいおつまみ、「羽せんべい」や「羽ピザ」が誕生してしまいました。これ、確実に我が家の晩酌の定番となることでしょう。

ところで、「羽」の作りかたでもうひとつだけ試してみたことあるので、念のため記しておきますね。

フライパンに生地を流しこみ、水分がなくなってきたら油を加えるオーソドックスな方法ではなく、
 

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あらかじめ油を混ぜておいた生地を
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ただ焼くだけでも
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ちゃんとできました。羽

さらにお手軽なうえ、油の量を気持ち控えても問題なく焼きあがります。ただ、最後に揚げ焼き要素が加わるオーソドックスな焼きかたと比べると若干クリスピー感は劣りますので、そこはお好みでどうぞ。

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