スカジャンの刺繍がかっこいい
古着屋でスカジャンを見かけるたびに、ダイナミックな刺繍がかっこいいと思っていた。店で実物を見ると、想像の10倍細かいしデカい。
そしてこの面積の絵を手縫いしたらどれくらい大変なのかがずっと気になっていた。
ならばやってみようじゃないか。自分で手縫いすれば、なんでも好きなモチーフを入れられる。ひとりで黙々と取り組む作業は好きなのできっと楽しいはずだし。
というわけでさっそく無地のスカジャンを買った。
なんとなくだが、スカジャンには「TOKYO」「JAPAN」みたいに地名が入っているイメージがある。そしてモチーフには動物が選ばれることが多い。龍とか虎とか。
それならば、私も好きな地名と好きな動物をセットで入れよう。何がいいかな…
地名と動物の組み合わせを考え始めたとたん、真っ先にあの「幻の球団」が浮かんだ。
西川口サワガニーズである。
西川口サワガニーズは、かつて私が行った「これやっといてBOX」の企画で偶然生まれた架空の野球チームだ。背番号36の鬼塚という選手がいるということ以外なにも決まっていない。
西川口サワガニーズは球団なので、野球選手が着る”スタジャン”(スタジアムジャンパー)にしようかと迷った。ただ買ったのがサテンっぽいツルツルのジャンパーだったので、西川口とサワガニをモチーフにしたスカジャンにすることにした。かたやスタジアム、かたや横須賀。ややこしいな!!
作業時間が一週間しかない
無地のスカジャンも手に入り、モチーフも決まった。あとはデザインを決めて黙々と作業するだけ!
刺繍なんてほとんどしたことないくせに「まぁいけるっしょ♪(鼻歌)」と軽い気持ちでサササッと2分でデザインを決めてしまった。それがこちら。
そしてこれまた軽い気持ちで「次の記事、これにします!」と編集部に宣言してしまった。この時点で、この記事の掲載日1週間前。全然時間がないけど、やると決めておかないとダラダラ半年くらいかけてのんびり作業してしまいそうだからいいのだ。意地でも1週間で仕上げてやる。
Day1 文字だけで5時間
まずは一番上の「Nishi kawaguchi」の文字から取り掛かる。裁縫経験はあるが、布を縫い合わせたことはあっても絵を描くような刺繍をしたことはほとんどないので、そもそも刺繍糸の扱いがおぼつかない。練習がてら文字部分から勘で縫い進めることにした。
この白い文字を消すように白い糸で刺繍する。全然わからないけど、白い線の部分の上をまたぐようにぐるぐる縫えばよさそうだ。
ここで、ようやくこの企画の無謀さに気づいた。正直刺繍をナメていた。全体の設計に対するひと針のインパクトが小さすぎる。とんでもなく進みが遅い。
これは…5年かかるのでは……!?
途中で糸が絡んだり切れたりしながらも黙々と進めた。作業を始めてから5時間後、ついに全部の文字の刺繍が終わった。5時間!?
写真を見るとわかるとおり、文字のところの布が糸で引っ張られてキュッと縮んでいる。糸を引っ張る力が強いとこうなってしまうのだ。布を円形に引っ張る刺繍専用の枠みたいなのを使えばよかったのだろうが、この布のクシャ具合こそ「勘刺繍」の醍醐味だろう。
Day2 カニ爪だけで6時間
文字をチマチマ縫ってあまりの進まなさに絶望したから、絵柄部分はザクザク大胆に進めることにした。本当は細かくビッチリ縫いたいところだけど、掲載が5年後になってしまうので諦めた。
サワガニ部分もポスカで描き、上から糸でなぞる。あまり大きく描きすぎると絶対大変になるとはわかっていたけれど、どうしてもデカいサワガニにしたかったので震えながら描いた。
下絵を決めたらもう無心で縫うしかない。縫って縫って縫いまくるぜ!
写真を薄目で見るとそれっぽくなっているように思えるが、糸の出方を読み違えたり詰まらせたりと初心者あるあるに散々悩まされた。焦ると詰まるし、丁寧にやると間に合わない。人生じゃんもう。
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なぜか「発色の良い白」にこだわった結果、白だけ他の色より細い種類の刺繍糸になってしまった。当たり前だが、細いほうが縫い潰しにくくて時間がかかる。そして細かく繊維っぽい質感が奇しくもカニの身のようである。この翌日の昼になぜか強烈にカニカマが食べたくなって買ったのだが、絶対この刺繍のせいだ。今書いていて気づいた。



