特集 2023年2月8日

ただ闇雲に鼻笛を作ってた4年間のまとめ

ボカリナ最強じゃん?って思った

なんとなくネット通販で探したボカリナという鼻笛を買ってみました。(本当はもう1種類買ったんだけど個人的にはイマイチだったので割愛します)

Amazonで1000円くらい。色は各種あります。

ふむふむ、色が可愛いですね。持った感じもツルッとしてて硬くて良い。で、肝心の音はどうよ?と思って一吹き。

完敗でした。

あ、こんなに性能が違うんだって思いました。まず音の響きがクリア。夏の泥沼と冬の摩周湖くらい透明感が違う。

少ない息で大きな音が出るし、高音も無理せず簡単に出るので頑張らなくてもいい。余裕で広範囲の音がクリアに出ます。すごい。

はぁ、こんなに良く出来てるんだー、1000円で買えちゃうんだーって、心の底から感心しました。

で、思ったんですね。

よし、新しい3Dプリンターを買おう。(え?)

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光造形3Dプリンターを買った

紫外線(UV)でレジンを硬めて造形していく方式のやつ。当時で3万円くらい。

今までのはFDM式って言って、細いプラスチックを熱したノズルから押し出して積層していくタイプの3Dプリンターです。精度はザックリ0.3mmくらいですかね。わりと大雑把な造形しか出来ません。用途によっては十分ですが鼻笛には適してなかった。

FDM式の3Dプリンター。これは当時4万円くらい。大きさと重さは電子レンジくらい。右の赤いリールが材料のフィラメントで、これを溶かして積層して形を作る。材料費は1kg2000円くらい。

レジンをUV液晶の紫外線で硬めて造形していくタイプで精度は0.1mmくらい出ます。

光造形でも気温やレジンの種類にも左右されるので毎回ピッタリ同じものが出てくるわけではありませんが、FDM式よりは高精度っぽいので導入しました。

全ては鼻笛のために。

どうかしてた。

(※これまでの記事で何度か光造形の3Dプリンターが出てきますが、根本的には鼻笛を作るために導入したものです)

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光造形マジですげぇ

早速レジンで鼻笛を作ってみました。ちなみにレジンは1kg3500円くらいです。意外と安いとお思いでしょうが、レジンもピンキリで、これは安めのやつ。

バットにレジンを入れて、
3DプリンターのUV液晶の上にセット。上の傘みたいのがプラットフォーム。プラットフォームの裏側に造形物が生えてくる。
プリントを開始するとプラットフォームが降りてきて、上下運動しながら裏側に造形していく。
3時間くらい待つとプラットフォームの裏側に生える。5個が3時間で作れるのでFDM式より速い。FDM式だと1個1時間くらい。

ここから先の後処理がめんどうくさい。しかし全ては優れた鼻笛を作るため。労力は惜しみません。

鼻笛を刈り取る。この時にうっかり割ってしまうことがあるので慎重に外す。
イソプロパノールで余分なレジンを洗浄。一次洗浄とすすぎ洗浄の2回。レジンに触る時は必ずゴム手袋をします。素手で触り続けるとレジンアレルギーになってしまうことがあります。
まだ割れやすいのでUVランプで二次硬化処理をする。

FDM式の3Dプリンターは造形が終わればそれで完成だけど、光造形は洗浄とか研磨とか、後処理がけっこう面倒です。その代わり仕上がりはFDM式とは次元が違います。ツルツルのピカピカ。

二次硬化のあとに造形痕をサンドペーパーを掛けてならし、エンボスにアクリル絵の具を入れてまた研磨して洗浄します。

更に、最初は知らなかったんですがレジンで作ったものって紫外線が当たり続けると黄ばむんですね(最高級レジンは黄ばまないらしいが)。これはUVカットクリアスプレーで対応します。

UVカットクリアスプレーというものを知らなかった頃のやつ。透明レジンだけど日光を当てすぎて黄ばんでしまった。

UVカットクリアスプレーを吹いて乾燥、ラッカー臭が抜けるまで1ヶ月くらい部屋の隅に置いておきます。

最初の研磨が一番めんどくさくて、1個手作業で磨くのに15分くらい掛かる。
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で、音はどうなった?

音は、単純にFDM式から光造形に変えただけで3音くらい高い音が出やすくなりました。理由はよく分かりませんが、FDM式は層になってる部分が音の響きを邪魔してるのかも知れません。精度が上がってCADで設計した通り、文字通り寸分違わずに作れる影響もありそうです。

口穴ブレードも、ブレードと呼ぶにふさわしい鋭さで作れます。FDM式のはナマクラでした。

レジンの笛も完成に至るまでにけっこう試行錯誤しました。作っては人に配って問題を見つけて微調整を繰り返して、作っては自分で吹いて設計を変えてプリントして…という繰り返し。0.1mm単位で穴の大きさや形を変えていって音が出やすいサイズを探しました。

最終的には3オクターブ強くらい、周波数で言うと350Hz~3500Hzくらい出るようになりました。(吹く人次第なとこもあります)

冒頭に載せた動画は完成した笛で吹いています。

 

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色をいじりたくて色々やった

色付きレジンを何色も揃えたんですが、途中でレジンに混ぜる色素があるのを知りました。造形中に色付きレジンや色素を混ぜることでグラデーションや模様を作れるようになりました。

この色素はレジンに混ざりやすくて良い。

上野の科博でやってた宝石展を見に行ったら2色以上が混ざったバイカラーの宝石がありまして、それをヒントにバイカラーの鼻笛を作ってみたりも。

緑のレジンで造形を始めて、途中でクリアレジンを足して、最後に赤色素を混ぜる。

レジンを混ぜるタイミングとか混ざり方で毎回違うものになります。5個ずつ作るんだけど、全く同じものは出来ません。

途中でクリアレジンを混ぜて、赤いレジンの色を薄くしておくのがコツ。クリアを挟まないと赤と緑が直接混ざって濁ってしまう。
なんだか夜明けっぽい色合いになったけど、二度と同じ色は出ない。
面白い模様が出たけど、色素の混ざり方による偶然の産物。窯変(焼き物が釜の中で偶然いい感じに変化すること)っぽさがある。
これも面白い模様が出ました。

笛の記事なのに、吹いてる様子が少ないな!とお思いでしょう。

いや、そうなんだけど笛としては今度こそ完成してしまったので、もう他にやることと言えば見た目をキレイにするくらいなんですよ。

鼻笛いろいろ。
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ボカリナと比べてみる

ここで、量産鼻笛で最強と評価しているボカリナと比べてみましょう。重さは、ボカリナが20gくらい。僕の鼻笛(ジオフルートと名付けました)が10gくらい。大体半分です。

並べてみると、ボカリナってけっこう大きいですね。

僕の笛は登山にも持っていきやすく、ポケットに入れても邪魔にならない薄さと大きさで作りました。ボカリナはちょっと大きめ。

ただ、大きいからなのか少ない息で大きな音が出るし、鼻穴や口穴の形がどんな顔にもフィットして、初心者でも吹きやすいと思います。本当によく出来てます。ボカリナが1,000円とはお買い得ですね。

横から見るとこんな感じ。僕の笛はこれだけ小さいのに結構音が出てエライと思います!

500個くらい作ったのかも

1個10gのレジン消費で、これまでで大体4kgくらいレジンを使ったので、400個くらい作ってきたのだと思います。鼻笛以外はほぼ作ってません。鼻笛造形専用3Dプリンターとして使ってきました。

200個くらいは配ってテストしてもらったり、欲しいという人に売った事もありますが200個くらい手元にあります。しかも、たまに作らないと作り方を忘れてしまうので、追加されていくばかり。

鼻笛たくさんあるし、いつか大勢で大鼻笛大会とかやりたいなぁ。


コロナ世界では吹きにくい笛でして…

鼻笛はほとんどの人が短時間で曲を演奏できるようになる、本当に面白い楽器です。特にボカリナみたいに汎用性が高く音域も広い鼻笛なら初心者でも楽しく吹けます。

でも、口と鼻を付けて鼻息でピーピー吹くって、どうにも飛沫感染する感染症と相性が悪いんですよね。屋内で数十人が鼻笛を吹いたらなかなかリスク高そうです。

そんなわけで今まで鼻笛の記事を書かずにいたのですが、そろそろ状況も変わりそうだし、テレビで鼻笛を見かける機会もあったので1回書いておくかと思って書きました。(ニノさんって番組で二宮和也さんが吹いてました)

いつかやりたいな、鼻笛大会。みんなで吹いたら楽しいと思います。試してみたい方はまずボカリナを買って吹いてみてください。

 

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