飾り棚に佇むバラ
石川さんは電報の置き場所に困り最終的に本棚に収納したが、わたしの元にはバラも届いている。さすがにバラは本棚には収納できず、キッチンにある飾り棚に並べた。
花は好きだが日常使いに慣れていないので、正解が難しい。
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緊張の電話をかけた次の日の昼頃、石川さんから電報が届いたとの一報を受けた。は、早い!
ここからは石川さんがレポートをまとめてくれたので、そのまま掲載しよう。
※※※ 以下、石川さんレポート ※※※
鈴木さんから「送りました!」と連絡をもらったのは木曜の夕方でした。僕も電報を受け取るのは初めて。いまだに父の危篤を知らせるイメージしかないので、もしかしたらすっごいすぐ着くかもと思い緊張して待っていましたが、結局この日は来ず。
動きがあったのは翌朝の10時前でした。ちょうど洗面所で歯を磨いていたところにチャイムの音が…!
実はこのとき電報のことをすっかり忘れており、あまりに慌てて出たのでオートロックを解除せずにインターフォンを切ってしまいました。配達の人、ごめん。
届けてくれたのは制服を着ていない、いつもの郵便配達とは違う人でした。郵便と別に電報専門の配達部隊があるに違いない。
ビニール袋に入っているのでさっそく開封します。
オブジェクトとしてすごいハレ感のある物体。これがLINEで送るおざなりな返事「はい」と同じ通信手段だとは思えない。
そして気になるその内容は…?
お祝い
石川 大樹 様
お誕生日おめでとうございます。心よりお祝い申しあげます、この一年、楽しいことステキなことがあふれるすばらしい年になりますようお祈りいたします。
鈴木 さくら
……?
「鈴木です!届きましたか?これが電報ですよ~」的なのを想像していたのですが、急に誕生日を祝われて面喰いました。ちなみに7月生まれなので、いま誕生日から一番遠い時期です。
もしかしたらテンプレートが決まっててあまり自由に送れないのだろうか、とか背景を想像してしまいました。これを読んでいる皆さんはすでにその答え合わせができていることと思いますが。
受け取った感想ですが、体験としての新鮮さはすごいです。
もうなんかメールやメッセンジャーアプリに慣れきっているので、通信って情報だけ飛んでくるものって思ってるじゃないですか。それがこんなしっかりしたオブジェクトで届くとは。メッセージが来たっていうより「存在感が届いた!」って思いました。
インパクトはあるので、お祝い以外にもなんか文句言いたいときとかに電報で送ると相手の心に響きそうです。
あと届いた電報をこのあとどうしていいかわからないです。家にこれを収納する定位置がない。とりあえず本棚に立てました。
※※※※※※
ドキドキしながら打った初電報。受け取った石川さんもとても喜んでくれたようで、送ってよかった。
台紙のデザインもこのレポートで初めて確認した。なるほど、たしかに誕生日祝いにふさわしい、華やかで立派なデザインだ。
正直オペレーターから値段を聞いた時は「台紙に2,000円かー!」と思ってしまったが、こうして実物を見ると「こりゃ2,000円くらいするわな」という印象だ。電話で物を売り買いする難しさを改めて実感した。そしてインターネットって本当に便利!
本棚に立ててくれているようなので、半年後誕生日を本当に迎えた時に再度見返して喜んでもらえたらうれしい。
ちなみにこのあとわたしも石川さんからの電報を受け取るのだが、石川さんはネット注文したそうだ。わたしは電話で注文したので、あまりおかしな内容の電報は送りづらかったが、ネットなら気軽に好きな内容で送れそうだ。
つまり、1月なのに7月生まれの石川さんに誕生日祝いの電報を送った理由は、“本当は初電報を祝う電報を送りたかったが、オペレーターに内容を伝えるのが恥ずかしくて、よくありそうな誕生日祝いに落ち着いたから”でした!
石川さん、面食らわせてしまってごめんなさい。
石川さんに電報を送った数日後、今度は石川さんからわたしの元に電報が届いた。
届けてくれたのは、ニコニコ笑顔が印象的なNTTの人だった。石川さん、たぶん石川さんのところに来た人もNTTの人です。インターフォン越しに「NTTでーす!」って元気に言ってたから。
なんだこのおしゃれの極み電報は…
この電報が届く前、予算の関係で石川さんに「基本料金1,600円、台紙2,000円、プラス消費税で4,000円弱もかかっちゃいましたよ~」などと金の話をしていた自分が申し訳なくなった。
バラはプリザーブドフラワーだし、絶対こっちの方が高いじゃん。そしてあふれ出るセンス。花はいつもらってもやっぱりうれしい。石川さん、男前すぎる~!!!
早速開けてみよう。
いったいどんなメッセージが書かれているのだろうか。
激励
鈴木さくら様
執筆記事の執筆をご快諾いただきいただきありがとうございます。
一緒に記事を作っていけること、大変光栄に思っています。
締切は2月15日です。
玉稿、楽しみにお待ちしております。
石川大樹
ぱっと見気づかなかったが、本文の1行目をよく読んでほしい。
執筆記事の執筆をご快諾いただきいただきありがとうございます。
“執筆”と“いただき”がダブってる!初めての電報にふさわしいエラー!結婚式やお悔やみの電報じゃなくて本当によかった。記事をおもしろくするための仕込みじゃないよね…?
そして、最も震えたのはこの一文。
締切は2月15日です。
怖い。電報で締切を伝えてくるの、怖過ぎる。
添えられたバラとかわいらしいピンクの花が描かれた台紙からは想像もつかない通告で、思わず電報を置いて後ずさりした。
編集者はライターに締切厳守を伝える際、電報という伝え方もありかもしれない。ライター側としては、こんなに気合いの入ったものを送られて締切を絶対に破るわけにはいかないという極限状態の気持ちになる。
本気度が伝わるのが、電報のいいところだ。
内容の一部に震え上がったが、改めて電報をもらうと思っていた以上にうれしくハッピーな気持ちになった。
イベント時以外にも気軽に使っていいし、メールやSNSでメッセージを送るのに飽きたら今こそ電報だと感じた。
またなにもない時に、不意に誰かに電報を送ってみたい。
石川さんは電報の置き場所に困り最終的に本棚に収納したが、わたしの元にはバラも届いている。さすがにバラは本棚には収納できず、キッチンにある飾り棚に並べた。
花は好きだが日常使いに慣れていないので、正解が難しい。
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