合成では味わえない深み
ここまで終えて、「合成でいいんじゃないの?」という声が聞こえるようだ。
もちろん布の実物を用意したほうが楽しい。他の人と撮りあうのもよし、布を持ち寄ってパーティーするのもよしだからだ。
合成では味わえない深みを楽しんでほしい。
証明写真やプロフィール写真が好きだ。
他の何でもない、その人自身が際立って主役になっているのがよい。
だが大抵の場合、証明写真は背景が地味な青や白じゃないだろうか。
派手にしてみたらどうだろう。
背景の色が違うだけでも華やかになった
以前「2018年の食べ物を1970年っぽく撮るには」という記事の最後で、色画用紙を背景に証明写真ライクな写真を撮っていた。
ふつうの証明写真と違って、ポップで楽しそうに見える。笑顔であること、味わいのある一眼レフで撮られていることを差し引いてもである。
これは背景の色の違いが印象に影響を与えていると考えるのが適当だろう。
色が変わるだけでこうなのだ。今回はもっと違った背景を用意して写真を撮ってみたい。
さっそく背景を用意しよう。派手な柄の背景デザインがほしいと考えて、いろいろな布が揃っている新宿の服飾手芸材料店オカダヤへ向かった。
何用なのか分かりづらい派手な柄があってオカダヤの文化の豊かさを感じる。何に使うか分からなければ分からない方が良い。
数多ある記事の中から5枚選んで買ってきた。値段的には1m1500円くらいの商品だ。
ちなみにマリメッコの柄は6000円以上したので、敬意を払って今度から「さん」をつけて呼ぼうと思った。
買ってきた布は、以下の通り。
それぞれ、方向性だったりニュアンスだったりがかぶらないようにしたつもりだ。
トップバッターはオカダヤで見つけた、赤い格子にかわいいイラストのストップペイル柄だ。レトロでファンシーな雰囲気が被写体をどう彩ってくれるだろうか。
シワやたるみがないように壁に貼っていく。それでは撮ってみよう。神の恩寵のあらんことを。
はい、チーズ。
背景が赤いのもイラスト付きなのも珍しいし、明るい性格の人に見えるようだがどうだろうか?
ただ惜しむらくはせっかくのストップペイル柄が人物に対して細かすぎるため、ハッキリしないことだろう。
これなら赤い格子柄だけでもそんなに変わらないかもしれない。
ストップペイル柄が悪いとは言わないが、背景布としては長所が活かしきれないところがあるようだ。
続いて用意したのは、多数の猫がこっちを向いているという猫文化の極北みたいな布。
なかなかインパクト大である。
今こうして見ると、この柄は全員仔猫ですな。仔猫を指揮する猫大将といった風情だ。
ところでぼくが着ているのは白シャツだが、柄のシャツと合わせたらどうだろう。
柄に柄、上級者コーディネートだ。
柄に柄が紛れて、頭だけ浮いて見える。
猫柄のようなランダムで繊細な柄には、柄のついた服よりもシンプルな服がいいだろう。
賢者は仔猫を背景にしているとき、柄物のシャツを着ない。
リアルな動物に続いて、デフォルメ化された植物つばきだ。マリメッコさんの遠い親戚と言える……かもしれない。
さっそく見てみよう。
ここで気づいたのだが、つばき柄の服を着ていたらさすがに派手すぎるものの、背景にする分には映えるだけというか、”派手”の責任の所在が自分じゃなくなるのがいい。
さて、つばき柄。パッと見た印象はとても明るくて好きなのだが、かわいらしすぎるという面もあるかもしれない。
つばき柄の評価 ★★★★☆
かわいいデザインが好きな人むけ
続きてオカダヤで気を引かれたこの肉柄の布だ。布自体は猫柄に続いて何に使うのかわからない、たいへん文化的な一品。
背景にしたらどうだろう。
薄目で見ると黒の地に赤いブロックが浮かんでいて、色合いは悪くない。
しかしそれが生肉が並んでいる状況だとすると、被写体も肉に見えてくるというか……人がちょっと変態っぽくも見える。考えすぎだろうか。
肉が好きって言ってもふつう生肉じゃないだろう。そういうことだ。
最後は虎柄だ。柄の王と言ってもいいかもしれない。
雰囲気が出て、強そうだ。ドラゴンボールの闘気的なオーラにも見える。上に向かってのぼっていくような。
それとともに、なんだか太って見えるのは気のせいだろうか。
横にしよう。
横向きにしたほうが良さそうだ。
虎のシマがゴッホの筆のタッチに似ているという意見もあった。たしかにそうかも知れない。
イキイキした感じと、野性的な雰囲気があってかっこいい。
虎柄が万人向けの背景になりそうだ。次点でつばき柄がおすすめになると思う。細かい柄は目立たないのでよくないだろう。
1mあれば十分なので、いちど生地売り場に足を運んで自分だけの背景を探そう!
ここまで終えて、「合成でいいんじゃないの?」という声が聞こえるようだ。
もちろん布の実物を用意したほうが楽しい。他の人と撮りあうのもよし、布を持ち寄ってパーティーするのもよしだからだ。
合成では味わえない深みを楽しんでほしい。
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