はじめに
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哀愁のオンライン台湾留学(唐沢むぎこ)
先月、1年間の台湾留学が終わりました。
台湾の土を踏むことなく。台湾の空気を肺に入れることなく。
いわゆる「オンライン留学」をしていました。日本にいながらパソコンで海外の授業を受けるのです。
去年の9月から今年の6月まで台湾現地で交換留学する予定でした。開始当時からコロナ対策のため入国が制限されていたのですが、「いつか入国できるやろ〜」とたかを括っていたら、日本にいたままあっという間に1年が経過。
20年住んでる実家の部屋で台湾大学の授業を受け、授業が終わればリビングで麦茶を飲みながら休憩するという、ホームシックとは無縁の留学生活でした。
2年かけて準備した留学だったので、現地に行けなかった悲しみは大きく、哀愁の1年を送りました。
日本の友人に「いまオンライン留学してる」と言うと、「通信空手をしている人」みたいな感じで見られ、何とも言えない空気になったものです。
カルディに行けば鹹豆漿(シエントウチャン)の素、業務スーパーに行けば油條(ヨウティアオ)など、台湾を彷彿とさせるフードを無意識に買い込んでいる自分に気づき、なんとか食で台湾を感じようとしている己がふびんでなりませんでした。
またある日は、「宋に行きたすぎて船まで作らせたけど、結局渡航できなかった源実朝」や「アメリカに密航しようとして失敗した吉田松陰」に親近感がわくことも。源実朝と吉田松陰に共感する日が来るなんて……
それでも、授業はためになったし、少ないながら台湾の友達もできました。
中国語の授業で中国語劇をするテストがあり、発音のたどたどしさを隠すためにこってり演技してたら、クラス投票で「演技賞」に輝きました。(今考えると皮肉かもしれない)
「フランス植民地時代のベトナム美術」について研究した英語論文を読んで、中国語で発表するという国際的すぎる経験もしました。こんなにグローバルなことを実家の部屋で成し遂げたのかあという感じです。
台湾の友達が参加していたポッドキャストに、台湾版「地味ハロウィン」を主催した方がゲスト出演していてました。台湾の方々の「地味ハロウィン」の感想や、コスチューム選びのポイントなどを偶然聞けて嬉しかったです。
台湾に入国できるようになったら、溜め込んだ台湾欲が暴発して移住してしまうんじゃないかとヒヤヒヤするこの頃です。
終わってふたたび解説です
現地へ行くことなく留学が終了してしまう…。なんてことがあったんですね。確かにホームシックにかからなくて良かった!としか声をかけられませんね。カルディで鹹豆漿(シエントウチャン)の素を買って食べてみたいです。
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