牛二郎はいまだかつて食べたことがない味だからこその強烈なインパクトと違和感に満ち溢れていた。これをさらにブラッシュアップさせて、誰かに食べさせてみたいという欲求が湧き上がる。
グイっとスープを飲み干しながら、イスラム教徒も食べられる二郎風牛ラーメンを出す店を八潮あたりにオープンさせて、髭を生やして厨房に立っている自分の未来がぼんやりと見えた。
ここからは仕上げになります。
はい、できあがり。見た目は普通に二郎系ラーメンだけど、その匂いはものすごく牛臭くて混乱する。幕末にはじめて牛肉を食べる人が受けるのと同じくらいの衝撃かもしれない。
ここまであえて味見を一切しなかったのだが、さてどんな味なのだろうか。
とりあえず丼に口を寄せてスープを飲んでみる。スープというか脂しか口に入ってこなかったが、これが意外とクドくない。そして牛独特の臭みも気にならない。むしろ好ましいくらいだ。
牛と醤油は言わずもがなの鉄板の組み合わせなので、初めて食べるラーメンだけど信頼感に溢れていることに気がついた。これは広義の牛丼だ。
続いて箸で極太麺を持ち上げてすすってみると、そのうまさに驚いた。牛肉と牛骨だからこそのミルキーな甘みを感じる旨味たっぷりのスープと噛み応えのある麺がよく絡む。脂にまみれてツルッツルな様子は、もはや官能的ですらある。
肉は脂が多い豚バラ肉のようにトロリとはいかないが、噛み応えがあってこれはこれでうまい。もう少し小さく切って麺との絡みをアップさせた方が、料理としての完成度は上がるだろうか。あるいはスープは牛、具は豚というハイブリッドな組み合わせでもいいかもと妄想が膨らむ。
力強すぎる牛の匂いがするスープにちょっと身構えていたのだが、普通以上にうまいじゃないか。もちろん好き嫌いは分かれそうだが、牛モツ煮やマトンが平気な人であれば、問題なくおいしく食べられると思う。
豚が存在しないパラレルワールドの二郎って、きっとこんな味なのだろう。匂いは独特だが食べると口に馴染むことに驚いた。
このように自分で作ってみると、牛骨から予想以上の脂が染み出たことと、スープをいくら煮込んでもまったく乳化しないことに驚いた。西村さんが鳥取の牛骨ラーメンを紹介する『「牛骨ラーメン」と倉吉の思い出』がみんな透明なスープな理由はこれか。
軽いノリで作った牛二郎だが、オリジナルの豚と比べてどっちがおいしいかは、もはや好みの問題といえるかも。それほどまでに善戦してくれたのである。
牛二郎はいまだかつて食べたことがない味だからこその強烈なインパクトと違和感に満ち溢れていた。これをさらにブラッシュアップさせて、誰かに食べさせてみたいという欲求が湧き上がる。
グイっとスープを飲み干しながら、イスラム教徒も食べられる二郎風牛ラーメンを出す店を八潮あたりにオープンさせて、髭を生やして厨房に立っている自分の未来がぼんやりと見えた。
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二郎ラーメンの豚肉を牛肉に置き換える記事最高でしたね。
編集部の橋田です。
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