地図が読める人の視点
「自分って意外と地図読めるじゃん」と思ったわたしは、後日再びGoogleマップを開かない縛りを課して、動物園へと向かった。
今度は1人ではなく、友人と一緒に。友人は地図が読めるので黙って着いてきてもらう。
目的地の最寄り駅までは、予習とカンペさえ用意してれば余裕で行ける。楽勝だ。
しかし調子に乗ってはいけない。すべては駅の親切な設計のお陰である。駅をデザインしてくれた人、ありがとうございます。
最寄り駅から動物園前まで行くバスが出ているのだが、歩くことにした。なんか簡単な道だったので、散歩に丁度よさそうだったのだ。
この時の時間は正午。天気もいい。西口から出て、大通り沿いを1時間弱歩けばつくはずだ。
一応、印刷してきた地図を開く。
全体を写すために引きの画面で印刷したら、その間の道にある建物名とかがほぼ全部非表示になってしまった。正直、地図としてはかなり頼りない。
とりあえず歩く。
おッ!高速道路。頼りになる目印だ。
かわいい標識(逆光)。
かわいい標識(逆光)。
高速道路…2本目。2本目?
間違ったのか。そういえば、1時間以上歩いている。
『動物園』の3文字が無い地図を眺め、立ち尽くす。
見兼ねた友人が一緒にマップを確認してくれた。そして、「全然違うところにいるから戻ろう」と一言。
大通り沿いをまっすぐ来てたはずなのに、何故だろう…。とぼんやりしていると、すかさず友人が解説してくれた。
つまり、こういうことらしい。
緩やかにカーブしていたみたいだ。
友人が言う。
「行きの道中で撮った写真はすべて逆光だったでしょう」
そう。つまり、進行方向に太陽があるということだ。そしてこの時の時間は正午。このことから、わたしが南に向かっていたことは明白だ。そして、肝心の動物園の位置は西である。
大通りを西側に進みながら、徐々に南に曲がっていったのだろう。
正直、この説明を聞いた時、意味がわからず、「へー…」しか言えなかった。地図が読める人ってこういう考え方ができるんだとただただ感心する。わたしなんて歩いてて太陽の位置とか考えないからな。
西口から出たからと言って、まっすぐ歩けば西に進む、というわけではないのか。めちゃくちゃ当たり前の気づきを得た。
Googleマップなしで行くと、目的地までたどり着いたときの喜びもひとしおである。(労力の対価を無理矢理得ようと、脳が頑張っているだけかもしれない)
広い駐車場には車がズラリと並んでいた。
駅から動物園までの道中、あまりに人がいなかったので、もっと閑散としているかと思いきや結構な盛況だ。
そうだよな、みんな車で来るよな。そんできっと、カーナビを見ながら。
わたしは無数の車を眺めながら、はたしてこの中にグローブボックスにスーパーマップルが入っている車はあるのだろうか、と考えたりした。
動物園には、園内を全て見渡せる親切な地図がいくつも設置してあった。現在地も、どこにどの動物がいるかも、これを見れば一目瞭然。そして思った。その明瞭さは、例えるならGoogleマップである、と。
スマホを携帯するとは、常に動物園の地図を持ち歩くようなものなのかもしれない。
記事に使わなかった写真
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