特集 2020年10月29日

人の善意を感じる写真を集めて癒されるというライフハック

かなしいときや気分が沈んだとき、あなたは何をして元気を出しているだろうか。

おいしいものを食べる、運動をする、歌う、ひたすら寝る……色々な方法がある。これらはどれも食べ物、場所の確保などの事前の準備や配慮が必要だ。

そこで最近、事前準備を最小限に最短1分ほどで元気をもらえるライフハックを編み出した。それは「善意の写真を見る」ことである。

善意の写真を見る、またそれを収集すると、日常の些細なことに対して愛を感じられるようになり、元気玉のようにパワーをもらうことができるのだ。そしてそれは「世界平和の実現」の一助になる。

平日のロイヤルホストで聞こえてきそうな胡散臭いことを言っているのはわかっている。でも本当なんです!

1993年東京都生まれ。与太郎という柴犬と生きている普通の会社員。お昼休み時間に事務員さんがDPZを見ているのを目にしてしまい、身元がバレないかハラハラしている。

前の記事:塩むすびはコーンフレークの残り牛乳と食べると最高


ささやかな善意でいやされる

「善意の写真」とはその名の通りではあるが、他者からのささやかな善意を感じられる写真を指す。もちろん筆者が勝手に命名したものだ。

ピンとこないというあなた、ちょっとスマホのカメラロールを見返してみてほしい。職場の人が分けてくれたお菓子、スタバのカップに書かれた店員さんのメッセージ、具合が悪い時に寄り添ってくれたペットの様子。こういった写真はないだろうか。ある??ズバリそれのことです!!!

きっかけのさつま揚げ

筆者が善意の写真をまとめるようになったのは半年ほど前のことである。
どうしようもなく気分が落ち込んだとき、たまたま過去の写真を漁っていて出てきたのがこの写真だった。

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一見なんのヘンテツもないさつま揚げ

4年前に友人と宮崎県のとある島に行き、そこで声をかけてくれたおっちゃんにもらったさつま揚げである。おっちゃんは島でボケっとしていた見ず知らずのわれわれに水上タクシーをやっている友人を紹介してくれ、格安で島を周遊させてくれたという思い出がある。

船着き場の待合室で待機しているときにおっちゃんが持ってきてくれた出来立てのさつま揚げは、その水上タクシーの方のお母さんの手作り。油揚げを煮たような甘みがあり、とんでもなくおいしかった。見返すだけでその背景にある人のあたたかさが同時によみがえってくる最高の一枚なのだ。

長くなったが、気落ちしているときにこの写真を見て、

「このとき楽しかったな~」「あ~こんな親切な人がいたな」「わたしだってこんなやさしさをもらうに値する人間だ!!」

と元気を取り戻すことができたという経緯があり、それ以来、こういった善意を感じられる写真をあつめた「善意アルバム」を作成し、たまに見返しては励まされている。

02_zenni.jpg
統一感がまるでない。それでいいのだ。

4月ごろから集めはじめ、現在までのところ34枚になる。

頻度としては月に2~3回ほどで、仕事でミスをしてしまったり、すべてのやる気が失せてしまって気が沈んでいる時に元気をもらうためのルーティンとして定着している。

善意の写真=リアル元気玉

この「善意の写真アルバム」にはちょっとしたコツがある。

一言で善意といっても、誕生日プレゼントなど、イベント的に発生した善意はこの場合ノーカウントである。あくまで「ささやかな善意」にフォーカスしたい。

ざっとポイントを挙げると以下のような感じだ。

善意のアルバムづくりのコツ(1)
 
・被写体はなんでもないモノ・空間
⇒人でない方が味わいがある
03_grapejuice.jpg
浅草のジュース屋さんのおっちゃんがおまけで安くしてくれたジュース。
「これを飲むうれしそうなわたし」の写真であった場合、落ち込んでいるときに見たら、たとえそれが自分であっても「チッ楽しそうにしやがって」とやさぐれてしまうリスクもある。あくまで「モノ」であることが重要だ。
善意のアルバムづくりのコツ(2)
 
・日常で受けるささやかな善意
⇒疲れないレベルの熱量が心地よい
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留学時代にクラスメイトにもらったガーベラ。当時はかっこいいと思っていたらしい加工が施された画像しか見つからなかった。
ゴージャスな花束もいいが、こういった日常で不意に遭遇するやさしさによって疲れた心が癒されるのである。
善意のアルバムづくりのコツ(3)
 
・善意の発信者は友人でもいいが、関係性の薄い人が望ましい
⇒旅先で出会った人、お店の店員さん など
05_icecream.jpg
去年の夏にはとバスで「暑いので」とサービスでもらったアイス。
他人のインスタントな善意を感じることによって、落ち込んでいて自己肯定感が下がっていても「今の自分だってこれくらいの親切は受けるに値する」と持ち直しやすくなる。
善意のアルバムづくりのコツ(4)
 
・人間からの善意でなくてもよい(動物など)
⇒少し無理やり解釈できるくらいでもおもしろい
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実家の犬が筆者の寝るスペースを空けておいてくれている様子。
元気を出すためには多少のおもしろやかわいさは重要である。

友達から何かをしてもらった、とかでもアリなのだが、落ち込む原因がその友人とのトラブルだったりすると素直に癒されない可能性もある。

それに他人からの無償に近い善意の方が荒んだ心に染みていい。複数の人たちから少しずつやさしさをもらう、リアル元気玉だ。

善意アルバム ~月餅の場合~

ここで筆者が実際にまとめている写真をいくつか紹介をしたい。

07_oranges.jpg
絶妙なバランス感覚で積まれたみかん。なんでもない写真だ

金沢旅行の際に定食屋さんでランチをし、食後に出されたみかんの山である。4人で行ったのだが明らかに量が多く、え??という顔をしていたら「もう少しで傷みそうなので食べられるだけ食べてしまって」とのこと。みかんバイキングだ。

ゆっくりしていってください、というお言葉に甘え、完食には至らなかったが友人らとみかんを味わった記憶がよみがえる。さつま揚げといい、旅先は善意の写真チャンスが多い。他人の刹那的なやさしさがポイントである。

08_penguin.jpg
すやすやしているペンギンの赤ちゃん

これは筆者がエステティックサロンで勤務していたとき、お客さんが施術後に残していってくれたタオルで作ったペンギンの赤ちゃん。片づけにブースへ入った瞬間、ひざから崩れ落ちたものである。あまりにもかわいい。

なんの変哲もない写真、とはいったもののこういう遊び心のあるものはより気分が上がるため必要だ。だってかわいいから。

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飼い犬・与太郎のおもちゃ3点セット

これはペットの与太郎が筋トレでプランクをしている筆者の顔の真下にお気に入りのおもちゃをひとつひとつ並べてくれたときの写真だ。遊んでほしくて、という見解もあるが、視覚的に楽しませてくれたのだ、と解釈している。その方がうれしいから。ほんのり善意と解釈できればなんだっていい。

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善意アルバムを見せてもらうことで生まれる善意

ここからは実際に善意アルバムをつくってみてもらって集まった写真の紹介と感想を紹介したい。

今回ご協力いただいたのは編集部の古賀さんと北海道に住む友人だ。

善意アルバム ~古賀さんの場合~

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自分から依頼したものの、タイトル「善意」の直球さに変な笑みがこぼれる

依頼して数日、過去3年分ほどの写真を見返していただき、集まったというアルバムである。モノという以外に統一性がないが、それこそがどんな善意が隠れているのか、と興味を駆り立ててくれる。

アルバムから2枚ピックアップしていただき、善意エピソードを語ってもらった。

11_ticket.jpg
偽装防止加工の主張がいささかはげしい。
古賀さんのコメント:
友人に本を貸したところ、「挟まってたよ~新宿リキッドルーム懐かしいね!」と言われた2000年のライブチケットです。

タイムカプセル的に出てきたのもうれしかったんですが、友人がスルーせずに「なつかしいね!」と言ってくれたのが嬉しかったです。

これこれ~! 道路に落ちている手袋を汚れないようにそっとフェンスとか花壇においてくれるような、さりげないあたたかさを感じる。ナイス善意!

見返りを求めない、その人から自然と出たであろう、ふとしたやさしさを感じられる非常に素敵な一枚である。

12_tray.jpg
生活感のある背景に加え、手に持って取っているあたりに不意な善意を誰かに伝えたかったんだろうな、とライブ感を感じる。
近所の小さな焼き肉店が閉店しまして、記念にいただきました。常連でもなかったのに恐縮したんですが、もう使わないし持って行ってくれるならありがたいということで、光栄があふれた1枚です。

行ったことないにもかかわらず、この一枚の写真から、そのお店の方のあたたかい人柄が容易に想像できる。また、単純な笑い話として捉えていないところに古賀さんの実直なやさしさも感じる。

善意の写真アルバムを作ってみての感想:
関係性の薄い人からの突然の善意の写真、というのがなかなかむつかしくて、親族や友人がらみの写真が多くなりました。
見知らぬ人からの善意がストックできていないことに気づかされました。
これからは何かあったら写真を撮って大事に眺めていきたいです。

こういったささやかな善意は日頃友人や家族からも受け取っているはずだと気づかされた。古賀さんはそれを感じとることが得意なのかもしれない。当たり前のものとしてスルーしていた身近な善意があったかもしれないなと反省した。

この企画をやっていて気づいたが、他人の善意アルバムをみることは善意の発信者以外にも、それに気づいた・見い出したアルバム作成者のやさしさにも触れることができる。

心のあたたまり具合に書きながらちょっと今泣きそうである。ほろり。

善意アルバム ~大学生の場合~

13_zenni3.jpg
引き続きタイトルは「善意」

続いては札幌在住の友人のアルバム。生まれ故郷である知床の自然を感じる。モノではなく空間に善意を見出すタイプのようだ。ピックアップしてくれた2枚を見ていこう。

14_statue.jpg
よくあるタイプの裸婦像。銅像って2秒で決めましたみたいなタイトルが多い気がする。

友人のコメント:
地元のプールに古くからある謎の像。この像には経年劣化こそ見られるがカモメが多い町なのにカモメのフン汚れが全く見当たらない。当時は何も思わなかったけど改めて見ると誰かが長い間小まめに掃除をしていることに気がついた。

どうやらこの若い女の像は彼のお母さんが子供のころからあるらしい。その頃からきっと綺麗にケアしてくれている人がいたのだろう。

自分が成長するとともに変化していく着眼点とそこに潜む誰かの善意。そんなジブリ作品の楽しみ方みたいな気づきをしている友人がもうやさしい。ナイス善意!!! 

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この写真は高校生の時に文化祭で流すムービーの素材を撮影してた時に撮った写真。この時は朝からムービーの撮影をしていたのだが正直全くと言っていいほど撮れ高がなく途方に暮れていた。彼(てんとう虫)はイライラしていた僕の心を癒してくれた。てんとう虫には何の思惑もないだろうが彼とは奇妙な友情を感じた。

人間以外に善意を反映するケースである。写真とエピソードから、うれしかったんだろうな、という気持ちが伝わってくる。黄色いテントウムシはめずらしく、幸運を運んでくれるともいわれているらしい。生き物や植物に何かの意味を担わせる、というのはこのパターンの善意写真とも通じるものを感じる。

アルバムを作ってみて:
今回アルバムに追加した写真は全て地元で撮影した写真だった。
やっぱり地元はいいなと思うと同時に、僕は札幌市民の善意を受け止められて無いんだなと反省する良い機会になった。
 
また最近写真を撮るときはインスタのストーリーで済ませてしまうためライブラリに写真が少なかった。感受性を豊かにして沢山の写真をライブラリに追加していきたい。

彼は20歳の大学生なのだが、インスタに載せてしまうから端末上に記録が残っていない、というのがなんとも若者らしい。

また古賀さんが身近な人からの写真中心になったように思い入れのある故郷からの写真が多いところが興味深い。好きな人のいいところがたくさん目に付くのと一緒だ。札幌市民の善意は是非少しずつ見出していってほしい。

2名の他に、何人か他の友人からも善意写真を提供してもらったが、各エピソードを聞くたびにほっこりさせられた。

そして不思議とそれに気づくその友人たちが愛しいという気持ちになる。これを突き詰めたら筆者はもたいまさこみたいな笑顔ですべての人類を包み込むマザーアース的な愛をもって生きていけるな、という確信を持った。


善意アルバムの作成=世界平和

善意アルバムを作ることのメリットはもちろん、「気分が落ち込んでいるときに見返すと元気をもらえること」だ。あと単純に楽しい。しかし最大のメリット、それは「世界平和の実現」の一助になることである。急に思想がつよい? まあ聞いてほしい。

こうした日常に潜む小さな善意を集めるということは、「他者の細やかな親切に気づく」という癖をつけることでもある。

そして親切心を知覚することで自分もまた人にやさしくしよう、と思えるのだ。人の善意アルバムをみていると、それの善意を知覚し、記録したその人のやさしさにも触れることもできる。

世界中のみんながこれをやったらきっと平和な世界が目指せるという筆者の野望である。是非あなたも画像フォルダを見返し、やさしさを再発見しよう。

レッツ善意アルバム!

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