舎人ライナーで最後のすかいらーくへ
すかいらーく最後のお店へは舎人ライナーで向かった。日暮里から30分弱、終点の「見沼代親水公園」という駅で降りる。初めての舎人ライナーにはしゃいでいると、林さんから「ゆりかもめと同じシステムらしいです」と教えてもらった。そう言われてみれば駅のつくりや車両の感じがゆりかもめとそっくりだ。2人で取材に行くと、こういう何気ない会話が出来る。地平線の時は1人で淋しかったに違いない。改めて反省した。
駅について改札口を出た。周辺地図があったのですかいらーくの場所を確認していると、見知らぬ男性が声をかけてきた。
「すかいらーくですか?」
年の頃はちょうど僕たちと同じくらい。この人もすかいらーくの最後を見届けに来たらしい。
「ええ、あなたもすかいらーくのファンですか?」
と聞くと、ファンというかすかいらーくにはお世話になったので、という答えが返ってきた。どういう意味だろう? 昔、アルバイトをしていたとか、そういうことだろうか。「お世話になった」内容を掘り下げようと思ったら、その男性はもう僕たちの前にはいなかった。急いで階段を下っている。
「お世話になったって、どういう意味だったんでしょうね」
「分からないですね」
僕と林さんはどんどん離れて行く男性の背中を見ながら首を傾げた。
お世話になった内容は分からなかったが、すかいらーくの場所はあの男性について行けば分かる。
「向こうから声かけてきたのに」
「不思議ですね」
腑に落ちない気持ちのまま、男性の後をついていく。
すると、僕たちの前に気になる建物が現れた。
プレハブ造りの建物に「アダルトDVD」というネオンが光っている。これはアレか? そういうアレか?
「やっぱり入るべきでしょうかね?」
「そうですね、すかいらーくも気になりますがこっちも…」
中はどんな事になっているのか。
とりあえず入ってみた。
中は想像以上に凄いことになっていた。アレなDVDの自動販売機がずらーっと並んでいる。豊富なラインナップを取り揃えていて、ジャンルも多岐にわたっている。しかも、店員さんと対面することなく、自分好みのアレをゲット出来るのだ。1000円位のものから5000円を超えるものまで。価格帯も様々である。
「僕たちが若い頃は本でしたけどね」
「今はDVDですわ」
自分たちの青春時代を思い出しつつ、ふと我に返った。
今日はアレなDVDの自動販売機を見に来た訳じゃない。すかいらーくだ。早く行かないとすかいらーくが終わってしまう。22時閉店の予定と聞いていて、見沼代親水公園駅に降り立ったのが20時半。急がないと。
慌てて林さんの方を見ると、
林さんは鞄から財布を取り出し、DVDを購入しようとしていた。
「林さん! ダメですって!」
と、慌てて止めた。僕の声で自分を取り戻した林さんが「あ、すかいらーく」と小さく言った。
2人で来て本当に良かった。僕も1人だったら確実に購入していたと思う。
気を取り直して再びすかいらーくを目指す。僕たちに声をかけて来た男性の姿はとっくに見えない。
2人ともほぼ無言で5分ほど歩いた。大通り沿いなので車通りはあるが人通りは少ない。本当にこの先にすかいらーくがあるのだろうか?
不安を覚えはじめた頃、前方にぼんやりと光るネオンが見えた。
すかいらーくだ。
あそこが最後のすかいらーくだ。