おまけ
ミョウバンをたくさん食べてはいけないということを知ったとき、私のプランは全て崩壊した。クリームソーダに入れるだけでなく、パンやらなにやらに練りこんで食べ比べでもしてやろうかと思っていたのだ。
しかし多量摂取すると本当にまずい物質のようで、クリームソーダを飲み干す前に気づいてよかったとも言える。書いてあることはきちんと読もうという話なのだ。そういった教訓をお届けするのが本稿の役割だったのだ。

高級なウニはミョウバンが入っていないからおいしいのだと聞く。確かに独特の苦味がなく、おいしい。
じゃあみんなミョウバンを入れなければいいじゃないかと思うが、そういう訳にもいかないらしい。
必要なのに愛されない物質、ミョウバンがかわいそうなので活躍するシーンを探していきたい。そう思っていた。
私はウニが苦手である。食べられないというほどではないのだが、ウニ独特の苦味や風味がどうしても好きになれないのだ。そのため、食べる機会があるたびに他の人に譲り渡すという慈善事業を生業としていた。
しかし先日事件が起きた。全く苦味のない、私でも大変おいしくいただけるウニと出会ってしまったのだ。
聞けば良いウニはミョウバンが入っていないからおいしいのだという。ミョウバンが入ることであの独特な風味が混じってしまうのだそうだ。
なんだよそのミョウバンってやつ。ウニに何の恨みがあるというんだ。
なぜミョウバンを入れるのかというと、ウニの身崩れを防ぐためらしい。ウニはほうっておくだけでも自壊してしまうらしく、おいしそうな形が保てなくなってしまうそうだ。それを防ぐためにミョウバンが使われるのだとか。
要するに人間の都合である。見た目を整えるためだけに使用され、あげく味が落ちると酷評されてしまうミョウバン。私がミョウバンだったら何を思うだろうか。
そんなミョウバンと対話すべく、とりあえずミョウバンも取り寄せてみることにした。
まず初めにミョウバンに伺いたいことは、果たして本当にミョウバンがウニの苦味の源なのかということである。
確かにインターネットにはそのように書いてある。だがこの情報社会において信じられるのは己のみという考え方もある。
自分の身でもって体験しなければそれは「経験」ではないのだ。いま私はとても大事なことを話しています。
調べてみたところ、ウニにミョウバンを添加する方法もインターネットで発見することができた。海水程度の塩水にミョウバンを適量溶かし、ウニを漬け込めばいいらしい。さっそくやってみよう。
本当にこれだけで味が変わったのだろうか。
口に含んだ瞬間、あの独特の苦味が溢れ出した。そのものズバリの苦味ではなかったのだがかなり方向性の近い味だ。すごい、本当にミョウバンの味だったんだ。
ミョウバンが苦味の元であることは確かめられた。それとともにやはりミョウバンがかわいそうだという気持ちも溢れ出した。なんとか酷評されずに活躍できる場面はないものか。
ミョウバンが活躍する場面を考えるにあたり、重要なのはウニを溶けづらくする力をうまく有効活用できるかということだろう。
ここで私はクリームソーダへの活用を提案したい。
溶けて悲しい食べ物といえばアイスクリームである。その中でもクリームソーダのアイスは非常に溶けやすい。メロンソーダにアイスクリームといえば一生眺めていたい組み合わせだが、それは一夏の思い出のように儚いものであると知られている。
そこでミョウバンである。ミョウバンの力を持ってすれば溶けにくいクリームソーダが作れるのではないだろうか。そしてもし、もし仮に美味しさを保つことができればミョウバンの汚名は完全に返上されるだろう。
ここにミョウバンクリームソーダ製作委員会が発足された。
さて、勢い込んで製作委員会を発足させたが、そもそもアイスクリームもミョウバンにつけると溶けづらくなるものだろうか。
まずはアイスが溶けづらくなること自体を確かめたい。要素を少しずつずらして細かく検証しておくことは後の分析を考慮すると非常に重要なのだ。今日は大事な話がたくさん出てきますね。
ウニが自壊してしまう理由の一つに油脂分の多さが挙げられるらしい。それがミョウバンによって防げるというのならば、同じく脂肪分が多いアイスクリームも溶けづらくなるはずだが、果たして。
実験成功である。実際にアイスが溶けづらくなるさまを確認することができた。それではミョウバンクリームソーダの作成に移りたい。
なんだか堅苦しい展開となってしまったが、特に難しいことをするわけではない。工程としてはメロンソーダを注いでミョウバンを溶かし、その上にアイスクリームを乗せるだけだ。
流石にインターネットの大海にもミョウバンクリームソーダの作り方は書いていなかったので、気持ち多めにミョウバンを入れておいた。
どうせ500gも買ってしまったのだ、豪勢にいこう。
出来たぞ。溶けづらく、普段よりも長く眺めていられるミョウバンクリームソーダの完成だ。私は今完全に全国の小学生の羨望の的である。
一通り眺めたところでいざ実食。
そう思っていたのだが、実はミョウバンクリームソーダを作る途中であることに気づいてしまった。
どうやらミョウバンにはアルミニウムが含まれており、あまり多量摂取してはいけないらしい。ミョウバンを様々な食材に添加して食べてみること自体があまりよくないことというわけだ。
つまりせっせと作ったミョウバンクリームソーダも飲んではいけないということになる。
そんな事があっていいのだろうか。
確かにミョウバンの活躍により溶けづらいクリームソーダは爆誕した。しかし食べられないとあっては全く意味がないのではないだろうか。これはミョウバンが活躍したと言えるのだろうか。
実験においては細かく検証していくことも大事だが、前提条件を抑えておくことも非常に重要である。今回のケースではそもそもミョウバンをそのまま摂取してよいのかどうか、事前に確かめておくべきだったのだ。
またウニの苦味に疑問を持たなければ、ミョウバンをたくさん食べてはいけないという知識を得ることはなかっただろう。これも自分の身でもって体験した「経験」である。
そういった教訓でひとつ、なんとかならないだろうか。
私はミョウバンの袋に太く印字された「食品添加物」の文字をじっと見つめた。
ミョウバンをたくさん食べてはいけないということを知ったとき、私のプランは全て崩壊した。クリームソーダに入れるだけでなく、パンやらなにやらに練りこんで食べ比べでもしてやろうかと思っていたのだ。
しかし多量摂取すると本当にまずい物質のようで、クリームソーダを飲み干す前に気づいてよかったとも言える。書いてあることはきちんと読もうという話なのだ。そういった教訓をお届けするのが本稿の役割だったのだ。
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