その日、冷蔵庫に入っていたビールを飲んだらいつもよりも苦かった
すごい体験だった。フィクションであればどれほどよかったのだろうか。酒を飲んで寝たら夢でお金を取られる夢を見た。起きたとき、涙がほほを伝うのだった。真面目に生きよう。ちゃんとした記事を書こうと思った。
チャーハンはもっと自由になるべきだと考えている。ただ、具材を細かく刻んで、炒めて丸く盛り付けただけのおいしいごはん、だけではなくもっとチャーハンのイメージから離れたチャーハンがあってもいいと思うのだ。イメージに抗う、チャーハンレジスタンスである。そういうチャーハンを紹介していきたいというよりチャーハンを食べたい。食べたいのだ。
あなたはチャーハンをイメージしたとき、どのようなものを頭に浮かべるだろうか。ナルトや卵、ときにはグリーンピースが入った白い炒めたご飯が一般的である。
もし、これが違う色だったらどうなるのか。その答えを求めてジャングルの奥地へと向かった。向かってない。高田馬場に行った。
雨の中、アスファルトを刻みながら歩いて7分ぐらいにあるラーメン屋。そこのチャーハンが変わっているらしい。らしいと書いたが、何回も行っている。うまいから。
あさり塩バターラーメンというのがあり、それもおいしい。だが、チャーハンである。気持ちを落ち着かせてみよう。
敵か味方か黒いチャーハン。食べたらしょうゆだ。今日はしょうゆ祭りだ。しょうゆの香ばしい味が口の中にひろがる。しょうゆの国に生まれてよかった。あと、黒い。
ラーメンとチャーハン。ラーメンをすすって、チャーハンを食べる。ときにはチャーハンを食べてからラーメンを食べる。生きている味がする。
チャーハンを食べたいと書いて最初がスープ。チャーハンについてくる中華風スープ。初めて行ったお店で、チャーハンを頼んで付いて来なかったときの悲しさと言ったらない。あると嬉しく、無いと寂しい。愛しい汁ものである。
ただ、スープが中華風だとダメなのか。いや、我々日本人にはあの汁があるじゃないか。味噌汁だ。
高田馬場にあるお店がそれを教えてくれた。さっきラーメンとチャーハンを食べたあとに行った。チャーハンのはしごだ。
仕事終わりの人たちがビールを片手に中華料理を食べている。ひとりスマホを見ながらの人もいれば、にぎやかなに複数人でさわぐ人もいるし、チャーハンに対してやるぞという気持ちの人もいる。
チャーハンを頼む。チャーハン。早く来いチャーハン。「こんなチャーハンは好きだ」という大喜利のお題を考えながら待つ。思いついたのは「とてもおいしい」だった。今日はダメだ。チャーハンを食べよう。
チャーハンはシンプルで誰が見てもチャーハンなチャーハンだ。ただ、一緒に運ばれてきたものがいつもの中華スープじゃない。誰だ!
中国と日本がテーブルにやってきた。このすごさをキン肉マンで伝えるとラーメンマンとキン肉マンがタッグを組んだと思ってもらえたら、きっとこの興奮がわかるはず。
自由だ。チャーハンが自由になった瞬間だった。中華スープと一緒だとおいしさが1.5倍になるが、みそ汁だと無限大な味がする。チャーハンのしつこさがみそ汁で包まれて、チャーハンのおいしさとみその風味が口の中でかけめぐる。みそ汁はおいしさとやさしさでできている。
チャーハンには卵が入っている。だが、正直な話、色味を加えるためだけに入っているようなチャーハンが多いと思う。もっと卵を、もっと卵をください。
中華屋にも洋食の風が強く吹き続けている。中華の火力で作るオムライスがまずかった歴史はなんてない。オムライスのライスはチキンライスが一般的だが、そこをチャーハンにしたとしたと考えたらゾクゾクしない?そんなゾクゾクを味わえる。
確実においしいものを頼みつつ、様子見での餃子。
皮がもっちり、具はニンニクのきいたひき肉たっぷりの餃子を食べながら待つ。一緒に食べようかなと考えながら食べていたら、食べてしまった。餃子がおいしいのが悪い。
薄焼き卵が乗っているが、あれ、オムライスには欠かせないケチャップがない。さてはご飯にしっかり味がついているタイプのオムライスだな。
一緒に運ばれてきたケチャップ。自分の家にあるやつと全く一緒のへこみ具合。セルフでかけるのだ。常識のある範囲で多めにかけたい。
実は中がチキンライスじゃないかと疑問を持っている人がいるかもしれない。なので割るとやった!チャーハンだ!!
でも、ただオムライスとチャーハンを一緒にしただけで、本当においしいの?と思う人もいるかもしれない。おいしいものとおいしいものが合わさったのだから100倍です。
そういうことです。
チャーハンには無限の可能性があることを理解したところで、無限の可能性と自由がつまったチャーハンがある。
排骨(パーコー)とは豚のあばら肉にころもをつけて揚げた料理のこと。そこにカレー、しかもご飯がチャーハン。全力投球だ。
トッピングで400円を払えばほとんどのメニューにパーコーをつけられるそうだ。自分の人生にも排骨をトッピングしたい。
レバーを堪能していたらやってきた。これがメニューにあったチャーハンだ。一回お風呂っにゆっくり入って気持ちを落ち着かせてからみよう。びっくりするから。
全部茶色。カレーと揚げた豚肉、チャーハン。ロボットアニメなら3体が合体して最強のロボになる。これは最強ロボのチャーハンです。
チャーハンとカレー。ケンカしちゃうんじゃないかと思ったが、少し辛めなスパイシーカレーがバッと来たあと、チャーハンのおいしさがやってくる。チャーハンだけだと味が少し薄めだと思ったが、カレーと食べると1000%です。
肉汁があふれるパーコーもばつぐんにうまい。カツカレーみたいなものだから当然だが、豚肉のジューシーさとカレーを食べると、目が覚める。あまりのうまさに。おはようございます。
起きて行ったのは荻窪。荻窪はチャーハン激戦区らしく、かなりチャーハンを出すお店が多い。その中でも行きたいお店が中華徳大というお店。
チャーハンの具をもっと食べたいと思ったことはないだろうか。それをこのお店が叶えてくれる。エビでチャーハンが見えない。
しかも、らんらんトッピングという、たまごがこれでもか乗ったものがあるらしい。それを食べたい。よっしゃー食べるぞと思った入り口を見て、肩を落とした。
気を取り直して、あんかけチャーハンを食べたい。そう思って行ったのは強者どもが集う梁山泊である。水滸伝だ。
行ったときに並んでいた。スペースマウンテンぐらいワクワクするぜ。
メニューを見るとピータンがあった。ピータンがあったら頼めと祖母が言っていたので頼んんだ。言ってない。本当は好きだから。ちなみに祖母は梅干しに砂糖をつけて食べていたし、味の素をめちゃくちゃかける人だった。
そして、やってきた肉あんかけチャーハン。はじめて見たが、お前本当にチャーハンかとたずねたくなる見た目をしている。でも、大学デビューや高校デビュー、夏休み明けに急に変わったクラスメイトみたいな気持ちとチャーハンってやっぱり自由でいいなという初心の気持ちがある。
自由奔放に書いた。チャーハンを食べたかったのだ。チャーハンはどんな見た目でもおいしいねという記事を書こうとしていた。そう思って梁山泊をあとにした後、お店から離れた場所で事件が起こった。
長々と書いたがここまでがイントロである。ここからが本題だ。ここからは再現でお楽しみください。
道を歩いていたら後ろから肩を叩かれた。なんだ、素敵な出会いが待っているのか。そう思って振り向くと、ザ・ヤンキーみたいな人が立っていた。とても着くずしてらっしゃる。もうお尻が見ているのではと思うほどの腰パン。もう事件の香りしかしなかった。
どうかしたのかと思い見ていると、その人が口を開いた。
なんだこれは。昼寝をしたときから夢を見続けているのか、夢ならはやく覚めてほしい。彼は「おれ、写っちゃいけない人だから。早くお金をくれ」と言う。「いくらですか?」と聞いたら「3万円」と。
3万円。旅行に行ける値段だ。なんで、練馬で3万円も出さないと行けないのか。リムジンでも頼んだのか。
嫌だ。もう嫌だ。そう思いながら逃げた。雨が強く降り続けていたが、傘をたたみ、学生以来の全力疾走をした。
すごい体験だった。フィクションであればどれほどよかったのだろうか。酒を飲んで寝たら夢でお金を取られる夢を見た。起きたとき、涙がほほを伝うのだった。真面目に生きよう。ちゃんとした記事を書こうと思った。
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