特集 2020年10月13日

チャーハンは自由だ

チャーハンはもっと自由になるべきだと考えている。ただ、具材を細かく刻んで、炒めて丸く盛り付けただけのおいしいごはん、だけではなくもっとチャーハンのイメージから離れたチャーハンがあってもいいと思うのだ。イメージに抗う、チャーハンレジスタンスである。そういうチャーハンを紹介していきたいというよりチャーハンを食べたい。食べたいのだ。

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

前の記事:マイクスタンド芸を身につけるために必要な3つのこと


黒いチャーハンが濃くてうまい

あなたはチャーハンをイメージしたとき、どのようなものを頭に浮かべるだろうか。ナルトや卵、ときにはグリーンピースが入った白い炒めたご飯が一般的である。

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あなたがイメージしたチャーハンはこんなのではなかったでしょうか。

もし、これが違う色だったらどうなるのか。その答えを求めてジャングルの奥地へと向かった。向かってない。高田馬場に行った。

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高田馬場は早稲田大学に近いので駅前でいちゃいちゃしている人が多い印象がある。

雨の中、アスファルトを刻みながら歩いて7分ぐらいにあるラーメン屋。そこのチャーハンが変わっているらしい。らしいと書いたが、何回も行っている。うまいから。

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末廣ラーメン。滋養強壮と書いているので完全栄養食です。
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これはチャーハンでなくチャーシュー麺。3日分のチャーシューを食べることができる。

あさり塩バターラーメンというのがあり、それもおいしい。だが、チャーハンである。気持ちを落ち着かせてみよう。

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今夜は月見かしら。

敵か味方か黒いチャーハン。食べたらしょうゆだ。今日はしょうゆ祭りだ。しょうゆの香ばしい味が口の中にひろがる。しょうゆの国に生まれてよかった。あと、黒い。

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お腹が空いているとき、この画像でご飯が食べられるな。
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すごく満足をしています。

ラーメンとチャーハン。ラーメンをすすって、チャーハンを食べる。ときにはチャーハンを食べてからラーメンを食べる。生きている味がする。

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ここで言うことじゃないかもしれないが、ねぎも入れ放題(おかわりができる)

中華スープ問題に一石を投じる

チャーハンを食べたいと書いて最初がスープ。チャーハンについてくる中華風スープ。初めて行ったお店で、チャーハンを頼んで付いて来なかったときの悲しさと言ったらない。あると嬉しく、無いと寂しい。愛しい汁ものである。

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これがないとチャーハンを食べた気がしないときがある。

ただ、スープが中華風だとダメなのか。いや、我々日本人にはあの汁があるじゃないか。味噌汁だ。

高田馬場にあるお店がそれを教えてくれた。さっきラーメンとチャーハンを食べたあとに行った。チャーハンのはしごだ。

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町の中華料理屋のただずまい。
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メニュー表を見たらかなり本格的なメニューを出すお店だった。パスポートを持ってこなくても中国を感じられる。
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嬉しいセット。心温まるメニューである。

仕事終わりの人たちがビールを片手に中華料理を食べている。ひとりスマホを見ながらの人もいれば、にぎやかなに複数人でさわぐ人もいるし、チャーハンに対してやるぞという気持ちの人もいる。

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餃子を食べたかったがラーメンとチャーハンを食べたあとにチャーハンを食べてしかも餃子を食べる自分を想像したら怖くなってやめた。

チャーハンを頼む。チャーハン。早く来いチャーハン。「こんなチャーハンは好きだ」という大喜利のお題を考えながら待つ。思いついたのは「とてもおいしい」だった。今日はダメだ。チャーハンを食べよう。

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みんながイメージするチャーハンがやってきた。

チャーハンはシンプルで誰が見てもチャーハンなチャーハンだ。ただ、一緒に運ばれてきたものがいつもの中華スープじゃない。誰だ!

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みそ汁だ。
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チャーハンとみそ汁。夏休みのお昼ご飯か。

中国と日本がテーブルにやってきた。このすごさをキン肉マンで伝えるとラーメンマンとキン肉マンがタッグを組んだと思ってもらえたら、きっとこの興奮がわかるはず。

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チャーハンを食べて、
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みそ汁を飲む。

自由だ。チャーハンが自由になった瞬間だった。中華スープと一緒だとおいしさが1.5倍になるが、みそ汁だと無限大な味がする。チャーハンのしつこさがみそ汁で包まれて、チャーハンのおいしさとみその風味が口の中でかけめぐる。みそ汁はおいしさとやさしさでできている。

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家でもやろうと思った。

オムライスかそれともチャーハンか

チャーハンには卵が入っている。だが、正直な話、色味を加えるためだけに入っているようなチャーハンが多いと思う。もっと卵を、もっと卵をください。

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立川駅から歩いて7分。双葉食堂というお店。

中華屋にも洋食の風が強く吹き続けている。中華の火力で作るオムライスがまずかった歴史はなんてない。オムライスのライスはチキンライスが一般的だが、そこをチャーハンにしたとしたと考えたらゾクゾクしない?そんなゾクゾクを味わえる。

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1番チャーハン、2番カレー、3番オムライス、そして4番バッターオムチャーハン。満塁ホームランだ。

確実においしいものを頼みつつ、様子見での餃子。

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台所の明るさぐらいで餃子が照らされている。これも町中華の味。

皮がもっちり、具はニンニクのきいたひき肉たっぷりの餃子を食べながら待つ。一緒に食べようかなと考えながら食べていたら、食べてしまった。餃子がおいしいのが悪い。

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餃子が食べ終わったのと同時に
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やってきた。

薄焼き卵が乗っているが、あれ、オムライスには欠かせないケチャップがない。さてはご飯にしっかり味がついているタイプのオムライスだな。

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そう思っていたらケチャップが来た。家のやつじゃん。

一緒に運ばれてきたケチャップ。自分の家にあるやつと全く一緒のへこみ具合。セルフでかけるのだ。常識のある範囲で多めにかけたい。

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ケチャップをかけたら新しい時代が訪れた。

実は中がチキンライスじゃないかと疑問を持っている人がいるかもしれない。なので割るとやった!チャーハンだ!!

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私にはこれがダイヤモンドに見えるのです。

でも、ただオムライスとチャーハンを一緒にしただけで、本当においしいの?と思う人もいるかもしれない。おいしいものとおいしいものが合わさったのだから100倍です。

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そういうことです。

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あれもしたいこれもしたいチャーハン

チャーハンには無限の可能性があることを理解したところで、無限の可能性と自由がつまったチャーハンがある。

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錦糸町の生駒。
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そこで見つけた全人類の期待、排骨(パーコー)カレーチャーハン。

排骨(パーコー)とは豚のあばら肉にころもをつけて揚げた料理のこと。そこにカレー、しかもご飯がチャーハン。全力投球だ。

トッピングで400円を払えばほとんどのメニューにパーコーをつけられるそうだ。自分の人生にも排骨をトッピングしたい。

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先に純レバー炒めを頼んだ。純がついているのが魅力的。
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レバーが固くなりすぎず、柔らかくておいしい。焼鳥のレバーを父親の分まで食べて怒られたことがあるぐらい好きです。

レバーを堪能していたらやってきた。これがメニューにあったチャーハンだ。一回お風呂っにゆっくり入って気持ちを落ち着かせてからみよう。びっくりするから。

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見た瞬間「無敵だ」と思うぐらいの見た目。

全部茶色。カレーと揚げた豚肉、チャーハン。ロボットアニメなら3体が合体して最強のロボになる。これは最強ロボのチャーハンです。

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最強をいただきます。
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そりゃうまいさ。

チャーハンとカレー。ケンカしちゃうんじゃないかと思ったが、少し辛めなスパイシーカレーがバッと来たあと、チャーハンのおいしさがやってくる。チャーハンだけだと味が少し薄めだと思ったが、カレーと食べると1000%です。

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カレーとチャーハンが好きなので一緒に食べられてよかった。ココイチでも出してほしい。もしくは王将。
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そんで、このパーコーがうまい。
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熱くてうまい。熱うま。

肉汁があふれるパーコーもばつぐんにうまい。カツカレーみたいなものだから当然だが、豚肉のジューシーさとカレーを食べると、目が覚める。あまりのうまさに。おはようございます。

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この日、とても眠かったので食べたあと寝るために帰った。
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40分寝たからいくぞ!

ここから暗雲が立ち込める

起きて行ったのは荻窪。荻窪はチャーハン激戦区らしく、かなりチャーハンを出すお店が多い。その中でも行きたいお店が中華徳大というお店。

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チャーハンがおれを呼んでいるのできた。
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このチャーハンを食べたい。

チャーハンの具をもっと食べたいと思ったことはないだろうか。それをこのお店が叶えてくれる。エビでチャーハンが見えない。

しかも、らんらんトッピングという、たまごがこれでもか乗ったものがあるらしい。それを食べたい。よっしゃー食べるぞと思った入り口を見て、肩を落とした。

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臨時休業だった。

気を取り直して、あんかけチャーハンを食べたい。そう思って行ったのは強者どもが集う梁山泊である。水滸伝だ。

行ったときに並んでいた。スペースマウンテンぐらいワクワクするぜ。

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このあと、あんなことが起こるなんて知らなかったので期待しながら外で並んでいた。

メニューを見るとピータンがあった。ピータンがあったら頼めと祖母が言っていたので頼んんだ。言ってない。本当は好きだから。ちなみに祖母は梅干しに砂糖をつけて食べていたし、味の素をめちゃくちゃかける人だった。

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ピータン。
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ピータンを食べながら待つ。

そして、やってきた肉あんかけチャーハン。はじめて見たが、お前本当にチャーハンかとたずねたくなる見た目をしている。でも、大学デビューや高校デビュー、夏休み明けに急に変わったクラスメイトみたいな気持ちとチャーハンってやっぱり自由でいいなという初心の気持ちがある。

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肉があんかけてある。
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あんかけてるなー。

32歳、ヤンキーにお金を取られそうになる

自由奔放に書いた。チャーハンを食べたかったのだ。チャーハンはどんな見た目でもおいしいねという記事を書こうとしていた。そう思って梁山泊をあとにした後、お店から離れた場所で事件が起こった。

長々と書いたがここまでがイントロである。ここからが本題だ。ここからは再現でお楽しみください。

道を歩いていたら後ろから肩を叩かれた。なんだ、素敵な出会いが待っているのか。そう思って振り向くと、ザ・ヤンキーみたいな人が立っていた。とても着くずしてらっしゃる。もうお尻が見ているのではと思うほどの腰パン。もう事件の香りしかしなかった。

どうかしたのかと思い見ていると、その人が口を開いた。

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「さっきさ、お店の外観の写真撮ってたじゃない。それに俺写っているかもしれないからさ」(写真はイメージです。)
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「お金をくれよ」
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その瞬間、全部終わったと思った。

なんだこれは。昼寝をしたときから夢を見続けているのか、夢ならはやく覚めてほしい。彼は「おれ、写っちゃいけない人だから。早くお金をくれ」と言う。「いくらですか?」と聞いたら「3万円」と。

3万円。旅行に行ける値段だ。なんで、練馬で3万円も出さないと行けないのか。リムジンでも頼んだのか。

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悩む私の姿見た彼は笑っていたのでした。

嫌だ。もう嫌だ。そう思いながら逃げた。雨が強く降り続けていたが、傘をたたみ、学生以来の全力疾走をした。

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泣き顔で逃げる。
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強くなれ。

その日、冷蔵庫に入っていたビールを飲んだらいつもよりも苦かった

すごい体験だった。フィクションであればどれほどよかったのだろうか。酒を飲んで寝たら夢でお金を取られる夢を見た。起きたとき、涙がほほを伝うのだった。真面目に生きよう。ちゃんとした記事を書こうと思った。

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He is now crying and taking a selfie.(訳:彼は今、泣きながら自撮りをしています。)英語にしたのは精いっぱいの強がりです。
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