デジタルリマスター 2022年5月27日

満員電車早降り競走(デジタルリマスター)

ぎゅうぎゅう

通勤の満員電車が苦手だ。

目的の駅についても、ぎゅうぎゅうの車内では満足に進むこともできない。そうこうするうちに自分の直前で閉じてしまうドア。そして間にあわない会議。

平坦な100mをいかに早く走るかなんてことよりも、もっと切実で重要な運動能力がここにある。

満員電車早降り。それは、現代をサヴァイブするためのスキルなのだ。

2006年1月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

前の記事:自分をさかのぼる誕生日(デジタルリマスター)

> 個人サイト ツイッター(@mitsuchi)

競技内容説明

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というわけで、今回やろうとしている「満員電車早降り競走」。内容はこんな感じになる。

  • 上のように満員電車の状態を再現しておく。
  • 走者は、画面の右端から左端までをなるべく早く通り抜ける。
  • かかった時間を計測する。

ようするにおしくらまんじゅうの中を駆け抜けるのだ。

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降りますー!

なお、今回の撮影は「2006年のカレンダーを作る」の枕投げ企画に集まってくださった読者の方々にご協力を頂いた。

寒い中、枕投げ以上に意味の分からない企画につきあってくださったみなさま、本当にありがとうございます。

シミュレーション

「満員電車早降り」を実際にやってみたらどんな感じか。そのようすを、背の高い読者のKさんに協力していただいて再現してみた。

見やすいように、Kさんにはサンタの赤い帽子をかぶっていただいている。

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「いまから降りるぞ!」とガッツポーズ。
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「どいてください、大事な会議があるんです!」
ぎゅうぎゅうの車内をかきわける。
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おめでとう。無事降りられた。

何回かシミュレーションを繰り返し、ぎゅうぎゅう過ぎない密度、適度な距離をさぐりだした。想定するのは乗車率200%の山手線の車内。

次のページからはいよいよ競技開始です。

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競技条件

今回想定するのはラッシュ時の山手線。

混雑率は200%。「体が触れ合い、相当な圧迫感がある。しかし、週刊誌なら何とか読める。」(日本民営鉄道協会用語辞典より)という程度の混みぐあいということにしよう。

通過する距離は、E231系の車両幅にあわせて約3mと設定。

そしてタイムリミットは、電車が駅に到着してドアが開いている時間だ。山手線の場合、短いところでは15秒もないという。これを制限時間としよう。

 

競技開始

というわけでいよいよ競技開始。

通勤通学の歴戦の勇士たちがどのような降車パフォーマンスを発揮するか。否応にも期待が高まる。

選手NO.01: オン君

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トップバッターはオン君。

DPZライター土屋さんのお子さんだ。出場選手中最年少となる中学1年生ながら、電車通学は小学生のころからこなすというベテラン。身軽さをいかした好記録を期待したい。

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「行きます!」
体操選手のように右手を上げてスタート。
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直後、低い姿勢で車内を駆け抜ける。その低さはまるで深海をゆく潜水艦のようだ。オン君の降車パフォーマンスはその後「サブマリン走法」と評された。
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そしてゴール! 勢いあまって画面から出るオン君。右下で母親の土屋さんがしっかり見守っている点も見逃せない。
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会心の走りをみせ、不敵な笑みを浮かべる。目印のためにかぶってもらったサンタ帽は早々に脱げていたようだ。

トップバッターながら素晴らしい走りをみせてくれたオン君。タイムも8秒60と制限時間をクリアし、なかなかの好記録といえるだろう。続く選手たちに無言のプレッシャーがかかる。

選手NO.02: 三上さん

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枕投げのために千葉県からお越しくださった読者の三上さん。普段は車に乗っていて電車は不慣れだという。そのハンディをどのようにカバーするか。軽やかなステップを期待したい。

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「では、降ります。」
よし、ゆくのだ。ドアの閉まるその前に!
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車内でもなかなかのステップをみせる三上さん。女性と隣り合ったとき無意識に両手でつり革につかまる男性の習性により、通路に若干の余裕がうまれたのだ。
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そして見事ゴール。タイムは11秒55。素晴らしい記録といえるだろう。

期待を上回る走りを披露する選手陣に触発され、ぼくも一回走ってみたくなった。

タイムの計測を土屋さんのお知り合いの方にお願いし、中のようすを撮影しながら走り抜けてみることにする。

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ぼくもやってみた

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スタート地点

まず、これが出発地点からの見ため。

改めてみてもぎゅうぎゅうだ。とても人が通っていけるようには見えないけれど、しかしとにかく行くしかない。

3、2、1、スタート!

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中に入るとこう

なんとか入口をくぐってみた。

中に入ってみてもやはりアリの通る隙間もないように見える。まるで密林を拓くかのように、立っている方を両手で押し分けながら道なき道をすすまなければいけない。

まともに進むのはやはり難しいようだ。体を低くして、くぐるような姿勢をとってみた。

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腕の下にわずかにスキマが
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見上げるとこんなふう

つり革につかまっている設定の腕の下にある隙間を通って、なんとか進んでいく。

やっている最中は必死だったので気がついていなかったけれど、後で確認したら写真がなんだかすごいことになっていた。

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口とか
​​​​​​
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馬とか

なんで馬がいるんだ?

進んでいるのは山手線の車内の想定だったのに、いつのまにか競馬場の人ごみに来てしまったのだろうか。

まあとにかくそのくらい車内は混乱しているということだ。

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向こうが見えた!
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なんとかゴール

車内をかきわけかきわけ、なんとかゴールにたどり着いた。

タイムは14秒19。ちなみにこのタイムは上で写真を撮りつつ進んだのとは別に、本気でやりなおして計ったものだ。だいぶ遅い。

ただ、ぼくがスタートする際にみんなが「ちょっと締めるぞ」みたいなことを言っていたのが気になる。パチンコ台の釘の向きを調整するように、ぼくだけ厳しい設定になってたらやだぞ。

最優秀者の実技

ここで、最速記録を樹立した選手の競技内容をごらんいただこう。

選手NO.03: アッキーさん

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都心での通勤を8年ほどこなしているというアッキーさん。まさにトップアスリートといえるだろう。

ふだんの通勤での経験を生かしたその走りは、見るものを驚愕させるパフォーマンスだった。

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「ここで乗り換えないと新幹線に間に合わない!」 上げる右手にビジネスマンの気迫がこもる。スタート地点までの間に助走距離をとっているのはさすがだ。
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そしてスタートから一気に駆け抜ける。低姿勢を保っているため、目印のサンタ帽はまったく見えやしない。そしてまた馬だ。なんだこの車内。
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トップスピードを保ったままゴール! ふっとぶアッキーさん。そのまま反対側のホームの電車に乗り込む勢いだ。御茶ノ水駅での中央線快速→総武線への乗り換えの経験がここで生きる。

タイムは6秒07。冒頭のオン君の記録を2秒以上も縮める結果となった。JRも安心して停車時間を短縮できるだろう。

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みなさんのタイムも

最後に、競技に参加してくださったみなさんのようすとタイムを紹介しよう(以下の写真は縦にご覧ください。)

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syggさん。ふだん満員電車には乗らないという。
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苦戦しながらゴール。タイムは15秒70。残念ながらドアは閉まってしまいました。
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雨宮さん。ふだんはクルマ通勤だ。
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ものすごい勢いでゴールを駆け抜ける。6秒22。いつ電車通勤を始めても大丈夫です。
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ライター土屋さんの弟さん。ここでも登場。
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普段は自転車通勤という弟さん。タイムは8秒15。
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電車通勤暦10年のイキャラシさん
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最初うつろだった目が、ゴールして笑顔に。タイムは10秒15。

第一回満員電車早降り競走を終えて

当初の予想通り、ふだんから満員電車に乗りなれている人ほどよいタイムを出すという傾向があるようだった。

混雑した車内からいかに早く降りるか。それこそが平坦な戦場をぼくらが生き延びるためのスキルだということも確認することができた。その意味でも、たいへん有意義な開催だったといえるだろう。

降りる駅が近づいたらあらかじめドアに近づいておくなどというのは、アスリートのすることじゃありません。

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