第一回満員電車早降り競走を終えて
当初の予想通り、ふだんから満員電車に乗りなれている人ほどよいタイムを出すという傾向があるようだった。
混雑した車内からいかに早く降りるか。それこそが平坦な戦場をぼくらが生き延びるためのスキルだということも確認することができた。その意味でも、たいへん有意義な開催だったといえるだろう。
降りる駅が近づいたらあらかじめドアに近づいておくなどというのは、アスリートのすることじゃありません。
通勤の満員電車が苦手だ。
目的の駅についても、ぎゅうぎゅうの車内では満足に進むこともできない。そうこうするうちに自分の直前で閉じてしまうドア。そして間にあわない会議。
平坦な100mをいかに早く走るかなんてことよりも、もっと切実で重要な運動能力がここにある。
満員電車早降り。それは、現代をサヴァイブするためのスキルなのだ。
※2006年1月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
というわけで、今回やろうとしている「満員電車早降り競走」。内容はこんな感じになる。
ようするにおしくらまんじゅうの中を駆け抜けるのだ。
なお、今回の撮影は「2006年のカレンダーを作る」の枕投げ企画に集まってくださった読者の方々にご協力を頂いた。
寒い中、枕投げ以上に意味の分からない企画につきあってくださったみなさま、本当にありがとうございます。
「満員電車早降り」を実際にやってみたらどんな感じか。そのようすを、背の高い読者のKさんに協力していただいて再現してみた。
見やすいように、Kさんにはサンタの赤い帽子をかぶっていただいている。
何回かシミュレーションを繰り返し、ぎゅうぎゅう過ぎない密度、適度な距離をさぐりだした。想定するのは乗車率200%の山手線の車内。
次のページからはいよいよ競技開始です。
今回想定するのはラッシュ時の山手線。
混雑率は200%。「体が触れ合い、相当な圧迫感がある。しかし、週刊誌なら何とか読める。」(日本民営鉄道協会用語辞典より)という程度の混みぐあいということにしよう。
通過する距離は、E231系の車両幅にあわせて約3mと設定。
そしてタイムリミットは、電車が駅に到着してドアが開いている時間だ。山手線の場合、短いところでは15秒もないという。これを制限時間としよう。
というわけでいよいよ競技開始。
通勤通学の歴戦の勇士たちがどのような降車パフォーマンスを発揮するか。否応にも期待が高まる。
選手NO.01: オン君 トップバッターはオン君。 DPZライター土屋さんのお子さんだ。出場選手中最年少となる中学1年生ながら、電車通学は小学生のころからこなすというベテラン。身軽さをいかした好記録を期待したい。 |
トップバッターながら素晴らしい走りをみせてくれたオン君。タイムも8秒60と制限時間をクリアし、なかなかの好記録といえるだろう。続く選手たちに無言のプレッシャーがかかる。
選手NO.02: 三上さん 枕投げのために千葉県からお越しくださった読者の三上さん。普段は車に乗っていて電車は不慣れだという。そのハンディをどのようにカバーするか。軽やかなステップを期待したい。 |
期待を上回る走りを披露する選手陣に触発され、ぼくも一回走ってみたくなった。
タイムの計測を土屋さんのお知り合いの方にお願いし、中のようすを撮影しながら走り抜けてみることにする。
まず、これが出発地点からの見ため。
改めてみてもぎゅうぎゅうだ。とても人が通っていけるようには見えないけれど、しかしとにかく行くしかない。
3、2、1、スタート!
なんとか入口をくぐってみた。
中に入ってみてもやはりアリの通る隙間もないように見える。まるで密林を拓くかのように、立っている方を両手で押し分けながら道なき道をすすまなければいけない。
まともに進むのはやはり難しいようだ。体を低くして、くぐるような姿勢をとってみた。
つり革につかまっている設定の腕の下にある隙間を通って、なんとか進んでいく。
やっている最中は必死だったので気がついていなかったけれど、後で確認したら写真がなんだかすごいことになっていた。
なんで馬がいるんだ?
進んでいるのは山手線の車内の想定だったのに、いつのまにか競馬場の人ごみに来てしまったのだろうか。
まあとにかくそのくらい車内は混乱しているということだ。
車内をかきわけかきわけ、なんとかゴールにたどり着いた。
タイムは14秒19。ちなみにこのタイムは上で写真を撮りつつ進んだのとは別に、本気でやりなおして計ったものだ。だいぶ遅い。
ただ、ぼくがスタートする際にみんなが「ちょっと締めるぞ」みたいなことを言っていたのが気になる。パチンコ台の釘の向きを調整するように、ぼくだけ厳しい設定になってたらやだぞ。
ここで、最速記録を樹立した選手の競技内容をごらんいただこう。
選手NO.03: アッキーさん 都心での通勤を8年ほどこなしているというアッキーさん。まさにトップアスリートといえるだろう。 ふだんの通勤での経験を生かしたその走りは、見るものを驚愕させるパフォーマンスだった。 |
タイムは6秒07。冒頭のオン君の記録を2秒以上も縮める結果となった。JRも安心して停車時間を短縮できるだろう。
最後に、競技に参加してくださったみなさんのようすとタイムを紹介しよう(以下の写真は縦にご覧ください。)
当初の予想通り、ふだんから満員電車に乗りなれている人ほどよいタイムを出すという傾向があるようだった。
混雑した車内からいかに早く降りるか。それこそが平坦な戦場をぼくらが生き延びるためのスキルだということも確認することができた。その意味でも、たいへん有意義な開催だったといえるだろう。
降りる駅が近づいたらあらかじめドアに近づいておくなどというのは、アスリートのすることじゃありません。
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