特集 2019年9月18日

ガスボンベに心が動く

いい場所にはいいボンベ

2016年の電力に続き、2017年4月からは都市ガスの小売も自由化、エネルギー業界変革期まっただ中の我が国において、私は何を言うべきなのだろう。

それは「ガスボンベってなんかいいですよね」という人類にとって普遍的な価値ではないだろうか。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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ガスボンベという景観がありますね

家の軒下や建物の壁面で地蔵や道祖神のように突っ立っているプロパンガスボンベ。

当然あの中にはガスが入っていて、風呂や料理、暖房などに使う燃料が屋内へと供給されているわけだが、あの飾り気のないネズミ色で少し物々しい雰囲気を醸し出して鎮座している様がなんか良くて以前から写真で記録していた。
 

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ずっと昔からそこにあったような感じがいい。

現在プロパンガスを利用しているのは日本全体のおよそ半数にあたる約2400万世帯、これだけの家庭にガスを届けるには効率的な入れ物が必要なわけで、あんな感じで突っ立っているものの、飲料を入れるアルミ缶などのように資源を必要な人に分配するための立派なインフラストラクチャーなのだと思うと地蔵菩薩にも負けないありがたみが湧いてくる。
 

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ありがたや、インフラストラクチャー様。

あのボンベの中のガスについてもうちょっとだけ言うと、正式にはLPガス(Liquefied Petroleum Gas 液化石油ガス)という石油ガスを圧縮して液化させたもので,家庭用のLPガスはプロパンやブタンが成分となっている。圧力を加えたり冷やしたりすると液体になって気体の250分の1ほどの体積に圧縮され、その液体をボンベに入れて流通させている。
 

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たくさんつながっているのもいい。
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ギャルとツーショット。

日本LPガス協会の統計によると、年間約1500万トンの需要のうち約1000万トンを海外からの輸入に頼っており、カタール、UAE、クゥェート、サウジアラビアなど中東の産油国とシェール随伴LPガスを擁するアメリカからの輸入がほぼ半々で占められている。つまりあの家の軒下のボンベの中はサウジアラビアやらアメリカやらで満たされているのだ。
 

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それが言いたくてこんなにうざく語った。

キャップが天空の城

ガスボンベには上端にバルブを保護するためのキャップをかぶせているものがあって、これがあると途端にキャラクター感が濃くなる。

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ロボットだ!
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なんか物哀しい......。

天空に浮かぶ城で滅びた高度文明の残滓として、自然と同化するように朽ち果てようとしているロボットのような悲哀をたたえている。
 

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主人のいない庭園で命令を待っていて悲哀。
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雪景色でさらに悲哀。
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よく見るやつとは異なるタイプ、戦闘用だろうか。サビもあいまってなんか悲哀。
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南国沖縄でも悲哀なものは悲哀。
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セパレートしていても......。
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このへんを見るとあのBGMが流れて悲哀。

園芸と絡むと何か箱庭ラピュタ的な(結局言ってんじゃん)雰囲気を想起して悲哀感が増す。

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こちらに手を差し伸べてきそうな感じで悲哀。

なんかだんだん文明が終焉しそうな感じになってきてしまった。

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あぶいボンベ景

1953年に家庭用プロパンガス が導入されて以来、幾多の事故やトラブルを経ながら、ガスボンベ周りや危険監視システムにいたるまで安全性を改善させてきた。おかげで安全性はかなり確固たるものとなったが、見た目が見た目だけに「なんかあぶい!(危ない)」と感じてしまうシチュエーションがある。置き位置がやけにギリギリだったりするものだ。あぶいコールと一緒に見ていこう。
 

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つまづいててあぶい!
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そばでバッキバキに割れててあぶい!
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道にせり出しててあぶい!
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尾行してるみたいであぶい!(なにが)
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落ちそうであぶい!
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なんかあぶい!
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さびさびであぶい!
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不発弾みたいであぶい!

最後のはよく見たらホースがつながっていなかったのだが、散歩していていきなりこの完全無欠なサビに出くわした時は思わず後ずさりした。

おさまると安心

自由奔放なボンベを見て肝を冷やしている身からすると、きちんと収まっている品行方正なボンベを見た時の安心感ってあるよなあと思う。ほめていこう。

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いいねえ。
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きっちり入ってるねえ。
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いっぱいぶっこんでるねえ。
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同居してるねえ。


 

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フィットしてるねえ。

坂道の途中にあったおさまりが最高だった。
 

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もはや巣だねえ。

人がボンベを設置したのではなく、磨崖仏でも作ろうと掘りこんだスペースにいつしか野良ボンベ達が集まって冬を越していたのに違いない。
 

 

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囲って安心

きっちりおさまっていなくても囲ってあると安心感が染み出す。
 

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機動隊の盾みたいで安心。
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通気性もあって安心。
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パーマかけてるみたいで安心。
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バリケードで安心。
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拘束具みたいで安心
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チラリズムで安心。

雪国のボンベは庇に守られて安心感がある。

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かわいい庇で安心。
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立ち飲みできそうな板で安心。
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傘子地蔵みたいで安心。
 

北国は北国でも北海道の道東方面は開けっぴろげなものが多かった。(個人の感想です)
 

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降雪量が比較的少ないからかな。
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灯油タンクと燃料コンビで出現。

草木に包まれて安心

囲いや壁など物理的なガードではなく、緑に囲まれてハードな感じを和らげメンタル面に安心感をもたらす、プロパン園芸といった趣き。
 

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隙間から顔を出す草が素朴で癒される。
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生い茂る緑の勢いに癒される。
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咲きほこっていて癒される。
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ツルがレイみたいになってて癒される。
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レイどころか完全に植物が支配していて癒される。

ただのガス容器ではない

どこかノスタルジックな郷愁に浸ったり、むき出しの姿にはらはらしたり、天空の城に見立てて哀しみで満たされたり、プロパンガスボンベは家庭のコンロや湯沸かし器だけでなく、私の心とつながっているのだ。
 

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肩まで浸かってラブラブ。

 

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