特集 2025年5月1日

1968年発売の初代人生ゲームで遊ぼう

強制的に結婚し、馬を買わされる

せっかくの人生ゲームである。実際に遊ばないともったいない。そこで今回、お声がけしたのがこの方。

gameoflife_115.jpg
米光一成さんである。

『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』を手がけ、昨年は『あいうえバトル』が日本ボードゲーム大賞2024投票部門大賞やオモコロチャンネルボードゲームアワード最優秀賞を受賞。日本を代表するゲームクリエーターのひとりである。

初代の人生ゲーム買ったんですけど、と連絡したら「わーやりたーい」とお返事が来てこの日を迎えた。

gameoflife_116.jpg
「米光ゲーム」の事務所におじゃまして、米光さんのパートナーであるアライさん(右)と、友人のまつもとさん(左)とお酒を飲みつつ4人でプレイ。
gameoflife_117.jpg
スタート地点のすぐそばにゴール(億万長者の土地)が配置されているのを見て、「ドラクエだねぇ」と米光さん。ラダトーム城と竜王の城ですね。
gameoflife_118.jpg
米光さん「こういう山もさ、ゲームの内容と直接関係ないのにちゃんと作っているのえらいよね」

スタート時の資金は2,000ドル。プレイヤーに配るのはもちろん「あのお札」である。実はこの紙幣、初代から50年以上変わっていないらしい。

gameoflife_119.jpg
500ドルから100,000ドルまであり、借金するときに使う約束手形(右端)も当時からある。500ドル紙幣は現在廃止されているとのこと。

これに加えて、「自動車保険」「火災保険」「生命保険」「株券」がある。ゲーム途中で加入していてれば、自動車が大破しても家が火事になってもノーダメージ。株券については後ほど。

gameoflife_120.jpg
券面がいちいちかっこいい。

スタート地点で自動車保険に加入するかを決め、何名かが「大丈夫っしょ」と、まさかの任意保険未加入で走り出した。免許更新のとき見せられるビデオの映像が頭をよぎる。

ほどなく直面するのが「ビジネスコース」と「大学コース」の進路選択。車に乗るし、進路選択も迫られるし、この人生は18歳スタートなのだろう。

gameoflife_121.jpg
さっき象をつかまえたところで進路を選択。早く社会に出て人生をリードするか、多少回り道して大学を出て高給取りになるかを選ぶ。

その後、最初の給料日を迎え、「ウラニウム鉱山を発見」という新社会人には少々持て余すラッキーなどを超えると、「ストップ!」と書かれたマスで我々はいきなり結婚する。

gameoflife_122.jpg
教会の模型の前に配置された「結婚」マス。周囲からご祝儀を強要。
gameoflife_123.jpg
その8マスあと、さっそく義父からお金をせびられる。やめてよ。

ちなみに、最新の8代目人生ゲーム(2023年)では、結婚するかしないかがルーレット次第となり、人物のピンも6色から選べるそう。ちゃんとアップデートされてるんですね。

さて、結婚のしばらくあと、プレイヤーを待ち構えるのがもうひとつの強制イベントである。

gameoflife_124.jpg
馬を買わされるのだ。

15,000ドルという、序盤ではそこそこの出費で馬を買わないといけない。

これはこのあと「競馬で儲ける」とかあるの!? とワクワクしたら、そういう伏線回収はまったくない。シンプルにお金を払うだけ。全員同じ値段で買うから資産に差も付かない。

どういうことなんだと思ったら、どうやらこの人生は実家が牧場らしい。後半に「牧場のあとつぎになる」と「牧場を売る」があるし。そういえばさっき、羊が隣の家のランを食ってたな……!

gameoflife_125.jpg
あとつぎになると「102,000ドル」という半端な金額をもらう。

一方で、どこにも「牧場を買う」はない。親が牧場を持っていることが前提で、馬を買ったり、後継ぎになったりする。そういうことが普通にあり、「あるある」として共通認識になっていたのが、このころのアメリカなのかもしれない。

gameoflife_126.jpg
さらにサラブレッドを2頭買うマスもある。馬大好き。
いったん広告です

億万長者になるか、大立者になるか

そうそう、株の話をしていなかった。株券は給料日などで買え、持っていると「かけ」をすることができる。

gameoflife_127.jpg
「あなたの考えでえらぶ」。うながされる自己責任。

大丈夫なのか、今いろいろ相場は大変だが、と心配になるがこれは60年代の話である。それはそれで日米貿易摩擦があるが一旦忘れよう。

「かけ」をすると決めたら、プレイヤーはルーレットを回す。1・2・3が出たら市況ダウンで所持金マイナス。4・5・6が出たらそのまま。7・8・9・10が出たら好況で所持金プラス。単純な仕組みである。なんなら好況になる望みがちょっと高い。

ちなみに好況の場合、大学コース出身は50,000ドル、ビジネスコース出身は100,000ドルもらえる。早く社会に出ると相場観が身に付くということだろうか。

gameoflife_143.jpg
他にも賭けをするマスがあり、1から10の数字が書かれたボード上にお金を賭けてルーレットを回す。でも僕が買った人生ゲームは、ボードが5のところで折れてなくなっていた。

さらに、持っている株券を200,000ドルで売るマスもあり、株は資産を築く重要なポイントになっている。これをうまく運用したアライさんが大儲け。2位以下に大差をつけて、そのままゴールしてしまった。 

gameoflife_128.jpg
ちょっと! 70万ドルもあるじゃないですか。サラブレッドが700頭買えますよ!
gameoflife_129.jpg
一方そのころ米光さんは、エベレスト登頂に成功したり、博物館にミイラのコレクションを寄贈したり、ジャングルに迷い込んで救助されたりしており、みんなから「冒険家」と呼ばれていた。

勝敗は資産の総額で決まる。残りのマスをざっと見渡しても逆転は不可能。このまま俺たちは人生の敗者になるしかないのか。

いやしかし、この人生ゲームには逆転のチャンスが残されている。運命を握るのは「決算日」だ。

gameoflife_130.jpg
ストップ!決算日。

決算日では全員が止まり、約束手形などを精算したあと、2つの選択を迫られる。

①直進して「億万長者の土地」を目指し、資産総額で勝負を決める
②「実業界の大立者(おおだてもの)」になり、一発逆転を目指す

※大立者:芝居の一座で中心となる優れた俳優。または社会を代表する実力者のこと。

資産で勝ち目がないとわかったら、大立者になるしかない。プレイヤーは数字をひとつ宣言し、ルーレットを回す。

見事その数字が的中したら大立者=人生の勝者となり、ゲームは即終了!

ただし、ルーレットを外したら全財産を没収され、「貧乏農場」で余生を送ることになる。

gameoflife_131.jpg
貧乏農場ってすごい名前だな、と思ったら原文も「Poor Farm」でそのまま。かつてアメリカに存在した生活困窮者向けの公営農場(救貧農場)のことで、「どん底に落ちる」といった意味でも使われるみたい。近年の人生ゲームでは「開拓地」などの表現になっている。
gameoflife_132.jpg
このままパッとしない人生で終わるのはいやだ……! 大立者に、俺はなる! えーい!
gameoflife_133.jpg
なれませんでした。
gameoflife_134.jpg
まつもとさんも勝負に負け……
gameoflife_135.jpg
最後の望みである米光さんも……
gameoflife_136.jpg
最終的に貧乏農場にジョイン。アライさん爆笑。
gameoflife_137.jpg
億万長者とゆかいな貧乏農場、という形で人生は幕を閉じた。

⏩ 次ページに続きます

<もどる ▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

記事が面白かったら、ぜひライターに感想をお送りください

デイリーポータルZ 感想・応援フォーム

katteyokatta_20250314.jpg

> デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」が届きます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ