強制的に結婚し、馬を買わされる
せっかくの人生ゲームである。実際に遊ばないともったいない。そこで今回、お声がけしたのがこの方。
『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』を手がけ、昨年は『あいうえバトル』が日本ボードゲーム大賞2024投票部門大賞やオモコロチャンネルボードゲームアワード最優秀賞を受賞。日本を代表するゲームクリエーターのひとりである。
初代の人生ゲーム買ったんですけど、と連絡したら「わーやりたーい」とお返事が来てこの日を迎えた。
スタート時の資金は2,000ドル。プレイヤーに配るのはもちろん「あのお札」である。実はこの紙幣、初代から50年以上変わっていないらしい。
これに加えて、「自動車保険」「火災保険」「生命保険」「株券」がある。ゲーム途中で加入していてれば、自動車が大破しても家が火事になってもノーダメージ。株券については後ほど。
スタート地点で自動車保険に加入するかを決め、何名かが「大丈夫っしょ」と、まさかの任意保険未加入で走り出した。免許更新のとき見せられるビデオの映像が頭をよぎる。
ほどなく直面するのが「ビジネスコース」と「大学コース」の進路選択。車に乗るし、進路選択も迫られるし、この人生は18歳スタートなのだろう。
その後、最初の給料日を迎え、「ウラニウム鉱山を発見」という新社会人には少々持て余すラッキーなどを超えると、「ストップ!」と書かれたマスで我々はいきなり結婚する。
ちなみに、最新の8代目人生ゲーム(2023年)では、結婚するかしないかがルーレット次第となり、人物のピンも6色から選べるそう。ちゃんとアップデートされてるんですね。
さて、結婚のしばらくあと、プレイヤーを待ち構えるのがもうひとつの強制イベントである。
15,000ドルという、序盤ではそこそこの出費で馬を買わないといけない。
これはこのあと「競馬で儲ける」とかあるの!? とワクワクしたら、そういう伏線回収はまったくない。シンプルにお金を払うだけ。全員同じ値段で買うから資産に差も付かない。
どういうことなんだと思ったら、どうやらこの人生は実家が牧場らしい。後半に「牧場のあとつぎになる」と「牧場を売る」があるし。そういえばさっき、羊が隣の家のランを食ってたな……!
一方で、どこにも「牧場を買う」はない。親が牧場を持っていることが前提で、馬を買ったり、後継ぎになったりする。そういうことが普通にあり、「あるある」として共通認識になっていたのが、このころのアメリカなのかもしれない。
億万長者になるか、大立者になるか
そうそう、株の話をしていなかった。株券は給料日などで買え、持っていると「かけ」をすることができる。
大丈夫なのか、今いろいろ相場は大変だが、と心配になるがこれは60年代の話である。それはそれで日米貿易摩擦があるが一旦忘れよう。
「かけ」をすると決めたら、プレイヤーはルーレットを回す。1・2・3が出たら市況ダウンで所持金マイナス。4・5・6が出たらそのまま。7・8・9・10が出たら好況で所持金プラス。単純な仕組みである。なんなら好況になる望みがちょっと高い。
ちなみに好況の場合、大学コース出身は50,000ドル、ビジネスコース出身は100,000ドルもらえる。早く社会に出ると相場観が身に付くということだろうか。
さらに、持っている株券を200,000ドルで売るマスもあり、株は資産を築く重要なポイントになっている。これをうまく運用したアライさんが大儲け。2位以下に大差をつけて、そのままゴールしてしまった。
勝敗は資産の総額で決まる。残りのマスをざっと見渡しても逆転は不可能。このまま俺たちは人生の敗者になるしかないのか。
いやしかし、この人生ゲームには逆転のチャンスが残されている。運命を握るのは「決算日」だ。
決算日では全員が止まり、約束手形などを精算したあと、2つの選択を迫られる。
※大立者:芝居の一座で中心となる優れた俳優。または社会を代表する実力者のこと。
資産で勝ち目がないとわかったら、大立者になるしかない。プレイヤーは数字をひとつ宣言し、ルーレットを回す。
見事その数字が的中したら大立者=人生の勝者となり、ゲームは即終了!
ただし、ルーレットを外したら全財産を没収され、「貧乏農場」で余生を送ることになる。

