これからも集めたい!
古い本は情報が古い、という考え方もあるけれど、当時の情報や価値観など、当時の人が書いているのである意味鮮度のある情報を知ることができるのが素晴らしい点だ。そして、シリーズは集める度に満足感が得られる。もちろん問題はある。本棚は有限なのだ。本は無限にあるのに。世の中、難しいものではあるが、今後も集めたい。集めたいのです。
シリーズというものがある。作品群みたいなことで、テレビドラマや映画にもシリーズはあるし、漫画や小説にもシリーズはある。そして、文庫本にもシリーズがあるのだ。1人の著者が書くのではなく、いろいろな著者が様々なジャンルのことを書く。
たとえば新潮社文庫を思い浮かべてほしい。数えられないくらい出ていると思う。そういう感じでいろいろな文庫本のシリーズがあるのだ。今回はちょっと古い文庫本を紹介したいと思う。
本が売れなくなった、と聞くけれど、今も昔もたくさんの本が出版されている。今の本は同時に電子書籍が発売されていたりもするけれど、昔の本となると紙の一択。紙がいいと言うつもりはないけれど、紙の本には紙の本のよさがある。
紙の本のよさは、家にあると賢く見える気がすること。そして、コレクション性に満足することだ。それが文庫本のシリーズだったりする。今も続いているものもあれば、終わったシリーズもある。それを揃えることが喜びにつながる。
私は保育社のカラーブックスを集めている。なかなかに素晴らしいシリーズだ。こちらはそこそこの数を揃えることができた。ただ今回は集めてはいるけれど、まだそんなには集まっていない、ただ愛おしく感じている文庫本シリーズを紹介したい。
文庫本シリーズを紹介すると散々書いたけれど、まず紹介したいのは新書。平凡社から出版されていた「平凡社カラー新書」というシリーズだ。私の知る限りでは1974年の「仏像 祈りの美」が記念すべき1巻目だと思う。
このシリーズは様々なジャンルが出ている。「日本童謡集」もあれば、「砂糖」というシンプルなもの、「魔と呪術」という暗いエネルギーを感じるもの、「コンピュータなんかこわくない」という当時のパソコン事情がわかるものまで、本当に様々だ。
このシリーズは先に書いた保育社のカラーブックスに近いラインナップだ。いい意味でなんでもありという感じ。そして、名前からもわかるように、カラーページがあることが特徴だ。カラーページがまとめて数ページあり、その説明が白黒の文章で別のページにある。
カラーページよりも文章ページが多いのだけれど、まとめてカラーページが載っているので、写真集のようにも感じられる。100巻を超えるほど出版されているが私の手元にあるのは20冊ほど。古本屋で見かける率としては、散歩しているボルゾイ(細い犬)を見る、くらいの感じだ。
私の知る限りでの平凡社カラー新書の最後は140巻目の「ルアー・フィッシング(1981年)」。海、湖、川での釣りが紹介され、世界のルアーの写真がたらふく載っている。ここに載っているルアーは今でもオールドルアーとして人気なものもある。
香りがいいのだ。古い本は。特にカラーページの紙より文章ページの紙質の方が、当時の匂いを溜め込んでいる気がして、平凡社カラー新書は昔の匂いをお腹いっぱいに溜め込んでいる。それが紙の本の良さであると思う。
このシリーズの面白い点の一つは表4(裏表紙)に著者の顔が載っていることだ。表紙と似たようなデザインで内容と著者の顔写真が載っているのだ。全てではないけれど、そういうことが多い。著者の顔がこんなにキチンと載っているのは、ビジネス本以外では珍しいのではないだろうか。
次は文庫だ。日本文教出版株式会社が出版している「岡山文庫」というシリーズだ。ジャンルのくくりはないけれど、地域で縛っているシリーズ。第1巻は1964年の「岡山の植物」となる。今もシリーズは続いており、これを書いている時点の最新刊は324巻「江川三郎八の建築」だ。
私が持っている一番古いものは上記の「岡山の民家」。他にも観光を扱ったものもあれば、信仰を扱ったもの、生き物を扱ったものなど、岡山にまつわる様々なジャンルがある。岡山の図書館で全巻並んでいるのを見たことがある。
岡山のことを知りたいと思えば、ガイドブックより詳しく知ることができる。なんせ、現時点で324巻もあるから、詳しくないはずがない。基本的にはカラーページはないけれど、写真が豊富で、図なども入り、詳しく岡山について知ることができる。
私はあまり岡山との接点がない。住んだことはないし、観光で訪れたのも10回程度。しかし、買っちゃうし、読んじゃう。岡山以外でこのシリーズを見ることは稀で、古本屋で見かけたこともほぼない。岡山に行った時はここぞとばかりに古いものを探す。新しいものはアマゾンなどで普通に買える。
子供の頃、ベネッセのチャレンジの勧誘漫画的なやつを届くと必ず読んでいたので、岡山を心のどこかで愛しているのかもしれない(ベネッセの本社は岡山)。岡山に特化している分、一つのテーマについて深く書かれているのが岡山文庫の素晴らしい点だ。
上記は岡山文庫ではなく、文信堂から出版されている新潟に特化したシリーズ。地域を縛り特化した本は、全国区ではない情報が、細かく書かれている点が面白い。地域特化のシリーズは結構あるので、今後も集めたいと思う。
山と渓谷社が出している「山渓文庫」。1巻目は1961年の「美しき尾瀬の旅」となる。残念ながらこの文庫は3冊しか持っていないけれど、特徴があり好きだ。旅する地域毎に1冊にまとめられている。
モデルコースのようなものが示され、そこに出てくる名所などの説明が書かれる。基本的に白黒ではあるが、写真も豊富でこれから行こうとする場所への期待が膨らむ。ガイドブックとしての利用が可能だ。
今は「ヤマケイ文庫」が出版されている。ただそちらと「山渓文庫」はシリーズが違うように思える。山渓文庫は旅に特化しており、先にも書いたようにガイドブックとしての側面が強い。その証拠に素晴らしき地図がページの最後にあるのだ。
私が持っている3冊ともに折りたたまれた地図が表3(裏表紙の裏)に格納してあるのだ。広げるとそこそこ大きなサイズの地図となる。簡略的な地図ではなく、細かく書かれているので、これさえ持っていれば迷わず歩くことができるのだ。
特徴的なデザインということではないので、見落としている可能性もあるけれど、ひぐらしを肉眼で確認くらいの割合で古本屋で見かける気がする。値段としては高くなく、先の鎌倉のものは500円だった。あとは状態。最後の地図、破れやすいのだ。
最後に紹介するのは駸々堂出版が出していた「駸々堂ユニコンカラー双書」。新書サイズのシリーズだ。駸々堂出版は、初期は旅行案内などを手がけ、やがて学習参考書などを出版するようになったが、現在はなくなっている(と思う)。
記念すべき1巻目は「女形」。上記の「京のお弁当」と同じ1975年に出版されている。カラーページが豊富でその写真が美しく印刷されている印象を受ける。ジャンルは様々で旅系もあれば、動物を扱ったもの、「火星への旅」という宇宙の話まである。
私が知る限りでは、このシリーズは1979年の63冊目「古典落語」で終わっていると思う。それ以上、続いていたらごめんなさい。古本屋などでも日本の動物園にいるパンダ、くらいの割合しか見かけないので見つけたら買いたい。
海外を扱っているものが多いのも特徴かもしれない。上記のバイキングもそうだし、シルクロード、セーヌ左岸、ヘッセ紀行などもある。女形から始まってシルクロード行って、ヘッセを旅して火星にまで行くので、ジャンルの幅は広い。
古い本は情報が古い、という考え方もあるけれど、当時の情報や価値観など、当時の人が書いているのである意味鮮度のある情報を知ることができるのが素晴らしい点だ。そして、シリーズは集める度に満足感が得られる。もちろん問題はある。本棚は有限なのだ。本は無限にあるのに。世の中、難しいものではあるが、今後も集めたい。集めたいのです。
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