特集 2021年11月8日

舟盛りを海に浮かべて食べたい

舟盛りの器を買った。これに食べ物を盛れば、なんでも豪華に見えるという魔法の器だ。
 
器といえども、これは舟。
この舟は、海に浮かぶのだろうか??
可能であるならば、一度くらい海に浮かべて食べてみたい。

イカをこよなく愛する人形劇人。特にコウイカが好きです。


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テーブルに浮かぶ舟

我が家で大活躍している舟盛りの器。
誰か家に来たら、たいていのものは舟盛りにのせて出している。

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パスタ船。やきそばではない。

どんな地味な食べ物でも、これに盛るとパーティー感がにじんでくるから不思議だ。
 
しばらく使っていると、一つの疑問がわき上がってきた。
 
この舟は、海に浮かぶのだろうか??
 
子どもの頃、ベニヤ板で簡単な舟を作ったことがある。ずいぶん頼りない見た目にもかかわらず、ぷかぷかと川に浮いていたことを思い出した。
このしっかりとした作り、絶対浮くはずだ!!

家のプールに浮かべてみる

せっかくなら、お刺身を載せて浮かべたい。
近所のおさかな屋さんに行ったら、めずらしくお頭つきのお刺身があったので買ってきた。

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結構重量感がありそう。沈むかもしれない。

 20%オフだったけど、1600円ぐらいした。牛丼だと4食分である。
今日の晩ご飯にする予定だし、これが転覆したら結構ショックだな……。
やや不安を覚えつつ、おそるおそる家のプールに浮かべてみる。

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やった!!浮いた!!!
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この安定感。荒波でも沈まなさそうだ。

夕方の庭先で「やったー!!浮いた!!!」と叫んでしまった。
水に浮いたというだけで、かなり嬉しい。
親戚の赤ちゃんが初めて歩いたときと同じくらい嬉しい気がする。
 
器といえども、これは本当の舟なのだ!!
 
舟ならばテーブルの上にある方が違和感がある。
もしかして、水面に浮かべるのが正しい食べ方なのではないか。
 
よし、舟盛りを海に浮かべて食べてみよう!
海を知らずして、本当の舟と呼べるだろうか!

フェリーで伊豆大島へ

空いている海がいいので、いろいろ探した結果、島に行くことにした。

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伊豆大島に来ました。
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企業のカレンダー感がある美しい風景
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ハワイに来たと言っても信じてもらえそうな、あふれる南国感

ヤシの木があったり、ハイビスカスが咲いていたり、南国に来たような気分でちょっとはしゃいでしまったが、ここは東京都だ。
離島マジックにより、ものすごく遠くに来た気がするけど実は東京都である。
都内を移動しただけに過ぎない。

いざ海へ

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超インドアな私が、サーファーみたいな爽やかさ

青空と海は、背景としての力がすごい。
どんな人でも、1.5倍くらいアクティブ感が出る。
就活で使う写真は、海辺で撮った方がいいのではないだろうか。
 
ちなみに私は全然泳げないので、うきわを購入した。

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久々に見る海に、ちょっとビビる

ずっとみていると、吸い込まれそうでこわい。
けっこう荒波だ……。果たして成功するのだろうか。

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とりあえず浮かべてみる

まずは舟に何も乗せずに浮かべてみよう。

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夏場でも海の底はつめたい。
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浮かんだ!!
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海上で船盛りを食べるイメトレ

意外といけそう!!けっこう余裕じゃん!
浮かぶとは思っていたが、荒波の上でもこの安定感はすごい。
成功する未来をはっきりと思い描ける!!やった〜!
兄の家の赤ちゃんが初めて歩いたくらい嬉しい。

 
と喜んだのは束の間だった。

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あぁ〜〜〜!!

大きな波に巻き込まれると、すごい速さで砂浜まで運ばれていった。
今まで目の前にあったものが、急に遠くに行ってしまうのは、思ったより喪失感があった。コンビニに並んでいて、ラス1の肉まんを前の人に取られたときと同じ気持ちだ。

どうやら浅瀬に近づくと、波にさらわれてしまうようである。
 
嵐のとき、陸に上がるより海上にとどまった方が安全というのはこういうことか!と、身をもって学んだ瞬間であった。
今後この知識を生かすことはなさそうだが、一応覚えておこうと思う。

つけものをのせて食べてみる

次は舟盛りに何かのせてみよう。
最初は簡単そうなつけものでチャレンジしてみる。

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まずは3切れ

さっきの浅瀬に流された教訓を生かし、今回は沖の方に行く。

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お箸と舟を持って泳ぐのは結構むずかしい
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緊張の一瞬
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食べた!
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成功だ〜!!
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波に揺られながらも成功!

無事3切れ完食することができた。
味はただのつけものなのだが、遊園地のアトラクションに乗ってるぐらいのワクワク感がある。さらに外でご飯を食べるピクニック的な興奮もあった。
なんだか楽しい!!
海というテーブルにのせて食べる海上ピクニック、流行るかもしれない。
 
少しずつ舟が進んでいくので、追いかけつつ食べなくてはいけないが、ちゃんと3切れ食べることができた。

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つけもの史上、最もダイナミックな食事風景

海にいる人が少ないせいもあって、監視員の人がじっとこちらを見ている気がするが、気のせいかもしれない。あまり気にしないようにしよう。

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おさしみをのせる

だいたいコツはつかめてきた。
いよいよ、次は本番だ!
 
舟盛りといえば、やっぱりお刺身。

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砂浜に映える

ちなみに食材は全て海の近くのスーパーで買ったのだが、しょう油は別売で6円で売っていた。

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下に氷柄の紙が貼られている

ふつうのしょうゆと旨だし醤油では、値段が5倍違う。
いまいち違いはよくわからなかったので、6円の方を購入した。

再び海へ

最初に感じた海への恐怖は、もはや一切なかった。
波の動きを読み、流れる方向を完全に把握している。
 
全く泳げないのだが、ずっと海と共に生きてきたような気持ちになってきた。

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浮き輪さえなければ、ほぼサーファー
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まずは沖へ!!

お箸と舟を持って泳ぐのも、かなり上手くなってきた。

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海の幸をいただきます!

ドキドキしながら手を伸ばすも、不規則な波の揺れで上手くつかめない。
ただのお刺身も、海に浮かべるだけで、豆つかみゲームくらいの難易度になる。

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つかめた!
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まずは一口!

おいしい〜!!さすが新鮮なお刺身!!

しかし、味わっている間に舟はどんどん流されていく。

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バタ足で追いかける
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あぁ!大きい波がきた!!

この大波でかなり海水が舟に入った。
やばい!!沈む!!と焦ったが、多少の浸水ではひっくり返ったりもせず、安定感のある航海をつづけていた。すごい!!

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激しい波が来ても転覆しない。さすが舟!!

まるでハリウッドのアクションシーンのような、ダイナミックな食事風景となった。
かなり海水の味がしたが、自然の調味料として、ワイルドな風味を醸し出していた。


舟盛りを海に浮かべることをと思いついてから一ヶ月。今年の夏は海に行こう!と計画して、夏休みを今か今かと待ち望んでいたが、ついに実現できた。
舟盛りを海に浮かべて食べると、アトラクションとピクニックとスポーツが入り混じったような、刺激的なお昼ご飯になるということがわかった。
刺激が欲しくなったらまた海に来ようと思う。

ふと陸をみると、監視員の人がゆっくりこちら側に歩いて来ているのが見えた。
多分大丈夫だけど、もしかしたら怒られるかもしれない……と思い、急いで逃げた。
大人から急いで逃げたのは、小学生ぶりであった。


再び机の上で舟盛りをたべる

そのあと、大島名物の「べっこう寿司」を食べに行ったら、偶然にも舟盛りで出された。

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陸の舟盛りだ!


海で舟盛りを食べた後、すぐ陸の舟盛りをたべられるとは!!
そしてあたりまえだが、テーブルの上に置いてあるととても食べやすい……、と感じた。

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