グッツも人気らしい
そしてそして、福崎町ではプラモデルやTシャツなどのグッツも開発、販売しているんだとか。
グッズ販売はこちらから→福崎町観光協会
取材協力:福崎町地域振興課
姫路城で有名な姫路駅から播但線で北へ向かい30分ほど揺られると兵庫県福崎町に到着する。福崎町は日本で最初に体系的に妖怪を研究した民俗学者、柳田國男が生まれた地だ。
その福崎町が今リアルな妖怪が跋扈するトンデモない状態になっているのだ。
河童、天狗、海坊主、小豆洗い、ろくろ首、ジバニャン…
妖怪というと、おどろおどろしく怖―いイメージを抱く一方で、どこか愛らしいキャラクター的な扱いを受けている場合もある。最近はむしろ愛らしいキャラクターとしての扱いのほうが主流ではないだろうか。
そんな中、リアル系に振り切った妖怪が兵庫県福崎町にはどんどん集まっている。
小さな町にリアルな妖怪が集まる秘密を探ってみた。
まずはその中心地となっている辻川山公園へ向かう。
この日は平日だったが、春休みの親子連れで賑わっている。
冒頭にも書いた通りここ福崎町は民俗学者、柳田國男の生まれた地でもある。民俗学とは民間伝承(言い伝え)を調べて体系化する学問だ。
そして柳田國男は日本で初めて妖怪を体系的に研究したことでも知られている。いわば妖怪ブームの生みの親と言っても良いだろう。
ちなみに建物のなかは土の匂いがして、本当に妖怪もでてきそうな雰囲気だった。
ここまではごくありふれた公園という感じだ。町の偉人の像があったり生家が整備されていたりする公園はそんなに珍しいものではない。
しかし、
そして人々が見つめる池の中には…すでにちょっと見えちゃっているけれども。
ブクブクブクと泡が立ち昇ったと思ったら、水しぶきを上げて河童が顔を覗かせる。
少しぎこちなく、なんならちょっと微笑ましいとさえ思うモーションで現れた河童は見れば見るほど微笑ましさなんか欠けらもなかった。
大人たちはスマホでその姿を追い、子供たちはくぎ付けだ。子供たちは「怖くなかった」と言っていた。多分すごく怖い河童がでると脅かされて来たのだろう。
この日は池の掃除が行われた直後。本当はもっと水が濁っているらしい。
なお、両側にいる小さな河童はしばらく待ったけど出てくる気配はなかった。調子が悪かったらしい。
広場にはちょっと変わった建物があるのだが、
何往復かした後、満足したように再びスーッと建物の中に帰っていった。
そしてこういう感じの公園なのかと思う一方でちゃんとした施設もあり、
妖怪の不気味さとコミカルな動き、そして真面目な施設、それらがコントラストの激しい一種独特の雰囲気を醸し出している。
そして、妖怪がいるのは辻川山公園だけではない。
妖怪は一緒に座ることができるベンチとなって福崎町全体のいたるところにいるのだ。
その妖怪ベンチも巡ろうと、まずは福崎駅にやってきた。
駅前を探していると、
先ほどの池では水の中に隠れていて一瞬しか見えなかったが、目の前でまじまじとその気持ち悪さを確認できる。
続いて天狗の妖怪ベンチを探して駅前を歩く。
店の前に誰かいると思ってちょっとビクッとなってしまった。 きっとあれだ。
こうして宝探しのように探し回るのも楽しい。
全然関係ない場所に入ると不法侵入になってしまうのでそういう緊張感もある。
屋外にある似たようなものとしては銅像があるが、銅像などと比べて圧倒的に凝った造形と鮮やかな塗装にも注目だ。
こういう細かな遊び心も楽しい。
次の雪女の妖怪ベンチがあるのは温泉施設らしい。
やはりこちらも中々見つける事ができずキョロキョロ、ウロウロしてしまった。我ながら圧倒的な不審者感がある。
真ん中には穴が空いている。これ現地では気付かなかったが、今にして思うと顔ハメだったようだ。
さて次の妖怪は、年老いた猫が妖怪になった「猫また」だ。
道路からすこし奥まったお肉屋さんに人が集まっていた。
僕が到着したときにお客さんが1組いて、ベンチに座り一緒に写真を撮影していた。妖怪ベンチはいわゆるインスタ映えスポットとしても人気なようだ。
帰ろうとした時にも更にもう1組来た。ほかのグループがいると先に次の妖怪ベンチを見つけようという対抗意識も芽生える。
続いて小走りになりながら到着したのは鬼の妖怪ベンチだ。さきほどの猫またでは僕より先に来ていたグループより早く見つけた。まあ、だからどうという事はない。
ベンチに座れば鬼と一緒に自撮りをしている風な写真がとれる。
さっきの場所からかなり離れた場所に移動。途中まで徒歩で行こうとしたが、縮尺が思っていたのと違ったことに気付き文明の利器で移動してきた。
ここにもまた他のグループが。海ぼうずはレンガのお店の外観に馴染んでいる。
海ぼうずと言えば僕が子供の頃、本に転覆した船の奥にボーッと浮かんでいる絵があって、すごく怖かった記憶がある。
おしゃれなお店に妖怪がいても違和感がない。むしろおしゃれな雰囲気に一役買っているとさえ感じられる。
そして、なんだか元気がない。落ち込んでるように見える。
よく見ると一反もめんの左に張り紙があった。
お店の方の話だと閉店後の一反もめんの再就職先はまだ決まっていないんだとか。
すごいタイミングで来てしまった。
最後は油すましという妖怪だ。冒頭の辻川山公園にいたのだが、不覚にも見落としていて再び舞い戻ってきた。
油すましという妖怪は全然ピンと来なかったのでウィキピディアで調べてみると、熊本県に伝わる妖怪で外観などはほとんど分かっていないらしい。
腹がベコッと凹んでいて、顔つきも含めてヨガやってる鶴太郎さんを彷彿とさせる。
と、このように辻川山公園はもとより町中にある妖怪たちもそれぞれたくさん人が訪れていて、人気が爆発していた。
そして、それらの仕掛け人が福崎町地域振興課にいるらしいのでお話をうかがうことにした。
小川さんが福崎町の妖怪ブームに火をつけた方だ。ちなみに小川さんは造形が趣味なんだとか。
突然の取材申込にも関わらず、めちゃくちゃ親切に教えていただいた。
岡本:早速ですが、福崎町すごいことになっていますね。どうしてこの様なことをされようと思ったのですか?
小川さん:まず辻川山公園の池が作ってから全然水が綺麗にならないんで、その時の町長が『綺麗にならないんだったら、それを利用して河童が出てくる仕掛けを作ってくれませんか?』と言ったんです。フクちゃん・サキちゃんというゆるキャラが元々いたので、どうやら町長はそれを出すつもりでいたらしいんですが…
小川さん:ドロドロの池からでてくるんなら、どうせやるんなら振り切ったほうがええやろうと、めちゃくちゃ気持ち悪いのにしたほうが面白いんじゃないかと考えまして、一日でラフを作りました。
岡本:え?じゃあ、あの河童は小川さんが作られたんですか?
小川さん:そうです。
造形が趣味だそうだがすごすぎる。妖怪ベンチをさらに何個も増やす事になりさすがに小川さんも手が回わらなくなって原型師さんにもお願いするようになったとのこと。
岡本:そういえば、天狗はパソコンでロト6の当選番号を調べていたんですが、あれも小川さんが考えられているんですか?
小川さん:そうです。なんかあったほうが面白いかなと。ほかにもソリティアやってるとか、前も河童の弱点を調べさせていたり、気分で変えてます。
岡本:原型を作って、大きくするのは工場かなにかで行っているんでしょうか?
小川さん:はい。ここ最近のものはすべて3Dスキャンで発泡スチロールからの出力ですね。
岡本:市民の方の反響はいかがでしたか?
小川さん:最初のうちはさんざんでしたが、最近テレビとか出さしていただいて観光客の方もすごく増えてきました。妖怪ベンチを設置した店を調査したら1割から2割の売り上げアップに繋がったんです。それが噂になってそこからお問い合わせもたくさんいただきました。
岡本:今後はこうしていきたいという将来像はありますでしょうか。
小川さん:今年中にJR福崎駅に1.5メートルくらいの水で満たしたアクリル柱を立てます。池にいる河童が沈んだら駅までつながった地下トンネルを泳いで行って出てくる設定です。
岡本:公園までいかなくても駅で河童と会えるようになるんですね。
小川さん:また妖怪ベンチは今14個になっていますが、今後妖怪ベンチグランプリというのを開催できたらと考えています。毎年テーマの妖怪を5種類だすつもりなんですが、それぞれ1位を大きくして、それを5年くらい続けようかなと。全部で39体にする予定です。
岡本:実現がすごく楽しみです。お忙しいところありがとうございました!
僕が役場にお邪魔した短い間にメディアからの取材の話が来ていて本当に大盛況だ。
あと僕の情報が古かったので妖怪ベンチは9体だと思っていたが5体増えていた。
せっかくなので追加された妖怪ベンチも見てこようと思う。
新しい5体はさらに福崎町の広範囲に広がり、もはや徒歩で巡るのは難しい。駐車場がちゃんとあるので文明の利器を使うのがおすすめだ。
あまり馴染みがないので、ネットの力で調べてみると京都や滋賀に伝わる妖怪らしい。
アイスクリームを落として泣いている表情がすごい。
岡山県に伝わる犬に似た妖怪で、コイツにすねをこすられると歩きにくくなるそうだ。しかしそれ以外に特に害はないらしい。
そして「新参者に大きな顔はさせない」とばかりに妖怪ベンチ入りした元祖福崎町のゆるキャラ。でも明らかに他とは毛色が違う。漫画とかアニメだと実は一番やばい敵は、最初こういう感じだったりする。
ネットによると夜中に畳を叩くような音が聞こえる現象のことをタタミタタキというらしく、和歌山県、山口県、広島県、高知県に伝わっているとのこと。
巨大な団扇で畳を楽しそうにたたいている。
以上が新しく追加された妖怪ベンチだ。
そして再就職先が未定だった厚手の一反もめんも気になったので行ってきた。
厚手の一反もめんはファミリーマートに再就職が決まっていた。ファミリーマートにもちゃんと馴染んでいる。
こうして妖怪を尋ねて福崎町を回っていくと、妖怪は不気味でもあり、コミカルでもある。人により千差万別の解釈ができ、それが妖怪の魅力なのかも知れないと思った。
福崎町で自分なりの解釈の妖怪を楽しむのはどうだろう。
またインタビューでも出ていた通り、今後も妖怪ベンチはどんどん増えていくというので楽しみだ。
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