チラシの文字も写していた
一年に一回あるかないか、の頻度で筆ペンを触る。ご祝儀袋を用意する時とか。
たまに書くと書き心地が新鮮でおもしろい。
メモ帳にシャッシャッと線をひいてみたあと、どうでもいい言葉や絵をかいたりする。用事が全然終わらない。
書道じゃない毛筆もおもしろいんだよな。好きなものを写し書いてみることにした。
書道じゃない毛筆をピュアに楽しみたいので、できる限り絵や字の巧拙を考えたくない。写し書きにしよう。
平面の、好きなものを探す。
味もおいしいけど、パッケージがかっこいい。
商品名をどーんと1個で出さずに、6個に分けて中にどう入っているか伝えることを優先した心意気が良いし、その形が雪の結晶みたいになっていて企業名とかかっているのも良い。
青色が外側に向かってぼやけている部分のおかげで、真ん中からパッと白く光ったように見えるし、6個のチーズが真ん中に向かって飛んできたようにも見える。
整っていて静かなのに勢いがあるのだ。
筆、墨汁、下敷き、半紙を買ってきた。かっこいいチーズの箱をただなぞる。
小筆に墨を付け、少し練習してからチーズの箱をなぞってみる。
やってすぐ「これはいいな」と思った。
線が一定になるようにすごく集中しなければいけない。でも気持ちを磨り潰すような集中じゃなくて、ゆっくり呼吸することを意識するだけの力を抜いた集中である。マインドフルネス。マインドフルネスだ!
たまに字が潰れたり線が歪んだりするが、それはそれで魅力的に見えて、がっかりすることなく進められた。毛筆に助けられている。
普段はこういう作業の時、ラジオや動画を流すのだが、今回は無い方が気持ちが落ち着く感じがして消してしまった。無音の中、自分の呼吸を聞きながら目では筆の線を追った。マインドフルネス!
筆で書くと昔の占い師が使う図柄に見えて「陰陽師だ」とメモに書いた。
寄って見ていくと、筆の動きが分かったり線の強弱があったりして情報が多い。
これは楽しいぞ。もっとやってみよう。
6Pチーズと同じく、良いなと思っている食べ物のパッケージをなぞった。
躍動感のある「お吸いもの」の文字と、シンプルなお椀の図形のコントラストがかっこいい。
元が和風だからか、筆にした時の違和感が少ない。「永谷園」の下の太い線が良い感じに描けて嬉しかった。
ニワトリとヒヨコが歩いている虹は、のりたまの材料を表現しているのだろうか。ワクワクしてくる配色で好きだ。
鳥獣戯画みたいな、墨絵の動物を思い出した。
パッケージにあるイラストから連想していき、豆乳の、あの風景の絵を思い出した。
力強くて濁りのないイラストである。この世界で生きたい。
生きる前にとりあえず写し書きしたいのだが、中身がパンパンで切り出せない。
パックのまま寝かせて、文庫本を重ねて周りを高くしたらできるかなと思ったが、うまくいかない。マインドがフルネスしない。良い集中をするには、それに適した環境というものがある。
飲み干そうとしてコップ2杯でお腹いっぱいになったところで、中身を移し替えればいいことに気が付き、やっと空のパックを手に入れた。
色々書いてみて、中でも一番マインドフルネスしたのがビスコの箱だった。
笑顔の少年と目の合うパッケージである。「ビスコ」の文字も、力強さと親しみやすさがあって頼もしい。
ビスコの箱のことしか考えない、とても充実した有意義な40分だった。
少年の顔や、ビスコの画像など、写実的なイメージを写し書きするのがとても良かった。どの部分をどんな筆の線にするか考えながら書くことになるので、集中の仕方が立体的になる。
筆をたくさん楽しんだ。
なかなか思い通りにならないが、それでも深く呼吸をして一生懸命やるところから良さが滲み出てきていたと思う。
マインドもフルネスするので良いことしかない。
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