曲げやすいフライパンを買ってきた
はじめに調べた通り、小さく、薄く、アルミ製で、軽量化された、ガス火専用のフライパンをホームセンターで買ってきた。
シンプルな構造がいいようだが、売られていたフライパンはどれもフッ素などでコーティングされていてどれが一番シンプルなのか判断がつかなかったため、条件をクリアする中でもより安価なフライパンを購入。
売り場で隣にいたカップルが「焦げ付きにくいのはこれ」「持ちやすいのはこれ」などと使い勝手でフライパンを選んでいる中、わたしは曲げやすさのみでフライパンを吟味していた。
側から見ればただのフライパンを買いに来ている客だが、内に秘めた用途が違うだけでスリルがあり、ドキドキした。
曲げやすいフライパンを手に入れ、コツもつかみ、条件は整った。
ここまできたらもう曲がる気しかしない。
曲げてみせましょう
ついにフライパンを曲げる時が来た。
過去に試割板を割ったり、石を割ったり、バットを折ったりしたが、いずれもなんだかんだ成功している。
おかげさまで、今年でデイリーライター歴10年を迎えた。
特にとがった特徴もないわたしだが、今回フライパンを曲げて、パワー系ライターとして名をはせたい。
驚くほどびくともしない。
縁が少しだけ内側へ向くとか、そういうのもまったくない。
曲げやすい条件が揃ったフライパンでも、こんなにも曲がらないものか。体力だけが奪われていく中で、もはやコツはどうでもよくなった。
やればやるほど手の力がどんどん奪われていく。これ以上粘っても曲がりそうにない。
もし曲がるとしたら、一番手に力が残っている最初の一発にかかっているようだ。
「ぐにゃりとはいかなかったけど、少しだけ曲げられましたー!」みたいなオチも想像していたが、そんなオチにすら到達せず。曇天の中、ただただ険しい表情でフライパンに力を加えただけの謎の行動に終わってしまった。
ちょっとでもいいから、1mmだけでもいいから曲げたい。どんなに微々たるものでもフライパンを曲げたという事実がほしい。
ガス火専用フライパンをそっと戸棚の奥にしまい、さらに曲げやすいフライパンを探しに出かけた。


