食べ物を食べながら走ると躍動感が出る
最後にトルーさんの走っている姿を見てどう思ったか聞いてみた。「すごく必死で、あの人は河原で何をしているんだろうと思いました。 食べ物があると普通に走るより躍動感があり、普通に走るより遅いはずなのに、躍動感のせいでそれが気になりませんでした。 近くにいた、レジャーシートを広げてのんびりしている家族とのコントラストがすごかったです。 その家族向けの出し物みたいに見えました。」
よく学園ドラマで「遅刻しちゃう!」と走りながらパンを食べているのを見る。
転校初日の女子学生が曲がり角で男子学生とぶつかり、実はぶつかった学生が同じ学校の同じクラスメイトで、 「あのときの!」となって、それから恋がはじまるのだ。
もし、あれが食パンではなく、他の食べ物だったら早く走れて、なにも物語が始まらなかったかもしれない。
こんなシーンを見たことはないだろうか。登場人物が女の子だと思って見て下さい。
ここから、出会う事のなかった2人の恋の物語が始まる。もし、これがパンじゃなくて、別の食べ物ならもっと早く走れて、普通に学校に行けたのではないか。恋愛ストーリーが台無しだが、知りたいので調べてみます。
実際に色々な食べ物を食べながら50メートルを走り、ゴールしたタイムが一番早い食べ物が遅刻したときにおすすめの食べ物である。
大体で50メートルを測ったのだが、実は66メートルだったことが後ほどわかる。なので、66メートル走に変更になった。
なにも食べないで走ったところ12.12秒。これが基本の記録となる。そして、これが実際に食べながら走ってみた結果だ。
実際にそれぞれ走った様子を見てみよう。まずは食パンである。
まずは薄い食パンで試しに走ってみて、それを基準にしようと思ったが間違って切れてないタイプの食パンを買ってしまった。
8枚切りや6枚切りなどの食パンがあるが、男ならでかいパンをかじったほうが力がみなぎって早く走れるのではないか。お店を出るときには前向きな理由が生まれた。
小麦の香りがすごく香ってくるなか「用意、スタート!」の合図で全力で走る。
走りつつも、食べる。そこに余裕はない。パンを食べながらゴールに向かって走るだけである。
最初は口の中にパンが1口分だけなので、呼吸ができてパンの風味を味わう余裕があるが、段々と口の中いっぱいにパンがあるせいで呼吸しづらくなる。食べられて2口か3口ぐらいだ。
スピードも大事だが、口の中の食べ物をどれだけ早く飲み込むかが大事だし、子どもがまねしてはだめなやつだ。
次はバケットである。力を入れないとかみきれない硬さが特徴だ。歯をくいしばるといつもよりも重いものを持つことができたり、早く走れたりするらしい。その理論できっとスピード出ることだろう。
口に入れると先ほどの食パンよりも全身に力が入る感じする。形も細長く、空気抵抗がなさそう。これならいい記録が出せそうだ。
固いパンは、全然飲み込めない。食パンはなんとか飲み込むことができたが、硬いパンを飲み込むのに水分がかなり必要だ。
走っているときにはパンが口の中の水分を全て吸ってしまって飲み込めない。そして、息をするのにパンが邪魔なのでどうにかしてほしい。
と書いたが、鼻炎の自分だけがこんなになっている可能性があるので計測係をお願いしてたトルーさんにもパンを食べながら走ってもらった。
走り終わったあとにぐったりする筆者を見たからか、走る前にトルーさんは「こんなに不安な徒競走初めてです」と漏らしていた。こちらも不安である66メートル走、すでに3本目だ。体力がつきかけている。運動をしていこうと決めた瞬間だった。
感想を聞くと、「食べながら走るというより、口に入れながら走る感じで、飲み込む余裕は全然ありませんでした。 走ってみると早く走りたい気持ちと共に、ゴールまでにたくさん食べたいという気持ちになりました。不思議です。ゴールしたあと、口の中にあるものを食べるのが大変でしたが、なんでこんなに入ってるんだろうと思いました」
次からが別の食べ物だ。まずはちくわである。今まで呼吸が苦しくてタイムが良くなかった可能性がある。ちくわなら穴があるのできっと呼吸がしやすくなり、いいタイムが出るはずだ。
海に潜るときに使うシュノーケルという道具がある。水上に出したくだを水中で口にくわえて呼吸する道具だ。どんなに口がいっぱいになってもちくわの穴から空気を吸うことができる。吸ってみるとちくわ味の空気を口の中に入ってくる。ちくわファンにはたまらない空気。
序盤は呼吸がしやすかったが、中盤になるとやはり苦しくなってくる。どんな食べ物でも食べると呼吸がしにくいというのが今日の学びだった。
ただ、今までの食べもの比べると呼吸のしやすさのおかげが、比べた食べ物の中では一番タイムがよかった。遅刻したとき、食べるのに最適なのはちくわだ。
くしなら片手で持ちやすくので走りながらでも食べやすいのではないかと思いやきとりを買ってきた。
スタートの準備をしていたとき、犬が通ろうとしていたので待つことにした。犬はかわいい。休みたいから止まっているのではない。犬の通り抜け待ち。
やきとりと持ちなおうとして口からはなそうとしたら、口が全然開かずに食べてしまった。体力がなくなりつつある。タレのにおいに誘われて思わず食べてしまったわけじゃないことだけはお伝えしたい。
順位としては4番目であるが早くはないが、串ならではの食べやすさはある。今回は短い距離なので、ゴールしたら落ち着いて食べられるが、もし学校までの距離が長い人は飲み込むための休憩を取りながら転ばないように走ってほしい。
食欲がないときでも食べられるそうめん。さっぱりと食べられるので朝にもぴったりだ。5玉ぐらいは食べられる。
学生の頃なら体力が有り余って、いくらでも走れたが社会人になると認めたくないぐらい体力が落ちる。
ここまで66メートルを6本計約400メートル走っただけで限界が近い。
麺類を食べるときには①そうめんをはしでつかむ、②つゆに入れる、③それを口に入れる、を行う。食事の際にはなんとも思わない、むしろ自分の好きなようにおいしく食べられていいが、今はその行為全てが、そでをびしゃびしゃにする。つゆこぼれまくりである。帰り道に迷わないぐらいつゆがこぼれている。
そして、こぼれないように走ると遅いのだ。一緒に撮影してくれた友人がバックステップでバシバシ写真を撮ってくる。でも、スピードが出ないおかげでそうめんを食べることができる。
何とか走り切ったが、結果は29.50秒。一番早かったちくわの2倍以上時間がかかった。急いでいるときにはおすすめできない。そうめんは夏の暑い日に実家の昼食にゆっくりと食べたほうがいいかもしれない。
イチローが毎朝カレーを食べていたことから話題になった朝カレー。朝だけじゃなく、昼も夜も食べたい。
カレーは短所として、両手でしっかりと持たなければならないため、腕を振ることができず、スプーンでカレーをすくうのが大変でスピードが出しにくい。カレーってスピードが出にくい食べ物なんですね。
最後はリンゴである。マウスピースぐらい固いからきっといいタイムが出そうだと思い選んだ。本当はさわやかな人がリンゴをかじっていたらかっこいいだろう。早いとか関係なく、かっこよさ重視で買ってきた。
走った。口の中にリンゴの果汁をあふれさせながら、全力で走った。限界なんてとうに超えている。それでも彼は走った。遅刻しそうなときにくわえる食べ物を知りたかったのだ。
ゴールした瞬間、すぐに座った。もう走れない。水分を求めてリンゴをかじると、じゅわと出た果汁の甘味が体に染みた。
最後にトルーさんの走っている姿を見てどう思ったか聞いてみた。「すごく必死で、あの人は河原で何をしているんだろうと思いました。 食べ物があると普通に走るより躍動感があり、普通に走るより遅いはずなのに、躍動感のせいでそれが気になりませんでした。 近くにいた、レジャーシートを広げてのんびりしている家族とのコントラストがすごかったです。 その家族向けの出し物みたいに見えました。」
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