特集 2021年2月22日

ブラジル、パキスタン、ラオス…各国の店や寺院が集う神奈川県愛川町で外国旅行

愛川には外国スポットがありすぎて楽しすぎた

  

東京駅から千葉のほうに東へ70kmほど車で走ると外国の玄関口「成田空港」がある。

いっぽう、東京駅から神奈川の方に西へ70kmほど車で走ると「愛川町」がある。どうやらこの愛川町がインターナショナルな土地であるらしい。

確かにグーグルマップであれやこれや検索すると、様々な国の店や施設がある。

愛川町には鉄道は走ってない。小田急線の本厚木駅からバス「神奈川中央交通」、通称「神奈中」に乗って行くことになる。バスではなかなか移動が厳しいので車に乗って行ってみた。

変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

前の記事:身近すぎる定番スーパーを紹介する番組が気になった

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いきなり地球の裏側「ブラジル」と「ペルー」

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いきなり地球の裏側の国々の店がある。それが愛川町である。

本厚木から愛川町に向かって北上すると、異国感あふれる店が出てきた。

南米食品店「サボールラティーノ」である。ブラジルのリオデジャネイロと、ペルーのマチュピチュの写真が貼ってある。

中に入るといきなり現地の言葉の広告が紙やデジタルサイネージで設置されている。一歩入っただけで海外だ。

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読めない。だがその異国情緒がいい。

売りものはだいたい南米の商品だ。ちょっとした個人スーパー程度の広さに、未知の国の食材が売られている。ソーセージ、パン、調味料、お菓子などがびっしり置かれている。

例えるなら手芸に興味のない僕がユザワヤのフロアに放り出されたようなもので、食料品といえど全く新しい世界なのだ。商店に行くだけなんだが、わからないものばかりでフリーズする。これぞ海外旅行だ。

しかし1度ユザワヤで買い物したら2度目は慣れる。ペルーやブラジルに行く前にまず愛川で慣らしておくのもいいかもしれない。

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おすすめされたのがレトルト「フェイジョアーダ」缶(写真左上)。豆と肉の煮込み料理で、缶をあけるだけで本家のブラジルの味が楽しめる。

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ソーセージもうまいとのこと。かなり種類がある。日本の寿司や刺身のようなこだわりを感じる。

奥には食事が食べられるスペースがあって、そこで興味のままにブラジル式の肉もりもりの食事を食べてしまった。うまい!

これだ。海外行ってないけど気分は海外旅行だ!しかし愛川のスタートがこれでこの先大丈夫なのだろうかという不安もよぎる。

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南米の定番「インカコーラ」と一緒に「Lomo Saltado」を食べる。1250円なり。

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レジの近くに駄菓子コーナーがある。お店にちょっと入ってちょっと買う、そんな子供の買い物もできそうだ。

一寸先の「パキスタン」と「タイ」

さらに愛川町の中心へ。

そこにはパキスタン人の食材店とタイ食材店とタイ料理がある。愛川すごい。

扉を開けて一歩踏み入れるたびに、各国の商品が織りなす空気が体にしみこんでくる。

パキスタン人のお店は、入るやいなやインド系の香辛料の香りに脳がバグる。

そこではインドやパキスタンの商品を自国流に並べ、あごひげを蓄えたおにいさんがどっしりと構えていた。

店に入るや海外旅行の旅先で会う客引きのように「何が欲しい?買わなくてもいいよ、説明するよ」とフレンドリーに話しかけてきた。

タイの店に入るとまた異世界だった。

商品とその匂いがあるのはもちろん、そのうえ店頭にはテーブルが置かれ、子供二人が宿題をし、赤ちゃんをおんぶしたお母さんが店番をし、お父さんが家族の食事を準備している。タイの生活臭まであるのだ。

タイはセブンイレブンやファミリーマートが多いけど、個人商店に入れば、こんな昭和的な暖かな店があるのだろうと、タイを旅行した気分になった。

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愛川町ではパキスタンの店とタイの店がほぼ隣り合う。

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パキスタンの店で歯ブラシとして使えるという棒を買った。

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店の壁にはられていたメモだが読めなかった。

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商品のイメージキャラクターも各店でがらりと変わる。

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タイの店もさっぱり文字が読めなかった。一瞬だけタイ旅行の気分になってマンゾクだ。

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「ベトナム」と「カンボジア」でお祈り

さらに愛川の奥に向かう。

山あいを進むと眼下に日本では見慣れない見た目の寺院があって、「おおっ!」と声を出した。地図ではベトナム寺と書いてある。

行ってみると、まさにそこはベトナム。たまたま日曜ということもあって、ベトナム人が集まり、参拝しに来ていた。話を聞くと参拝者のベトナム人は関東中からやってきているとのこと。

「よかったら中を見ますか?」と声をかけられ、歓迎された。中には来日3年目の女性の住職さんがいた。日本語は話せなかったが、優しそうな人で、来訪したベトナム人らがお寺について話してくれるのを横で通訳してくれた。ありがたいお話にお祈りをした。

着ている服が参拝者のベトナム人よりも厚着だった。ベトナムから来たばかりで寒さに慣れていなかったのかもしれない。こんなご時世だし、風邪ひかないで元気でいてほしい。

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ベトナムの寺がそのまんま愛川にあった。
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神様が描かれている。ありがたやありがたや。


さらに少し車を進めると、今度はカンボジアの施設。「在日カンボジア文化センター」というのがあった。どれだけインターナショナルなんだ愛川町は。

ということでさっそくお邪魔すると、どうやらカンボジア人が建物内外でトンカントンカンとお寺を建築しているようで、鉋(かんな)がそこらじゅうに落ちていた。

「中入れ!大丈夫!」というジェスチャーを受けてお堂の中に入らせてもらうと、建物のお堂部分は完成していた。隅では子どもたちが暇をもてあましてストーブを囲みながら本を読んでいて、コカコーラのボトルがおいてあった。コカ・コーラ恐るべし、とりあえず世界どこにでもあり、誰もが安心して買えるいつもの味。最強ブランドだ。

迷惑になってはならないとお賽銭を入れて、カンボジアの仏様にお祈りをした。

「ばいばーい!」と大きな声でお兄さんらが挨拶してくれた。またこよう。

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カンボジアセンター。もう何カ国目になるか忘れそうだ。情報量が多すぎる。
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カンボジア式のお寺はベトナムのお寺と比べてなかなか派手だ。
いろいろ本国から持ってきただろうものに混じって紫のダルマローソクがセンターで鎮座していた。

ラオス人に混じる

愛川町の奥を走ると突然アジアンなお寺が目に入り「おー、またすごい建物が!」と驚いた。今日は一体何度おどろかされるのか。

その建物はベトナムとカンボジアに隣接する国「ラオス」の「ラオス文化センター」という建物だ。

ラオスから来たお坊さんと、日本語が話せるラオス人の方が集まっていた。日本ラオス人会の会長さんもいて、「どうぞお入りください!」と中に入ると…

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こんな素敵な建物が突然出てくるのが愛川町。
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中では49日ならぬ100日目の法事(ラオス式)が行われ、落ちついたなか、お邪魔しました!

中では、在日ラオス人のための法事が行われちょうど終わった段階だった。

部屋は広く、ラオスやタイでみかける、仏像や棒で挟むタイプのお賽銭があり、またもラオスに瞬間移動したような不思議な感覚に。

祈ってあげますとラオスの住職さんに言われ、祈ってもらうと腕に紐をまきつけてくれた。ああ、意味はわからないけど心が洗われた。

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腕にまいてもらった。ああ、善意でなんか心が洗われた。
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お供え物のご飯も本格派ラオス飯。

会長さんはありがたいことにこの中を案内してくれるという。むしろこの機会にラオスを知ってもらいたいそうだ。ただし普段はいないから来るときは連絡してねとのこと。

部屋の角にはおみくじと賽銭コーナーがあり、ラオス式おみくじとラオス式賽銭を行った。

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上が賽銭コーナーで、下がおみくじ。賽銭コーナーは生まれた曜日の仏様に賽銭をいれる。
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見ての通りおみくじだ。
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しかしやはり読めないので、会長に読んでもらった。まあまあいいらしい。吉だ。

さらに会長が奥を案内してくれた。カラオケセットやキッチンのほか、ラオスに関する絵が12枚並んでいた。1月から12月までラオスのイベントを紹介するもので、いずれもお坊さんが出てくるあたり、仏教国ラオスである。

お客さんをもてなそうと、お菓子や果物までいただいてしまった。お坊さんにふるまわれる托鉢のように。いたれりつくせりなラオス体験だった。

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「ここの部屋はですね、日本のラオスの子供とかが来てラオスを勉強する場所になっているんです」
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「祭りのときに手作りのロケットを飛ばす絵ですよ」と熱弁のもてなしは続く。

リトルワールド愛川

愛川町がこんな面白いところなんて知らなかった。神奈川といえば鎌倉よりも横浜よりも、愛川である。間違いない。

愛川町の統計をみると、全人口37000人のうち2900人弱が外国人なんだそうで、しかもペルーやブラジルやフィリピンが多く、中国や韓国は少ないという珍しい場所なのだ。そんなラテン気質な人々がいるところに東南アジアの寺院が次々と建っているのだ。なんだかカオスで面白い。

調べると他にもペルーやフィリピンなどいろいろ店があるらしい。行きやすくなったらもう一度行きたい。

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