特集 2020年11月25日

なんでも「甘い」で食レポしてみる

何を食べても「甘い」という感想が出せるのだろうか。

テレビの食レポを見てずっと気になっていることがある。
レポーターの人がやたら「甘い」って言っていないか。

採れたて野菜も、新鮮な魚も、高級な肉も、みんな「甘いですね~!」という感想になっている気がする。
本当にそうか?と思わずにはいられない。普段食べていて甘いな、と思わないような食材にも甘いと言っている。

これは一体どういう現象なんだろうか。
実際に「甘いかどうか」だけで食レポをしてみれば分かることがあるかもしれない。検証してみた。

1987年兵庫生まれ。会社員のかたわら、むだなものを作る活動をしています。難しい名字のせいで、家族が偽名で飲食店の予約をするのが悩みです。(動画インタビュー

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食レポ、「甘い」という感想が出がち

この現象、ずっと気になっていたのだ。
先週もヒルナンデスを見たら、マッシュルームを生で食べて甘いと言っていた。
普段スーパーで買うのと採れたての野菜とではきっと味は違うのだろう。でも、そんなに「甘い」に感想が収束していくだろうか。

疑問を解消するには、自分たちでやってみるのが一番だ。
様々な食材を用意して、「甘いかどうか」「甘いならどう甘いか」という観点でのみ感想を言ってみたい。

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当サイトライターの月餅さんと編集部古賀さんが協力してくれた。
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今回のレポート対象。はっきりと甘いものから、そうでないものまで色々と用意してみた。

これを食べて甘いかどうかのレポート、やってみよう。

まずはわかりやすいところから

最初の食材は柿だ。まずは感想を言いやすそうな果物からやってみることにした。

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カットフルーツで柿って珍しい気もする。

古賀:甘すぎない甘み。落ち着く甘さ。
月餅:素朴な、家庭的な甘さとか。
古賀:しゃくしゃくして爽やかな甘さ。なんて言うのかな……引っ掛かりのない甘さ?
爲房:果物の中ではさっぱり目な甘さですよね。
古賀:自然な甘さ?ケミカルじゃない、体に良さそうな甘さかな。
月餅:オーガニックな。おいしい~。柿って昔より柔らかく甘くなってますよね。
爲房:今の果物って何でも甘いですからね。いちごとか。
月餅:シャインマスカットとかはもう甘さの極みですよ。

柿:当然のように「甘い」感想は言いやすい。なぜなら甘いから。
甘いと言える度:★★★★★
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次はきゅうりだ。

古賀:きゅうり?
爲房:生食でいける野菜ということできゅうりを選びました。
古賀:きゅうりに甘さを感じたことってないな~。
月餅:ないですね~。
爲房:でも食レポで「朝採れきゅうりを食べてみましょう」ってなると「甘い」が出てくるんですよ。
古賀&月餅:あるあるある!「えっ!?きゅうりってこんなに甘かったんですか~!?」
爲房:それですよ!そのパターンでほんとに食レポ出来るのかっていう。甘さを感じる口になってもらって、食べてください。
古賀:甘さを捕まえるということですよね、きゅうりの中の甘さをね。

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きゅうりの甘さを探しながら食べる。

古賀:……あのね、舌に乗せたときに……甘いですよ。
爲房:うわ、それ感じたことねぇ~。
古賀:たぶん、食べ物って舌に乗せたときに全部甘いんじゃないかな。これは食べられるものだぞっていう、OKサインが「甘い」。
爲房:はいはいはい。危険じゃないぞっていう。
月餅:大丈夫だよっていう「甘み」。

月餅:きゅうりの真ん中が甘い気がします。
古賀:真ん中、甘いね。皮が苦いから、真ん中に甘みを感じる。
月餅:種の周りは甘いって言いますもんね。
爲房:あぁ~。果物や野菜は種の周りが甘い!このパターンいけるぞ。

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ここでじっくりときゅうりを味わっていた月餅さんが突然「あ、甘いかも!」と叫んだ。何かに目覚め始めたか。

古賀:きゅうりって皮を厚めに剥くとめちゃめちゃ甘いんじゃないですか?
月餅:ドイツに行ったときに、ドイツ人の先生が皮を剥いたきゅうりをおやつに食べていたんですよ。甘さを感じていたのかも。
爲房:甘さを探して食べるのって面白いですね。
古賀:リポーターの人も、良いように言わなきゃってことでテンション上げるのに甘いって言ってるんですかね。
爲房:確かに甘くて困る人っていないですもんね。「苦いですね」「すっぱいですね」「辛いですね」、に比べて「甘いですね」は敵がない。

きゅうり:種の周りをしっかり味わうと甘い。ちなみにマヨネーズを付けて食べると感想が「甘い」から「最高」になり、感想における甘み成分が薄くなってしまう。
甘いと言える度:★★★★
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きゅうりはなんとなく「甘い」でいけるのではと思ったので、もう一つ野菜からベビーリーフです。

古賀:ベビーリーフって甘いっけ?(食べてみる)甘くないのよ…!
月餅:噛めば噛むほど苦い。
爲房:噛めば噛むほど甘くなる、かと思ったら苦くなってた!

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古賀「苦いのよ~!甘いのと一番対極のやつよ。」

月餅:水菜はいける気がします。水菜を二噛みするじゃないですか。そこでワインのテイスティングみたいに口に含んだら、そこが「甘い」のピーク。
古賀:二噛み。葉っぱは噛まない方がいいことがわかったね。

無理に甘みを感じようとするあまり、あまり噛まない方がいいという食べ方が考案された。
ベビーリーフで甘さを感じるには修行が必要そうだ。

ベビーリーフ:甘みを感じられるようになるには高いレベルが求められる。
甘いと言える度:★

甘じょっぱいお菓子はどうか

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続いてはお煎餅の雪の宿。個人的には甘い寄りのしょっぱい味という印象だがどうか。

古賀:甘いぞ、と思って食べると案外しょっぱいことに気づくね。甘すぎない、しょっぱさとのちょうど良い黄金比的な。
月餅:コーティングも甘いんですけど、お煎餅自体の甘みがある。おいしい~。
古賀:お米の甘みが。お米が結構香ばしくて、その中に甘さがあるね。
爲房:表面を舐めたときと噛んだときとで、二種類の甘さが出てくる。
古賀:コーティングの甘みよりもせんべいの甘みの方が、口にはずっと残ってるかもしれない。安らぐね。垢抜けていて迷いがないおいしさ。
月餅:安心感がある。

雪の宿:事前の予想に反して、生クリームを使ったコーティング部分ではなく煎餅そのものの甘みを評価する声が挙がった。
甘いと言える度:★★★★
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続いてはハッピーターン。いつでも大人気だが、しょっぱさの中に甘さが見え隠れする代表選手のように思う。

古賀:これもファーストアタックが甘いし、お煎餅自体も甘いですね。
爲房:お煎餅って「甘い」でいけるんですね。これは発見だなぁ。あ、でも周りの粉のしょっぱさも来た。さっきの雪の宿と比べると余計に感じます。
古賀:でも案外喉の奥が甘くないですか?飲み込んだときに、「味~!」って感じで喉に入ってくるから。

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「味~!」の様子をGIFでお送りします。

爲房:さっきの雪の宿がふわっとした味だから、味が強いですね。
古賀:強い強い。さっきの柿と比べたら、こっちは「味!」。
月餅:ケミカルな味が。
古賀:これは「味」だなぁ!「味」だね~!なんというか味そのもの、「甘み」と「旨み」を直接を食べているような。
爲房:ハッピーパウダーはやっぱり危険ですね。パウダー3倍増しとかありますから。
古賀:あんなのだめですよもう。味わうということをサボってるってことですから。
爲房:味のディストピアですよ。チューブから直接味を入れられてる未来だ。

ハッピーターン:煎餅はそもそも「甘い」でいけるジャンルであることがわかった。ただハッピーパウダーの味が強すぎるので、雪の宿よりは控えめ。
甘いと言える度:★★★

どんどん複雑なものにチャレンジ

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続いて用意したのは鉄火巻。月餅さんが嬉しがっていた。

古賀:あの、柔らかさって甘さと近いんじゃない……?
爲房:なるほど?
古賀:マグロの赤身ってシャリよりも柔らかいなと思ってしまい、そうすると優しい→甘い、みたいな。
月餅:お米が甘い。
爲房:醤油も甘さを感じますね。マグロはそうでもない……?
古賀:マグロはそうでもないかも。でも甘いですよこれは。「甘い」でいけるいける。

月餅:(ワサビにヒットする)あっ……!辛い!……でも辛さが急にガッと来たのと比べると、古賀さんの柔らかいイコール甘いがわかった気がします。
古賀:甘さっていうのは優しさなんじゃないか。
月餅:優しさを求めてる。
古賀:お寿司って冷たいから、温かかったら甘く感じるんじゃない?
爲房:確かに超高級店だとシャリを温めたりとかするって聞いたことありますね。

鉄火巻:柔らかさは甘さ、という説が出てきた。マグロ自体はそこまで甘さに直結しづらかったので、白身魚の方が良かったかもしれない。
甘いと言える度:★★★
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はっきりと酸っぱいのはどうか。酸味の代表選手、梅干しだ。

爲房:甘さを推しているハチミツ漬けではなく、酸っぱさを推しているシソ漬けを買ってきました。
月餅:酸味の中に甘みを感じられるか。
古賀:甘みを感じられたら一人前だぞっていう。

月餅:(食べて)あっ、酸っぱい。
古賀:……酸っぱいんだよ。
月餅:いやいや待ってください。一口食べて、待ってほしい。そしたらちょっと甘いですよ。咥えて、とどまる。
爲房:うわ、それ勇気入りますね。
古賀:(咥えてとどまる)……いや、やっぱ酸っぱいなぁ~!こんなにびっくりさせるかな、体を。
爲房:あっ、でもいけるかもしれない。
古賀:がんばって!

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甘さを発見出来るかの瀬戸際になると応援するようになってきた。すごいスタイルの食レポだな。

爲房:噛んで、即飲み込むんですよ。そしたら最初は酸っぱいんですけど、あとから甘さみたいなのが来ますよ。
古賀:こんなライフハックある?すぐ飲み込んでください!って。
爲房:せっかくの梅干しを。
月餅:でも、この方法だと甘いですよ。すごい。
古賀:絶対的なんじゃなくて相対的に甘いんですよ。
月餅:梅干しの衝撃が過ぎ去ったあとに甘い。
爲房:酸味は体が拒絶するのか。
古賀:びっくりするんだよ、酸味。お酢とかは大丈夫なんだけど、これは酸っぱいなぁ。

梅干し:酸味のようなはっきりした味が強いほど、その後に相対的に甘みを感じるのではないかという説を発見。ちなみに種を長時間舐めたら甘いんじゃないかと思ったのだが、しっかり漬かっていて酸っぱかったです。
甘いと言える度:★

コーヒーに納豆はどうじゃろう

今回の企画を始める少し前に、ファミリーマートがコーヒーをリニューアルした。
そのキャッチフレーズがなんと「本当においしいブラックコーヒーは、甘い。」なのであった。

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CMで見て「おいおいマジかよ」と突っ込んでしまった。コーヒーの味の特徴って、苦味や酸味なんじゃないのか。

古賀:ファミマってそんなにコーヒー頑張ってる印象なかったのに急に来ましたねー。あーでも甘い匂いするなぁ。
月餅:キャラメルっぽい匂い。
古賀:甘いかもしれない。豆の甘みが感じられて。
月餅:ありますね!甘いですね。
爲房:ファミマは正しかったのか……。

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疑ってすまない、ファミマのコーヒー。

古賀:カカオ?チョコレート?みたいな方向に発想するのかな。元来の甘さもある気がするけど。
月餅:カカオニブ(※)っぽさをすごい感じます。(※カカオニブはカカオ豆を焙煎して砕いたもの)
爲房:意外にコーヒーはこれまでのものと比べると、イージーですね。
古賀:やっぱり嘘は付けないんじゃない?ベビーリーフも梅干しも甘いと言おうと思えば言えるけど、嘘だから。これはあるからね、甘みが。

古賀:これは「言われてみれば確かに甘い」の部類じゃないですか。
爲房:コンビニでちゃっちゃと買ってちゃっちゃと飲んだら甘さは感じないかも。
古賀:でも店内に「コーヒーは甘い」って書いてあって。それで甘いのかと思って飲んだら「おぉ、確かに」っていう。
爲房:踊らされてますね、ファミマに。
月餅:ファミマ、上手だな。

ファミマのブラックコーヒー:予想に反してイージーという評も出たほど甘さを感じられた。コーヒー豆自体の甘みを探り当てるといった形だ。
甘いと言える度:★★★★
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納豆のように、甘さを味わえるかまったくわからないものはどうか。まずはタレなしでそのままいってみる。

月餅:納豆は豆だから、豆の甘さがあるんじゃないですか。
古賀:素材の甘みでいくパターンね。
月餅:食レポで言いそう。
古賀:うん、いけるいける。甘いよ。
爲房:豆の甘みでいけますか。
古賀:煎った大豆って甘いじゃないですか。あの感じ?

古賀:甘いっていうときって、素材褒めっていうか、素材の甘みを称賛しているわけですよね。砂糖の甘さを称賛しているわけじゃないですよね。だからコーヒーとかがイージーっていうのは素材の甘みを感じやすいからで、雪の宿とかよりはラクじゃないですか?
爲房:きゅうりの種の周りが甘いというのも、素材がもう甘いから。
古賀:そうそう。雪の宿も米の甘みがして。
爲房:上にかかっているところよりかは、米のところが甘いよって言いやすいですよね。胸張って言える感じがする。

古賀:タレを入れてみますか。入れたらもう完璧でしょう。
月餅:(タレをかけた納豆を食べる)こんなに味が変わるんだ。
古賀:めっちゃおいしいですね。甘いっていうかうまいですね。
月餅:おいしい……!
爲房:趣旨が「納豆はおいしい」になってしまった。
古賀:でも甘いって言うんだったら、タレはかけない方が言いやすいかもしれない。
爲房:さっきは豆を噛んだら甘いなって思ったんですけど、タレをかけたらそれがなくなっちゃいましたね。
古賀:これはハウツーですね。素材の味を味わうことが、甘褒めへの第一歩なんだ。

古賀:シュークリームとかって、甘いって褒めにくくないですか。
月餅:甘いものって、甘いって褒めないですよね。
爲房:ケーキ食べるレポートで「甘い!」って言わないですよね。ばかみたいなレポートになっちゃう。
古賀:甘くないものを甘く言うってのが、甘褒めの世界……。
爲房:原理がわかってきた感じがしてきましたね。
古賀:謎が解けつつある。

納豆:タレを入れると逆に豆本来の甘さがかき消される。そして我々は徐々に甘褒めの世界へ入り込めてきている。
甘いと言える度:★★★

いっそ辛いのはどうなのか

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キムチがあったので持ってきた。辛いものも甘いという感想でいけるのだろうか。

爲房:白菜が入っているから、甘いでいけるんじゃないかなって気がするんですよね。
古賀:うん…。甘い!シンプルに甘いっすよ。
月餅:甘い甘い!
爲房:やっぱり白菜が甘いし、イカの塩辛が入っているからそれの甘さも感じる。
古賀:イカも甘いもんね。イカとエビは甘い界の王者と言ってもいい。
月餅:でもあとからちゃんと辛さも来ます。
爲房:我々が高められてしまっているから……。
古賀:スキルが上がってきたのか。
月餅:甘さの知覚まで早くなりましたよ。

キムチ:これも素材の甘さを感じるパターンか。月餅さんはじっくり味わって判定していたのに、食べてすぐ「甘い!」と言えるほどレベルアップしている。
甘いと言える度:★★★★
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最後は辛いラーメンとして人気を博す、蒙古タンメン中本のカップ麺を用意した。

古賀:あーもうスープが結構甘くないですか。
月餅:あとから辛みが来ますね。
古賀:具のキャベツがすごいしっかりしているし甘い。フリーズドライとかなのかな。
爲房:うん、キャベツが甘いな。スープの辛さとの差がでかいですよね。
古賀:最終的な印象はめっちゃ辛い。なんですけど最初の方は甘さがある。
月餅:豆腐は甘い。
古賀:豆腐は柔らかいから、柔らかさの近くに甘さがある。

蒙古タンメン中本:辛さを売りにしているラーメンなのに、甘い甘い!などと言いながら食べてしまった。やはりキャベツなどの野菜は本来の甘みを感じるし、豆腐のような柔らかいものは概念的に甘さに近いように思える。これまでの説の集大成となった。
甘いと言える度:★★★

「甘い」で大丈夫、これからも食レポは甘いと言うだろう

実際に試してみると、全員の甘さを感じるレベルがだんだんと上がっていって、最終的に何でも甘いと言えるほどになった。
「甘い」でレポート出来るかどうかはこの辺りの点に該当するかがポイントとなりそうだ。

  • 素材本来の甘みを探し出すと甘いと言いやすい
  • 辛さと差が大きいと甘いと言いやすい
  • 柔らかいものは甘いと言いやすい

経験則なので本当にそうなのかは分からないが、少なくとも1時間ほどの検証ですっかり甘いと躊躇なく言えるようになってしまった。
これではテレビの食レポから「甘い」が消える日はないだろう。
反体制側にいたはずのにいつの間にか体制側に取り込まれていた気分だ。

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最初の方でチャレンジして苦さしかなかったベビーリーフも、月餅さんが再チャレンジして葉っぱではなく茎を噛むと甘さを感じられるようになった。もうなんでもいけちゃうんじゃないか。

 

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