(林雄司)
80km離れていても見えると判定された
筑波山は関東平野が見渡せるらしい。ならばたまがわ花火大会だって見えるのではないか。
カシミール3Dで調べたところ(そういう機能がある)、結果は「見えます」だった。
80km離れていても見えるのか、これは行きたい。行かなければ! 義務でもないのに義務感が沸き起こってくる。
そのあとも浮かれて調べていたら、35km先のビルが見えて珍しいという気象予報士のブログを見つけた。あれ?35kmで珍しい?80km離れていても見えるというのは地形だけを考えた場合の話だった。
しかし超望遠のカメラがあったらどうだろう。不安すぎて花火前日に筑波山に行って調べた。
新宿方面を覗いてみる。
蜃気楼のような街のシルエットが見える。これは実際に行ってみると存在しないやつだ。何日も漂流した人が見る島。もしくは念写。
これは無理かな…。見えなかったら、花火はみんなの心のなかにあるのですみたいなことを書くか。
下りのロープウェイでそう思いながらスマホを見たら、イッツコムチャンネルの花火中継で使う告知画像が来ていた。
イッツコムチャンネルで見てる人はデイリーポータルZを知らないので、「見えませんでした~」で終わらせるメディアだと思わないだろう。
楽器が弾けないのにバンドメンバーとしてステージに上る夢をよく見る。そのときの気持ちに似ている。
夜なら見えるかもしれない
いや、でも花火は光るのだ。月は38万kmも離れているのに見えるじゃないか。
そう自分をはげまし(ごまかし)ながら2日続けての筑波山へ。16時に到着して18時の打ち上げ開始を待つ。
「もやもやする」という表現をよく耳にするようになったが、これが本物だ。もやもやすると言う場合はこの景色を思い出そう。
根拠が月だし、風に祈る。こんな民話みたいな取材はなかなかない。
加藤さんはフィールドスコープで次々と木星や人工衛星を発見。それを聞いた他の観光客が集まってきてモテていた。星がわかるとモテる、30年前の自分に教えたい。
東京タワーの光が見えるということはいける? もうすっかり帰りに何を食べるか考えていたが、もしかしたら花火が見えるかもしれない。
見えました!
「見えますよ」加藤さんと同行のべつやくさんが叫んだ。
見える。見えるじゃん!本当に見えた。遠くで音もなく小さい花火が開いている。
動画でもはっきりと写っている。打ち上がる小さな火まで見える。多摩川の花火大会が筑波山で見えるなんて。
遠くで見る花火はスローモーションのように見えておもしろいものだった。
結論:
筑波山から多摩川の花火は見える。
ということは隅田川も神宮も東京湾もすべての花火大会が見えるということだ。
あらゆる花火を見るなら筑波山、うっかり発見してしまった。