日本最古のロープウェイに、乗れるのか、乗れないのか
食堂を出て歩くこと数分。ロープウェイ乗り場にたどり着いた。
15分間隔で運行しているというので、往復券を買って待つ。しかし、斜面の中腹でゴンドラが止まったまま、なかなか動かない。また、動いたと思ったら止まったりしている。
スタッフの方が上の乗り場の方と電話でやり取りしている。どうやら急きょメンテナンスが必要な状態になったようで、再開はいつになるかわからないという。でも、もしかしたらすぐ動くようになるかもしれないらしい。もし乗るのをやめる場合、払い戻しをしますとのこと。
私を含め数名が乗車を待っている。すぐ後ろに韓国から来たという方がいて、グーグル翻訳の画面を見せて、今何が起きているのかを伝える。「おお、わかりました」と、無事伝わったようだが、さてどうしたものか、なんとなく、みんなそのまま待っている。
10分ほど経っただろうか、ロープが動き出し、ゴンドラがこっちにやってきた。待っていたみんなが自然に拍手して、なんだか一体感があった。
しかし、乗れるのはいいけど、怖い。私はそもそも高いところが割と苦手な方なので、動き出したら動き出したでめちゃくちゃ怖いのだ。それに、昭和3年と聞いているし!
一緒に乗っていた方が「これは日本最古のロープウェイやからね」と教えてくれた。「え!最古!」と驚く。後で調べてみたら、世界でもこんなに古いロープウェイが現役で動いている例は希少らしい。
何事もなく山の上まで着き、降りてあちこちを見ると改めて年季を感じる。
山の上の街で葛切りをすする
山の上を歩いてみると、本当に街があった。大衆食堂や土産物屋、甘味処などが通りに並んでいるのだ。
残念ながら、平日の昼下がりということもあってか、すでに閉店している店ばかりだったが、気になるお店がたくさんある。
で、しばらく歩いていくと「金峯山寺蔵王堂」という、世界遺産にも登録されているお堂があったりして、ちょっともう、情報が処理しきれなくなってきた。ふらっとロープウェイに乗ってきたつもりが、一気に新しい世界が開けた感じだ。
この辺はこの辺で、また改めて来たいな、と思う。もっと早く来るんだったなーと思っていると、遠くで雷鳴が聞こえ始めた。さっきから薄黒い雲が空を覆い出していた。ここで大雨に降られたら困るなーと、とりあえず引き返すことにして、一軒だけ、どうしても気になって、かつ、ここは営業中だった「中井春風堂」というお店に寄り、名物の葛切りをいただくことにする。
葛切りと葛餅を盛り合わせにしてもらうことができるそうで、そうしてもらった。
葛切りは黒蜜かポン酢で、葛餅はきな粉か黒蜜で食べるといいという。この「中井春風堂」の葛切りと葛餅はその食感にとことんこだわっており、賞味期限が10分間なんだという。それ以降は、透明感が失われ、食感も変わってしまうのだとか。
実際、その食感や歯ごたえはもう、ちょっと他にたとえようのないもので、こんなに美しい食べ物があるだろうかと感動した。人間が食べていいものなのかと思うほど。
ここの店主はプラモデルが趣味だそうで、イートインスペースの脇にめちゃくちゃガンプラが飾ってある。
さらに、店主はYouTubeで「葛塾」という動画も配信しているらしい。だめだ、もう今日の情報量はこれがリミットという感じがする。
無事、雷雨にあわずにロープウェイで吉野駅前まで戻ることができ、そこから特急(帰りは「青の交響曲」じゃなく普通の特急電車だったが)に乗って、眠りに落ちたらもう大阪だった。
もし、未来の自分に「大和上市の食堂に行ったらどうなるでしょう?」とクイズを出題されたとしても、「日本最古のロープウェイに乗って葛切りをすする!」という答えは絶対に出ないだろう。
出かけてみた結果が全然わけわからない着地になって最高だったなー!と、夜中、「葛塾」のYouTubeを見ながら思った。
でも、でも、やはり今度こそ、大和上市駅前のあの二軒の食堂に行ってみたい!

