やったった
食品サンプルというものは、一生懸命本物の食品に近づこうとした努力の結晶だ。それでもやっぱり本物にはなれない超えられない壁があって、今回はその壁を乗り越えて本物の食品の方が歩み寄った形だ。
「歩み寄った形だ」って、だからどうしたということなのだが、私は本当に心の底から「やったった」という気分です。それ以外の何ものでもないです。
こんな経験をしてしまったからには、今まで以上に食品サンプルがおいしそうに見えるんだろうなと思う。
目で見てサンプルな食品を口に運び、そして食べる。なんだそれは。我ながら何がなにやらで嬉しい。固まってしかも冷めているのにカレーが美味しく感じる。
ちなみに2,3口食べて気分は十分味わったので残りは普通に食べようと温め返したところ、普通のカレーのように熔解した。サンプルとモノホンを自由に行き来してる。すごいぞ。
これで波に乗ったぞ。次はあれ、いきましょう。
もはや食品サンプルの代名詞といってもいいフォークの立ったナポリタンだ。
実際店頭で見かけることは少なくなった懐かしの一品でもあるが、食品サンプルを扱う店のホームページなどを見ると今でも現役でサンプル界で幅を利かせているのが分かる。
さあ、どうやったら食べられるサンプルナポリタンを作れるだろう。
うーん。そうだ、凍らせたらどうだろう。
普通に調理したナポリタンをフォークですくい、その状態のままそろそろと冷凍庫に突っ込んだ。ガムテープでフォークを固定する。
最初は立っている部分だけを冷凍させ、皿に盛る部分は凍らせずに盛り付けるつもりだった。ラップにくるむなど衛生面にもかなり気を使った。
が、そうすると冷凍庫から出してから行わなければいけない作業量が多すぎて、その間に溶けてしまうのだよ。結局皿のまま突っ込むことになった。
冷凍庫を開けて見つけた家族は「あっ」といって後は何もいえないでいた。うん、確かに「あっ」ぐらいしか言葉は思い浮かばない。
家族を言葉に詰まらせながらも“冷凍→撮影→途中で溶ける”という工程を何度か繰り返し、ようやく完全にフォークが立ち上がった状態で撮影に成功した。
食べられる食品サンプルのナポリタンです。どうぞ。
本当は下の部分はホカホカでもっと美味しそうに作る予定だったのだが、結局は全体ガチガチに凍っている状態になってしまった。
でも今でもこのサンプルを飾っている昔ながらの喫茶店の食品サンプルって実際こんな感じの少しすすけた質感じゃないか。期せずしてリアルに再現してしまったと喜ぼう。
食品サンプルというものは、一生懸命本物の食品に近づこうとした努力の結晶だ。それでもやっぱり本物にはなれない超えられない壁があって、今回はその壁を乗り越えて本物の食品の方が歩み寄った形だ。
「歩み寄った形だ」って、だからどうしたということなのだが、私は本当に心の底から「やったった」という気分です。それ以外の何ものでもないです。
こんな経験をしてしまったからには、今まで以上に食品サンプルがおいしそうに見えるんだろうなと思う。
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