日曜の朝にうどんを食べたという話なのだが、この旅の端々に香川県のうどん文化の断片がちりばめられており、個人的には思い出深い体験だった。もし仮に田村神社の近くに住んでいたら、20年後にあそこでうどんを茹でているのは私なのだろう。
たまたま訪れた高松市内の夏まつりでも、地域に根付いたうどん文化を感じたので、合わせてどうぞ。
空いているイスに腰かけて、見るからに涼しげな水に浸かったうどんを箸で持ち上げ、つゆにたっぷりとつけていただく。
口の中でムニンと切れるうどんは程よい弾力と噛み応えで、噛むごとに小麦の風味がフワっと広がった。
埼玉県民の私が食べ慣れた山田うどん(埼玉を中心としたチェーン店)に比べればだいぶしっかりしているが、いわゆるさぬきうどんのイメージとはちょっと違う、食べるのに疲れない優しいうどんだ。
常連っぽい人が「冷たいの、ぶっかけで」と注文をしていた。うどんにつけつゆを直接かけたもののようで、冷やしうどんに比べて天かすが水を吸ってブヨブヨしないし、洗い物も少なくてよさそうだ。
子どもが並ぶと、受付の人が「ネギは入れる?」と優しく声をかけていた。食べる前にしっかり手を合わせて「いただきます」をする人がいた。
四国新聞の記事によれば(こちら)、この日曜市うどんは半世紀にわたって田村神社の氏子がボランティアで運営しているそうで、そもそもは地元住民が野菜や花を持ち寄って開いていた日曜市だったが、今はこうしてうどんだけが残っているのだとか。
ツルツルっと冷たいうどんをご機嫌で食べ終えたところで、入ってきたほうとは反対の出入口に向かったのだが、急に方向転換をして「温かいのを一杯ください!」とおかわりを注文した。ほら、せっかくだから。
また200円を出してかっこいい食券をいただく。これで片道分の交通費400円とイーブンだ。
食券の裏になんとなくざらつきを感じて、裏返してみたところで今日一番の驚きが待っていた。なんと赤い文字で「田村神社」と刻まれていたのだ。まさかのオーダーメイド、俄然欲しい。
温かいうどんはかけうどんだった。天ぷらの無人販売所で丸い天ぷら、通称丸天を購入してトッピングする。丼のフタみたいな大きさだ。
冷たいのと温かいのでは、だしの味がまったく違い、こちらはいりこの香りと味わいがしっかり感じらるものだった。冷たいだしにいりこを使うと生臭く感じられる場合があるから、香川でも避ける店が結構あるのだ。
このいりこが効いた温かいかけうどん、これこそが日曜市うどん本来の味なのだろう。二杯食べて正解だ。
日曜市の麺は近くのうどん店からその日の朝に届けられた茹で麺とのこと。数時間前に茹でられたうどんなので、茹で立てのコシを求める人には物足りないかもしれないが、これはこれで私は好きだ。
ちょっと前の時代まで(いつ頃というのは難しいが)、多くの香川県民が食べていた「普通のうどん」といえば、「うどん専門店で出される茹で立てのうどん」ではなく、「地元の製麺所が朝に茹でたものを近所の食堂で食べるうどん」、あるいは「食料品店などに卸されたものを買って家で食べるうどん」が多かったそうだ。
私の記憶にはない香川県民の原風景、あの頃の「普通のうどん」が食べられて、私としてはとても満足なのである。
正しい出入口が本堂を向いていたので、お参りを済ませた帰りにうどんをすするのが正しい流れなのかなと思いつつ、今更ながらお参りをさせていただき、ご機嫌で文学フリマ香川へと向かった。
日曜の朝にうどんを食べたという話なのだが、この旅の端々に香川県のうどん文化の断片がちりばめられており、個人的には思い出深い体験だった。もし仮に田村神社の近くに住んでいたら、20年後にあそこでうどんを茹でているのは私なのだろう。
たまたま訪れた高松市内の夏まつりでも、地域に根付いたうどん文化を感じたので、合わせてどうぞ。
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