田楽はうまい
具材がほどよく焼けたら味噌を塗りつけてまた焼く。それが田楽の醍醐味である。
味噌は柚子・大葉・山椒の3種類あり、それぞれの使い分けを聞いたが熱さと酩酊ですぐに忘れてしまった。どうすることもできず焼けていく具材をただ見ているとお店の人が味噌を塗ってくれた。
「味噌を塗った方は焦げやすいけんですね~」
「ヤマメは口から水滴がぽたぽた落ちてきたら食べ頃ですよ」
ときおり熊本弁が混ざる丁寧な接客がうれしい。ドッキリじゃないかと思うほど完璧にデザインされた空間だ。
豆腐田楽、うまい。ファミチキとか天下一品のこってりとか、うまい食べ物が世の中にあることを知っているが、場の雰囲気もあるのか涙が出そうになるくらい豆腐がうまい。味噌がうまい。
炭でじっくり焼いた魚や肉の美味しさに恐れ入って焼酎を追加した。修羅の如き節約生活を送っているわたしですら、この店にはできるだけお金を落とさないと申し訳が立たないと思ったのだ。それはもはや喜捨や浄財の類いだった。
味噌で米と酒をいく喜びもある
食材は早々に食べきってしまったが、味噌がまだまだ余っている。これはご飯に塗ったりして食べてもいいらしい。我々は自由だ。
米がなくなったあとは味噌を舐めて焼酎で流し込んでもいい。砂糖がじゃりじゃりするくらい甘めな味噌は立派な肴になる。
ご飯のおかずと酒の肴にして味噌の器をぜんぶ空にした。
いかにもな郷土料理が食べられる店というのは意外に少ないし、こんど誰かが遊びに来ることがあれば絶対に連れてこよう。うまかった。
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