栗が生で食べられるから俺は生きている
そもそも栗は茹でるだけでも1時間くらいかかる食べ物である。それを生で食べるなんて。身体に悪くないのだろうか。
しかし、祖父は80歳を超えた今も元気に自転車に乗っているし、孫である僕もすくすくと育った。皮肉なことに、栗の生食を疑う僕の存在が、その安全性を担保しているのである。
栗が生で食べられるおかげで俺は生きている。そう思うとありがたい。ぜひ生で食べさせてください。
弁当箱に生栗を詰めて出社する
生栗を試すなら、食べ物が少なかった背景を含めて再現したほうがいいだろう。
お腹が空いた状態で食べるため、お弁当がわりに生栗を携えて仕事に行くことにした。
ものの数秒で弁当ができあがった。
季節感だけは100点である。茶色い弁当は美味しいともいうし、手軽だし、いいお弁当の条件もしっかり満たしている。
生の栗はフレッシュでうまい
それではお昼になったので栗を生で食べてみよう。まずは切って食べられるようにする。
火を通す前の栗は意外と柔らかい。さすがに手では剥けないが、ナイフをいれると簡単に2分割することができた。
これなら祖父の話のとおり、道端に落ちているものを拾って食べることもできそうだ。
茹で栗はホクホクしているものだが、生の状態だと新鮮な木の実らしいみずみずしさがある。
スプーンを入れてみると、少しの抵抗のあとに「シャク」という音を立てた。ちょうどリンゴと同じくらいの硬さだろうか。
それでは、いざ実食。
明らかに甘い!歯ごたえは普段の栗とまったく違っているが、噛めば噛むほどに甘みのある果汁が染み出してくる。フルーティーと表現してもいいだろう。まさか栗をフルーティーと形容する日がくるとは。
味も茹で栗とはまったく違っていて、ぼんやりと野菜の青っぽさを感じさせる。具体的には生の人参に近いだろうか。青っぽいはと表現したものの、逆に言えばその清涼感のおかげでパクパクと食べ進められるのだ。
生栗は美味い。これはこれで普段の栗とは違う美味しさがある。
ホクホクの栗は喉が詰まる感じがして苦手なので、むしろフレッシュな生栗のほうが好きかもしれない。
周りの人にも食べてもらおう
栗を生で食べるなんて信じられないと冒頭で言っていた私だが、実は小学生のころにドングリを拾ってよく生で食べていたのだ。なんなら落ちているお菓子も拾って食べていた。
生栗を美味しく食べられたのは、そもそも適性があったのかもしれないのだ。せっかくなので、そういった経験がなさそうな周りの人にも食べてもらおう。合計3人が食べてくれた。
まずは生栗を食べたことがないというAさんから。反応が楽しみだ。
おおむね好意的に受け入れてくれたようで、次のような感想を残してくれた。
・甘みがあっておいしい
・穀物をそのまま食べていた太古の食事!って感じ
・さつまいもを生で食べたときの味に近い
……ん?
なんと、生のサツマイモを食べる人だったのだ!飢饉かよ。いい反応だったのは嬉しいが、そんな人の意見は参考にならない。
次はBさんに食べてもらおう。栗とかサツマイモって普通は生で食べないですよね?そう聞いてみると……。
今度は栗を生で食べた経験があるどころか、世間の常識くらいに思っている人だった。世の中にはいろんな人がいる。
栗ご飯用に皮を剥いているとき、生栗をつまみ食いするらしいのだ。なんでも製菓関係の職に付いていた関係で、素材の味を確かめるクセがあるとの由である。
ホットケーキミックスも味見のために粉のまま食べるらしい。特殊すぎるだろ。
この栗は特別に甘くて美味しいですねと褒めてくれたが、さすがにホットケーキミックスを粉でいっちゃう人の意見はあてにならない。
もっと非日常のものとして捉える人の感想が聞きたいのだ。そういうわけで、最後は都会育ちで栗の生食をいぶかしがったCさんに食べてもらうことにしたが……。
やっぱり普通ときた!
健康のために生のアーモンドやクルミを食べていた経験があるそうで、それと比べれば栗を生で食べることも変じゃないという。ここにきて理詰めである。言葉だけではなくペロッと一個まるまる食べていた。なんなんだこの職場は。
というわけで栗を生で食べると、みんなが口を揃えて美味しいと言うことが分かった。ただ、食べ過ぎると身体によくないという話もあるのでほどよく試してみてほしい。

