特集 2020年3月8日

よく振らずに飲むとどうなるのか(デジタルリマスター版)

振らないとどんな恐ろしいことになるのか検証します

缶やパックの飲み物によく書かれている「よく振ってお飲みください」の文字。私たちはいつも、言われるがままによく振ったり、よく振り忘れて後悔したりしている。

しかし、だ。敷かれたレールの上をたどることだけが人生か?違う。振れって書いてあっても、別に振らなくてもいいじゃないか。振り忘れるのではなく、自分の意志で振らないことで、見えてくるなにかがあるのではないか。

2010年3月に掲載された記事の画像を大きくして再掲載しました。

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。(動画インタビュー)

前の記事:ハンバーガーにポテトを挟むとダイエットによい(本当)

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「わざと振らない」という選択

「わざと振らない」という選択。反骨精神にあふれたかっこいい生きざまであると思う。

ただ、我々はしばしば臆病だ。振らないことで、せっかく買った飲み物がひどく不味くなるかもしれない。そんな恐怖に駆られて、結局よく振ってお飲みしてしまうのだ。

反骨したい、でも美味しいドリンクも飲みたい。そんな葛藤にさいなまれながら、いいことを思いついた。振らずに飲むとどうなるか、事前に調べておけばいいのだ。

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10種類用意した。(この写真を数えないでください)

よく振らなかったらどうなるのか

ということで、「よく振ってお飲みください」系飲料(一部例外あり)を10種類、用意した。

用意するにあたって、スーパーを巡りながら「これも振らなきゃいけないのかー、へー」的な発見があるかと思われたが、調べてみると当サイトの先輩ライターであるところの古賀さんが3年以上も前に通った道であった。もちろん今回は喜んでそのレールに乗っからせていただいた。すでに反骨精神のかけらもない展開だが、おかげで買い出しが15分で済んだ。持つべきものは先輩である。

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「開封前によく振ってお飲みください」。Dole Berry Fruit Mix Juice 100%
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「よく振って、開封後はできるだけ早めにお飲みください」。健康菜園ベジタブル
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比較用に、振れと書いてないのも用意した。野菜生活100 30品目の野菜と果実
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注文が多い。「よく冷やし、よく振って、開封後はすぐにお飲みください」。黒酢ドリンク
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豆乳は濃厚な味でいかにも沈殿しそう。「沈殿することがありますので、よく振ってお飲みください」。調製豆乳
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「よく振ってお飲みください」。毎日骨太 1本で1日分のカルシウムのむヨーグルト
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「開封前によく振ってお飲みください」。牧場初いちごオ・レ
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「振るな」表記があったのは唯一。「開ける前に振らないでください」。スコール
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最初の写真に撮り忘れてたのはこれ。「コーンが入っていますので、よく振ってお飲みください」。じっくりコトコトつぶ入りとろ~りコーン
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「開缶前によく振ってください」。ジョージア BLACK


スコールは「乳系なのに振らなくていいのか!」と思い買ってみたのだが、よく見たら炭酸飲料であった。当たり前だ。

 

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不測の事態に備え、各ドリンク2つずつコップを用意しました



いつもは見えない変化を白日の下に

すべての飲み物を、透明のコップに注いでいく。本当によく振らなきゃいけないのであれば、このまま数日おけばなにか変化が起きているはずである。

普段は紙のパックや缶に入っていて見えない変化を、透明のコップに入れることで変化があらわにしようという狙いだ。

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紙パックから跳ねないように注ぐのは意外と難しい
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なんかポップになったぞ

てっきり黒いと思っていた黒酢ドリンクが全く黒くなかったのには「なぬっ」と思ったが、いろんな色のドリンクが並ぶにつれて、だんだん机の上が華やいできた。

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あとは冷蔵庫でゆっくり眠ってもらいます

 

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見分けつかないと思いますが一応、一日後の写真

一日経過

そして寝かせること1日。

この時点で大半が沈殿し始めているのではないか、と予想。さて見てみよう。

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あっ
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フカフカだ

野菜生活にみごとな沈殿が発生していた。ちょっと寝転びたいくらいのフカフカ感。やっぱり「よく振ってください」は振らなきゃだめなんだ!

しかし、みなさんどうか落ち着いてください。ここで重大発表がある。

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「よく振ってお飲みください」がない!

この野菜生活、「よく振ってお飲みください」が書いてないドリンクなのだ。もうひとつの野菜ジュースとの比較対象のために買ったものだ。それがひとりでダントツに沈殿している。

こういうときよく「テスト勉強してないって言ったのに、一人ですごい点取るやつ」なんて例えをする。しかしこのジュースは、そんな友人同士のじゃれあいそのままのテンションを食品表示に持ち込み、全国流通に乗っているのだ。果敢である。

参考までに他のドリンクも見てもらおう。

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振らなきゃいけない方の野菜ジュース。全く変化なし
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なんとなく比重の重そうな豆乳。変化なし

腑に落ちない気分だが、とりあえず経過を見守ろう。
 

 

 

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この写真載せる意味あるのかな


二日経過

そして二日目。一見平和に見える冷蔵庫だが、今日も新たな変化が起こっていた。

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毎日骨太に、上澄み液の層が
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心なしか誇らしげに見えてくる「よく振ってお飲みください。」

のむヨーグルトの上に、うっすらと白っぽい液体の層ができていた。

そういえば食べる方のヨーグルトでも、開けるといつも上の方に液体がたまっている。のむヨーグルトでも同じことが起こるみたいだ。

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windowsXPのデフォルトの壁紙を髣髴とさせる曲線美


ちなみに昨日の野菜生活は相変わらず沈殿中。ただ、昨日より沈殿が圧縮されたというか、濃く、(厚みが)薄くなった気がする。昨日はふわふわの粉雪が積もった感じだったのが、砂漠の砂みたいになった。

 

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ドリンクに変化はないですが下の段に入ってるものが変わりました。実家からカニが届いた

三日経過

見たところ特に変化はない。

実はこの日、地震があった。東京都23区は震度3。ちょうど僕は外出中で、この実験のことを思い出し「やべっ」と思ったのだが、家に帰ると野菜ジュースや飲むヨーグルトは分離したままだった。

震度3くらいの地震は、よく振ったうちには入らないらしい。

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4日ぶりにみたカラフル


四日経過・結果発表

そして4日目。今日も特に変化はない。これ以上待っても意味がなさそうなので、実験はそろそろ打ち切りだ。

では結果どうなったか、写真つきでご覧ください。

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Doleのベリーフルーツミックス。最初から、こいつはねえな、と思ってたが全くの予想どおり。変化なし。
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振らなきゃいけない方の野菜ジュース、家庭菜園ベジタブル。ちょっと納得いかないが変化なし
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野菜生活の沈殿はさらに圧縮され、ちょっとの振動では動じないほどに
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黒酢ドリンクも、透明だし沈む要素がなさそうな気はしていたのだ。やっぱり変化なし。
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大本命だった豆乳。「いかにも沈みそう」を維持したまま、一切沈む気配を見せず
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飲むヨーグルトは、上澄みの層はより厚くなって、どんどんしみ出している感じ。
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豆乳と並んでこれも重そうなので沈むかと思ったが、どうも見た目が重そうかどうかは関係ないらしい
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スコールは「振るな」というだけあってさすがの変化しなさ。今回いちばんの誠実さを見せてくれたのはキミだ。
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パッケージに「コーンが沈むから振れ」というようなことが書いてあったが、本当にそれだけの理由なのだ。スープ自体はびくともしない
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コーヒーが分離してるのを見たことないが、案の定、特に沈殿なし

 

分離したとこ飲み比べ

様子が変化したのは2種類だけであった。「よく振ってお飲みください」神話の崩壊。「あえて振らない」時代の到来。残る邪魔者は、野菜生活と飲むヨーグルトだけであるが…。

落ち着いて考えてみよう。様子が変化したとはいえ、それだけで「振らなきゃ!」と思うのは時期尚早。

分離したことでかえって美味しくなっている可能性だってあるじゃないか。

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ホームセンター行ったらスポイトが150円で買えてびっくりしました


分離した部分をスポイトで少しずつ吸い込み、別のコップに移していく。

こうして「野菜生活の上の層」「野菜生活の下の層」の2つのドリンクを作る。分けて飲んでみようという魂胆だ。分けて飲んだほうがうまければ、イコール振らないほうがいい、ということ。

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分けてみるとけっこう色が違って驚く
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左が上の層、右が下の層

 

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やや表情が曇る匂い


まず上の部分を飲んでみる。

色は意外に濃い色だけど、濁ってはいない。澄んだ色だ。

コップに口をつけると、むわっと青臭いような、草っぽい匂いが広がる。材料に書いてあるケールの匂いだろうか。

反面、飲み口は意外にさわやかで、のみやすい。酸味があるので、原材料にあるオレンジやレモンが効いているのかもしれない。

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ラ、ラムネ!?


一方、沈殿物を集めたものは、なんていうか沼っぽい見た目。上澄みの部分より色が濃いだけでなく、ちょっと黄色っぽい。

かいでみると見た目とは裏腹にリンゴっぽい香りがして、フルーティーで美味しそうだ。さっき感じた草っぽさがない。

飲み口はさすがにどろりとしていて舌に残るが、上澄み部分と比べてそれほど濃厚な味というわけでもなかった。甘い。なんの味かよくわからなかったけど、リンゴか、あるいはにんじんやピーマンの甘みかもしれない。

あと後味がクッピーラムネっぽい気がした。

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ほんときれいに2層に分かれた


上澄みはホエー

さて、飲むヨーグルト。

上澄みになっているのはホエーというものだそうだ。たまに食べ物の原材料欄をみると、マヌケな語感で気分を和ませてくれるアレである。wikipediaによると「高蛋白・低脂肪で栄養価が高い」と書いてある。さらにはパックに使われたりもするそうだ。それ、うまいんか?

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こちらもスポイトを使って
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かなり様子の違う二人に

 

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まずはホエーのほうを味見。

色は透明度が高くて、ちょっと黄色がかった白。匂いをかいでみると、ヨーグルト特有の酸っぱい感じがなくて、ほんのり甘いような匂いがする。

そして飲んでみて、ハッ!とした。この味は…

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これだ


そうだ、スコールに似てる。

実験に使ったスコール(炭酸が抜けてる)と飲み比べてみると、スコールの方は甘みが強くて人工的な感じがするけど、この上澄みはそれをもうちょっと自然な甘さにした感じがした。

 

 

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とくにかわらず、面白みのない結果です


そして残りの部分。

これははっきり言ってのむヨーグルトそのままだった。見た目も匂いも味も。

強いて言えば酸味が少し抜けてマイルドになった気がするのだけど、気のせいかもしれない。

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細かく飲み比べてみたものの、野菜生活も飲むヨーグルトも、どちらも分離後の味は可もなく不可もなく。

それに比べて分離前を飲んでみると、やっぱりメーカーが作った飲み物ってよくできてるよね!という味であった。


「あえて振らない」はそれなりにアリ

そういうわけで、最初の話に戻ると、振れって書いてある飲み物でも意外と分離しない。したがって、「あえて振らない」という生き方はそれなりに有効だ。たまにはずれもあるけど。飲むヨーグルトと野菜ジュース以外は「あえて振らない」、みたいな感じでいいんじゃなかろうか。

一方で、何が何でも「あえて振らない」というハードボイルドな生き方を望む人は、それもいいと思う。分離したら多少味は落ちるかもしれないけど、まあ飲めないほどじゃない。それよりハードボイルドを貫く、そのライフスタイルのほうに価値があると思うのだ。

まあ僕は振りますけど。

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関係ないけどローアングルから見たスーパーってかっこよくないですかね

 

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